- 本 ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022616562
感想・レビュー・書評
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若い時の戦争がなかったら、もっと良い作品にたくさん出られたのではないかと思うと惜しい...。もう少しつっこんだ内容を期待したけれど、やはりどこかベールに包まれているところは変わらず。読みやすい文章でした。
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一昨年9月に亡くなつた原節子。なぜこのタイミングで登場するのかといふと、先達て某ラジオ番組にて、彼女の評伝を書いたノンフィクション作家・石井妙子氏のインタヴューを聞いたからです。
原節子といへば小津安二郎監督作品に代表される、一歩引いた立ち位置のいかにも日本的な女性を演じてゐましたが、素顔の彼女は大きく異なるとか。石井氏によれば、原は小津作品における自分の役柄に満足してゐなかつたとか。ほほう。
『原節子 あるがままに生きて』は、映画評論家の貴田庄氏による原節子の評伝(文庫カヴァーには「エッセイ」と書いてありますが)であります。ほぼ時系列で彼女の生涯を追つてゐます。
原が女学校を中退し映画界に入つたのは、どうやら経済的な理由らしい。義兄の熊谷久虎が日活で映画監督をしてゐた縁で、14歳で女優デビューするのでした。
当初は鳴かず飛ばずでしたが、たまたま日本に来てゐたドイツ人監督のアーノルド・ファンクの目に留まり、日独合作映画「新しき土」のヒロイン役として抜擢され、一躍注目を浴びるやうになります。
しかし原節子は当初、演技が拙いといふことで、何かと大根呼ばはりされるのです。まあ確かに巧くはなかつたかも知れませんが、さう取り立てて騒ぐほどの大根だつたか。彼女自身も、演技の未熟さを自覚しながら、反撥心もあつたやうです。
美男美女といふものは、やつかみも手伝つてか、何かと大根扱ひされるものです。長谷川一夫などは酷い言はれやうでした。
それが山中貞雄、成瀬巳喜男、黒澤明といつた名匠たちに揉まれてゆくうちに、さういふ誹謗は減少し、そして小津安二郎と組むに当つて大輪の花を咲かせた感じでせうか。
原節子本人は、「開かれた女性」だつたので、男性の添へ物的な役に飽き足らず、もつと女性が自らの意思で活動する役がしたかつたさうです。本書によれば、細川ガラシャを演じたかつたと語つたとか。
そして女優といふ職業を実に真面目に捉へてゐました。舞台挨拶を嫌ひ、水着撮影を拒否し、ラブシーンは撮らずと、彼女にとつて、映画女優には邪道と思ふ行為を避けてゐたのです。女優は映画における演技で勝負すべきで、素顔を見せたり私生活を曝したりするのはすべきではないと考へてゐました。
一見わがままのやうですが、むしろ現代の俳優さんたちに見習つていただきたいものです。人気商売ゆゑ、あまり頑ななのも問題ですが、CMのおちやらけた姿を見慣れた後で、映画やドラマのシリアスな演技を見せられても素直に鑑賞できないのであります。あ、わたくしの場合ですがね。異論もあるでせう。
そして42歳での引退。山口百恵さんのやうにことさらに引退を表明する訳でもなく、フェイドアウトするやうに消えたさうです。その後ほとんど公の場に姿を見せず、実に潔い身の引き方でした。
引退の理由については、健康説(目を悪くした)だとか小津監督の死去がきつかけだとか、色色言はれてゐますが、結局本人の真意は分かりません。本書では、実兄の会田吉男カメラマンの不慮の死も引金ではないかと推測してゐます。
本書の刊行時は当然、原節子さんは存命中でしたが、結局隠遁生活を全うしたまま、95歳の生涯を閉じたといふ訳です。見事な一生と申せませう。
すでに「伝説の女優」原節子に関する書籍は幾つも出てをりますが、この『原節子 あるがままに生きて』は、わたくしのやうな初心者にはまことに分かりやすく入門書として恰好の一冊と存じます。
http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-694.html -
(01)
戦前戦後を通じて活躍した一人の女優(*02)にスポットが当てられる.彼女の目は,当時のスタジオで用いられた強烈な照明のためにも悪くなっている.引退を早めた一つの要因として,視力の弱りが指摘されてもいる.映画に携わった家族たち,あるいは家族のようにも接していた当時の撮影所の仲間たちの様子もあわせて描かれており,愉しい.
