共生経済が始まる: 人間復興の社会を求めて (朝日文庫 う 12-2)

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022616944

感想・レビュー・書評

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  • いよいよ元号が変わる。平成という時代を振り返るのに、何かいい本はないかということで、本書を通して経済的な観点から、この三〇年を振り返ってみたい。
    ここ二、三〇年の経済生活における特徴といえば、「貧困マジョリティ」の形成であろう。「格差社会」という言葉も、もはや人口に膾炙した。もう少し遡れば、「勝ち組・負け組」などという流行語もあった。このまま進めば、二割の人間に、残りの八割の総所得を合わせた額よりも大きな富が集中する、いびつな「超」格差社会が到来するであろう。どこが分岐点だったのか。
    本書は、言ってみれば小泉政権における構造改革(いわゆる「聖域なき構造改革」)の総括でもあるのだが、私はここがまさにターニング・ポイントではなかったかと思う。同政権下で経済政策担当大臣を務めた竹中平蔵は、「努力した者が報われる社会を」と幾度にもわたって喧伝した。しかしその実態は、富裕層への累進課税をなし崩し的に撤廃するというものであったことが、いまとなっては明らかである。結果として、「富める者をほしいままに富ませることが、貧しい者の底上げにつながる」という、富者にとってはまことに都合のよい理屈が、現在でもまかり通っている。しかし、そのようなトリクルダウン理論もまやかしでしかなく、そろそろ馬脚が見えてきた。
    小泉首相は「官から民へ」と唱えたが、その「民」は「民間資本」の民で、「市民」の民ではなかった。そう著者は指摘する。改革の名において、巨大資本の行動自由はかつてないほど極大化し、「市場原理主義」へと突き進んだ。残念なことに、この「市場システムこそ民主主義」という市場万能論は、現在でも大手を振っている。「市場が決める」「市場に任せればすべてうまくいく」こうした言説を著者は「市場主語」と呼ぶが、われわれはこの「市場主語」の言葉をもはや聞き飽きているのではないだろうか。企業が利潤の追求に邁進すれば、おのずから活力ある経済社会が実現するかのような予定調和的な論調が、いまも経済界ではまかり通っている。しかし実際にわれわれが目にしているのは、善良な市民が市場に振り回される姿である。本来、企業とは単に利潤を追求する存在ではなく、その利潤を社会に還元し、人々の生活や営みを豊かにするものではなかったのだろうか。市場に人間が奉仕するのではなく、人間の手のもとに市場を取り戻さなければならない。
    「格差ある社会は活力ある社会」などという謳い文句のもとに、熾烈な競争を助長する社会がはたして正しい経済のあり方なのか。人間を勝者と敗者に分け、ひとにぎりの勝者が残りの敗者からすべてを奪い、その敗者を「努力しなかったからだ」と切り捨てる社会が、正しい社会なのだろうか。人間には勝者も敗者もなく、むしろ弱者を全体で助けるのが本来の社会のあり方ではないのだろうか。「共生」経済という著者の言葉に込められた思いを汲み取ることこそ、次の時代の課題であると強く思う。

  • 新自由主義のまやかしを看過する社会に綻びが見えてくるのは必然であり、どこで軌道修正していけばいいのか、その先陣を企業も政府も舵を取らない。なぜならそこに彼らの利権が内在してまだ貪り足らぬ欲深き思考を是としているからである。本当の "民" を主体とした経済そして共生社会は私たち一人ひとりの声をあげることから始まる。その小さな力から "舵を取る" 大きなうねりとなるであろう。

  • 自由主義、市場が主語として語られる経済を徹底的に批判。弱肉強食ではいけない!と強く主張する。
    地球をまたにかけるグローバル企業ばかりを優遇せず、地域に密着した中小企業こそが日本を支えているのであり、地域で暮らす人々を守ることこそが国の役割である。内橋氏の主張する「FRC自給経済圏」の確率には諸手をあげて賛成したい。
    まずは食糧からだろうか?
    僕も地域のために働きたい、内橋氏の本を読むたびにそう思う。

  • うん。2000年代初頭から打ち出していた
    理念、先読み姿勢は素晴らしいね。

    筆者の言う通り、ポスト資本主義はなんなのかだよね。

    「成長なくして幸せなし」

    と思ってる中での具体的な処方箋と価値観を
    打ち出さないと僕も抜け出せない。

    ここ勝負だね。

  • 労働契約法
    参考書

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