グリコ・森永事件「最終報告」 真犯人 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 45
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022616531

感想・レビュー・書評

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  • 「これからよむ あほども え この本 おもろないで」

    みんな大好きグリコ森永事件ネタである。しかし、ダメ出しというよりも、ダメしかないどうしようもない出来なので、どう評価してよいか困る本である。

    まず、表題「真犯人」であるが、プロローグとエピローグで語られるものの、読者の90%は納得ができないうえ、プロローグに挟まっているものだから、それが頭に引っかかって、本編部分がまともに読めないのだ。

    何が具体的に問題かというと、株価(企業の持つ資産)や、警察無線を傍受、警察の内部事情にも詳しい知能犯の犯人像が、この本の真犯人は、根っからの貧乏で鉄くずを拾い集めていたチンピラでしかない。

    本文部分で、グリコの内部事情に長けていたりすることを書きながらも、どう考えても「真犯人」は知りうる立場にないし、せいぜい「近所に住んでいた」「近所に勤めていた」「顔がキツネ目」くらいしかないのだ。その程度の容疑者であれば、何百人単位で挙げられていた当時の事情からしても、与太話の域を出ないものだ。

    そもそも、その犯人と思ったきっかけが、飲み屋で言っていた話を真に受けたというだけ。その先入観を読者に植え付けて、その人物だとなしえない巧妙な手口を列挙されると、読んでいてつらい。

    ほかにダメな部分。
    ・時系列が時々バラバラになり、一度述べたことを何度も蒸し返す。
    ・必要のない会話文の引用が多すぎる。「当時の本部長は否定した」で済む文章が多い。
    ・突然「私」が出てくる。ほとんど資料を読んで写しているだけの文に、一人称はそぐわない。
    ・引用文に頻繁に「(略)」が出てくるため、読む気が殺がれる。
    ・面白いグリコ森永事件を、非常につまらなく平坦に描写している。
    ・せっかくの図は、ほぼ無意味。無くてもよい。
    ・変なところ(容疑者やその嫁)を(仮名)で書く癖に、本編の関係をつかみたい会社名は「××社」「A氏」「B氏」「C氏」と極めて読みにくい。

    などなど。

    一人称で書くルポなんだったら、取材ごとに区切って書いてくれたほうがよかったし、資料をまとめるのなら、山がわかるようにポイントを押さえて書くべきこと。犯人が毒入り森永菓子を、何度ばらまいたんでしょうかね?

    とにかく一番引っかかるしつまらないのが、やはり"新"犯人像で、この人の書く文章は、すべてこういう見当はずれの決めつけなんだろうか?と勘繰りすらするものだ。比較的がんばっていた「K元暴力団組長容疑者説」のところだけで書けば、まだ面白くなっただろうに。

    グリコ森永事件なら、もっと面白いドキュメントなり解説があるわけで、わざわざこの本を選ぶ意味はなかった。

  • グリモリ好きにとってはこのところ目立った収穫が無かっただけに、本書は待望の、そしてもしかしたら本当に「最終報告」となってしまうかもしれない一冊だ。
    冒頭、5億4千万強奪事件の経緯から語り起こし、要所に未公開の捜査調書を織り込んだ事件の概要、警察の追った容疑者像と、既知の事柄も含め、グングン読ませる。
    そして圧巻はやはり「真犯人」と銘打った本書が初めて明かす容疑者像。正確には容疑者グループの中の実行犯リーダー格の人物なのだが、それにしてもあの「かい人21面相」の脅迫状の醸し出す雰囲気と「彼」のたたずまいが見事にハマっているではないか。
    印象に残ったのは終盤、当時の捜査員(現職府警幹部)に「真犯人=彼」の可能性をムキになって否定される場面。あれだけ警察のプライドを踏みにじられ、刑事人生をかけてそれでもホシを挙げられなかった屈辱が、「今になってお前なんかに」という屈折した感情になって爆発する。人間とは、人生とは何ともやっかいなものなのだ。
    小学生のときこの事件に出会い、何の因果か人生観の深いところに影響を受けてしまった身としては、一抹の寂しさが残る「最終報告」だった。

  • グリコ・森永事件については、学生以来の研究テーマで、知識レベルには相当の自信があったが、初めて知ることの多さに驚く。女性記者だから、ここまで潜り込めるのか、著者の勇気に敬服。

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