(02)
彼女の特殊はどこにあったのか.顔立ちは確かに日本人離れをしており,女優として早くに海外での撮影の経験もしている.大根から,そうでない女優への変身は,彼女の演技の技術によってもたらされたばかりでなく,受け入れられる演技や映画に変化があったとも考えることができるだろう.そうした情況において,彼女の仕事が邦画女優としての一つの道しるべをなしたのは,確かだろう.
「東京物語」の尾道ロケにあった,紀子としての気分,原節子としての気分,そして一人の人間としての気分の複雑さと真実さがあの感動的な場面には見えていた. -
「貴田庄」の紀行エッセイ『原節子 あるがままに生きて』を読みました。
原節子 あるがままに生きて
最近、長篇ミステリが続いていたので、ちょっとミステリはひと休みです。
-----story-------------
「原節子」が新聞・雑誌に残した言葉から、引退までの半生をたどる。
経済的な事情から女学校を中退した「原節子」は、十四歳で女優の道を歩きはじめた。
デビューのいきさつ、「黒澤明」に怒鳴られ、大根女優と叩かれ落ち込む繊細さ、その反面の終戦直後にモンペ姿で一人で買出しに出かけるたくましさ、煙草やお酒、麻雀が好きという意外な一面など、「永遠の処女」の知られざる素顔に迫る書きおろし。
膨大な資料から本人の残した数少ない言葉を発見し、「伝説の女優」の素顔を浮かび上がらせたエッセイ。
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先日、「原節子」の演技が印象的な映画『わが青春に悔なし』を観て、「原節子」のことを知りたくなったんですよね。
「原節子」については、「小津安二郎」監督作品の印象が強く、30歳以降で演じている母親役や戦争で夫を失った未亡人役のイメージしか頭に浮かんでこないんですよね、、、
本書でデビュー当時や20歳代のエピソードを初めて知ることができました。
■家族
■出生地
■洋風の美少女
■得意科目
■少女時代の夢
■女学校中退
■義兄熊谷久虎
■映画界へ
■女優・原節子の誕生
■踊らないダンサー〔ほか〕
「小津安二郎」監督作品で観る限り、骨太なイメージがありましたが、デビュー当時は細身だったことや、
キスシーン、水着姿、映画館での舞台挨拶がタブーだったこと、
(私も大好きな…)「イングリッド・バーグマン」のことを好きだったこと、
読書やビールが大好きだったこと、
等々、「伝説の女優」の素顔を知ることができました。
1963年12月… 「小津安二郎」の通夜に出席したのを最後に女優業を引退し、以降40年間以上、公の場に姿を現していないというミステリアスな一面を持った女優ですよね、、、
現在は94歳とのこと… 気になりますねぇ。 -
貴田庄 著「原節子 あるがままに生きて」、2010.6発行。原節子さん、1920.6.17~2015.9.5、享年95。「永遠の処女」「伝説の女優」、42歳で銀幕を去り、半世紀にわたり沈黙を貫いた女性。「わが青春に悔なし」「青い山脈」「めし」「東京物語」「晩春」「麦秋」「秋日和」・・・。スポーツ(特に水泳)好きで、そして、大の読書家だったそうです。好きなものはと聞かれると、好きなものの順は、読書、泣くこと、ビール、それから怠けることと応えたそうです。
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四方田氏の本を読んだ後では、かなり薄味に感じる。
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とくべつ、原節子さんのファンというわけではないのですが、古い映画が好きなので手に取りました。わたしのようなよく知らない者には、原節子の軌跡が一覧できて面白かったです。文章が丁寧で読みやすく、一章一章が短いのも良いです。
昔は芸術家というよりも、職業的俳優が多かった、ご本人方の気持ちの点でも。原節子さんも生活のために女優になり、生活のために続け、もう十分と思ったから辞めたのだろうなと思います。
お若い時の写真は本当に美しいです。 -
★2.5
多少なりとも原節子の生の声を目にすることが出来るかと思ったけれど、著者が原節子に会うことも会った過去すらもなく、他の書物や雑誌等に掲載された原節子に関する内容を纏めただけの作り。さらに、著者との相性が悪かったのか、何とも読みにくい構成で閉口してしまう箇所が多々あった。それでも最後まで読み進められたのは、原節子という女性に魅力があったからこそ。それにしても、小津監督を敬愛する著者が原節子を題材にした理由が、「小津監督と言えば原節子と笠智衆、笠智衆は自分で書いているから自伝を出していない原節子にしよう」みたいな安易なもので、何だかな…という気持ちでいっぱい。 -
せっちゃんて、タバコもビールも好きなのね
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2013年最初に読んだ本。
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