ナショナリズムという迷宮 ラスプーチンかく語りき (朝日文庫 さ 43-1)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022616517

作品紹介・あらすじ

国家とは何か。民族とは何か。宗教とは何か-。ナショナリズム、ファシズムなどの源流をたどりつつ、イデオロギー的対立がせり出した時代の思想的枠組みから、オウム真理教事件、ライブドア事件など現代社会とのかかわりまで国内外の事象を語り尽くした。待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 政治心情的には、真逆とも言えるお二人の対談集。
    知的好奇心を先行させて読むと、非常に興味深く。

    知識(情報)としては、バランスをとっていかないとなぁ、、と。
    もちろん知識に振り回されない「教養(地頭)」を備えている前提で、ですが。

  • 国家とは何か。民族とは何か。宗教とは何か―。さまざまなテーマについて佐藤優氏と魚住昭氏が縦横無尽に語りつくすシリーズの第一弾です。ここには現在に至るまでのいくつもの『転換点』について語られています。

    このシリーズを読み始めたのは第三巻の『政権交代という幻想』からでそれから第一巻の本書に立ち戻るという順番で読みました。もともと、この本の成り立ちが佐藤優氏が512日泊513日間の『小菅ヒルズ』での拘置所生活を終えて出所後、当時佐藤氏が住んでいた埼玉県の近くに共著者である魚住氏が住んでいたということで居酒屋などで何度も語り合い、意気投合したということで改めて企画としてスタートしたのだそうです。

    それにしても、居酒屋で語られる内容としてはあまりにも重い話で正直、ついていくことが大変でしたが、国家とは何か。民族とは何か。宗教とは何か―。多岐にわたるテーマを縦横無尽に語り合い、佐藤氏と魚住氏の見解の違いも楽しみながら、ナチズムとファシズムの違い。新自由主義が発展した果てにはいったいどのような地獄が待っていたのか?オウム事件を思想・宗教的な背景から考えると、どのようなものが見えてくるのか?この話がオウム真理教が仏教的な背景から出発して殺人を『救済』として肯定する思想はキリスト教から発展した、という佐藤氏の話を聞いて、僕は目からうろこが落ちる思いでございました。

    さらにライブドア事件・及び堀江貴文氏に対する考察。これは国家と貨幣との『怪獣大戦争』であり、堀江貴文という存在は貨幣を体現するものであると、さらに、『稼ぐが勝ち』『日本を大統領制にするべき』などの彼が当時行っていた発言の数々は潜在的な『日本のタブー』に触れてしまったのではないだろうか?という分析には「こういうことだったのか!」とはたとひざを打つ思いでありました。

    ここには2011年現在に至る事象の『転換点』にまつわる出来事が深い分析で掘り下げられておりますので、出来ることでしたら『憂国のラスプーチン』というコミックスも合わせてお読みいただければ、面白くなると思われます。

  • 2003年に東京拘置所から保釈されてまもない佐藤が、『特捜検察の闇』(文春文庫)で佐藤の逮捕劇を国策操作だと指摘したジャーナリストの魚住昭にみずからの思想を開陳している本です。

    だれもが知るように、その後の佐藤は目を瞠るほどの刊行ラッシュをつづけ、キリスト教とマルクス主義とナショナリズムを結ぶ独自の視点からの国際情勢分析をおこなっていますが、そのなかでも比較的早い時期にその思想が語られた本です。「文庫版あとがき」で佐藤が「魚住さんから、「雑誌連載云々は、前提とせずに、とにかく対談をしてみないか」と言われたので、それは私自身の思考の整理になると思い、受けることにした」と述べているように、魚住という聞き手を媒介にして、佐藤の考えが紡ぎ出されていくドキュメントといえるかもしれません。

    そうした意味では興味深い本だと思いますが、佐藤の考えそのものに関心をいだく向きには、他の著作のほうがわかりやすく書かれているのではないかとも思います。

  • 本書で佐藤がマルクスを援用して述べる階級観「資本」に対する「資本家」、「地代」に対する「地主」、「賃金」に対する「労働者」そして、「税金」に対する「官僚」。前3者は社会の中から生まれ、唯一官僚だけは国家が生んだ階級である。すなわち「国家は官僚なり」。身も蓋もない話であるが、否定することも難しい。
    そして、ライブドア事件を例にあげ、その国家=官僚の中の官僚、「検察」の動きがメディアを取り込み、政治家の力さえ抑えて、国を事実上コントロールしている、という分析にはうなずかされる。
    新奇さをてらったあまりに、笑えない悪ふざけのようなたとえ話が減点だが、続編に期待したい。

  • 楽しめた。
    聞き手がいるせいか、佐藤氏の著作より分かり易かった。
    国家、思想、ファシズム、宗教・・・
    具体的な事件事象をその背景にある思想なり宗教、国家の様態からロジカルに論じられていて、頭の体操になった。

  • 結構楽しめた。魚住氏が聞き役に徹したことが成功要因であろう。特に1章〈国家と貨幣〉、2章〈キリスト教の人間観イスラム教の人間観〉が興味深かった。但し「クレヨンしんちゃん」は思想書だ、イエスが「ねずみ男」、ウサマ・ビンラディンは「星飛雄馬」、中世キリスト教の円環的時間概念が「サザエさん」と言う喩えは理解と誤解が紙一重の危険な表現のような気もするのだが。どうも「知の怪物」は変化球投法がお好き^^文献解題の内『宗教からよむ「アメリカ」』、『蒲生邸事件』、『武士の家計簿』、『天皇と東大』が面白そう。後書き長過ぎ!

  • 佐藤優の話がマニアック過ぎて魚住昭がついていけてないという印象。俺もあまり消化できんかった。

  • 社会民主主義の本質はソ連型共産主義を阻止することだった。だからもうその役割は終了しているはず。
    マルクスが解き明かしたことの中でも重要なのが、国家と貨幣の機能。
    イスラム教は性善説に立つ。現在という意識はあるが、ケガレくらい。
    神なき宗教の成立。神ならぬ民族共同体に対して絶対依存の感情を抱けば、そこに超越性が存在する。
    ユダヤ、キリストにおいては、始まりのところで人間はいきなり堕落してしまう。それで現在を負うことになった。その時点から終末に向かって回復していくという考え方。
    やさしくなければファシズムじゃない。
    ロシアのインテリには親アルメニアが多く、情報の入手はさほど難しくないが、アゼルバイジャンの方はなかなか情報が入ってこない。
    タタールには地獄から来た人、という意味がある。
    インドではイエスは、きらびやかな宮殿で生まれたことになっている。馬小屋じゃない。カストによる厳しいインドではイエスが馬小屋で生誕するなんて考えられない。歴史的な実証性よりも、今まさに生きている人々が信仰に没入しやすい表象が与えられている。
    野中さんは永田町で権力の階段を上るたびに、差別と直面していく。
    国家だって、民族dあって、ろくなもんじゃない。

  • 2010/1/8 メトロ書店御影クラッセ店にて購入。
    2013/6/11〜6/18

    「知の巨人」と呼ぶにふさわしい佐藤優氏と、ジャーナリスト魚住昭氏の対談本。佐藤氏の単著は時に難解に成りがちであるが、魚住氏との対談形式のお陰で、随分わかりやすくなっている。(と言っても、まだまだ十分難解ではあるが)漠然感じているナショナリズムについて整理できる良書。

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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