アウシュビッツを一人で生き抜いた少年 A Lucky Child (朝日文庫)

制作 : 池田礼子  渋谷節子 
  • 朝日新聞出版
3.88
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  • 本棚登録 :73
  • レビュー :10
  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022617156

作品紹介・あらすじ

子供が真っ先に「価値なし」と殺されたアウシュビッツで、奇跡的に生き延びた少年がいた。最後まで諦めないことを教えた両親の愛情と、助けを差し伸べた人々の勇気、そして幸運によって-。憎しみの感情を克服し、国際司法裁判所の判事まで務めた著者が綴る感動の記録。

感想・レビュー・書評

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  • 訳書タイトルが示すように、少年期(10歳)でアウシュビッツに送致され、母、父と別れるも、両親から学んだ生き抜くための知恵を使い、その時々の周りの人々の助けを得て、生き抜いたトーマス氏による本。

    本書の最後の方の言葉が、アウシュビッツを案内していただいた際の中谷さんの言葉と重なり、一段と印象に残った。

  • ポーランド系ユダヤ人を父に、ドイツ系ユダヤ人を母に持つ著者は
    チェコスロバキアで生まれた。そのチェコスロバキアにナチス・
    ドイツが侵攻して来る。

    一家はポーランドに移住するがそこにもナチスの脅威が迫る。父の
    機転で何度かの危機を脱するものの、ユダヤ人であることを唯一の
    理由として親子は強制収容所へ連行される。著者、5歳の時である。

    最初に母と引き離された。しばらくは一緒の収容所にいた父とも
    離れ離れになった。「子供は役に立たないから殺してしまえ」と
    の強制収容所を、奇跡的に生き延び、10歳で解放された回想録
    が本書である。

    貴重な回想録なのだろうと思う。アウシュヴィッツからザクセン
    ハウゼンへの「死の行進」では凍傷で足の指2本を失ったものの、
    他の子供たちのように命まで失うことはなかった。

    幸運だったと、著者は言う。確かにいくつかの幸運が重なって
    いた。アウシュヴィッツの医師は著者を守ってくれたし、ザクセン
    ハウゼンで知り合ったノルウェー人の青年は出来うる限りの気遣い
    を見せてくれた。

    ただ、著者が生き延びられたのは幸運だけではなく、離れ離れに
    なるまでに事あるごとに父が示してくれた危機を脱する際の冷静
    さや、生来の前向きな心持ちもあったのではなかろうか。

    「僕が諦めたら、奴らが勝つ」。そんな思いで、父の機転を受け継ぎ、
    著者は過酷な現実を生き抜いた。

    残念ながら著者に生き抜く為の手本を示してくれた父は収容所で
    亡くなっているが、母は生き残り、孫を抱きしめることが出来て
    いる。

    戦争と差別意識がもたらす悲劇の検証として参考になるのだが、惜しむ
    らくは翻訳が直訳っぽいところだ。

    英語が話せて読み書きが出来ても、商業レベルの日本語の文章を書く
    素養がなければ翻訳には手を出さない方がよかったのではないかな。
    ふたりの訳者の名前を見て、そう思った。

    プロの翻訳家による新訳で読みたいところだ。

  • 一人で生き抜いたというタイトルから、誰にも頼れずに己の力だけで生きたように思うかもしれない。実際は、生き抜くために父親が身に着けさせた知恵や、著者が殺されるリストに載せられないよう助けてくれた大人たち、名もなき人の親切、友人など多くの人が与えてくれた助けや幸運が積み重なって、子供ながら、生き残ることが出来たという記録だった。子ども時代の思い出を書いてあるので、読みやすい。
    戦時中の話は、あまりにあっけなく人が死んでしまうので、信じられない世界に衝撃を受ける。片付けで不要なものを処分するみたいに、人が殺された記録が載っている。最近、終戦の時期になると、日本の戦争の記録をTVでみることが多いけれど、こういう外国で行われた凄惨な事実もきちんと思い返して、教訓として学ぶべきじゃないかと思う。

  • 289.3

  • 「アウシュビッツを一人で生き抜いた少年」が語るホロコースト体験

    日時:9月11日(水)18:30~
    場所:国際文化会館 岩崎小彌太記念ホール
       東京都港区六本木5‐11‐16
       都営大江戸線 麻布十番駅 7番出口より徒歩5分
       東京メトロ南北線 麻布十番駅 4番出口より徒歩8分
       東京メトロ日比谷線 六本木駅 3番出口より徒歩10分
    会費:1000円(要予約)
    ※同時通訳あり

    【申し込み・詳細】
    http://www.i-house.or.jp/programs/publicprogram20130911/
    【問い合わせ】
    国際文化会館 企画部
    TEL: 03-3470-3211 E-mail: program@i-house.or.jp

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    「子どもが真っ先に「価値なし」と選別され殺された2つのユダヤ人ゲットーで、ナチスの強制収容所で、そしてアウシュビッツ死の行進で、たったひとりで、奇跡的に生き延びた10歳の少年がいた――。チェコ生まれのユダヤ人である少年は、ナチスの台頭にともない家族でポーランドへ逃げたものの、捕らえられ、アウシュビッツで両親とも引き離されてしまう。最後まで諦めないことを教えてくれた両親の愛情といくつかの幸運、人々の助けによって生き抜いた日々……恨みや憎しみの感情を克服し、人権法の権威となった著者が、長らく家族にも語れなかった体験と、ホロコーストの場で問われる人間の勇気や倫理感を、子供の目でつづった感動の実話。」

  • 第二次世界大戦中ナチスの権威が猛威をふるっていた時代、ホロコーストをたった一人で生き抜いたユダヤ人の少年トミー(=著者)の物語。

    ユダヤ人の両親のもと1934年チェコスロバキアで産まれ、ドイツ軍がせめてくると一家はポーランドへ逃げたが、そこでも暮らしていたゲットーがナチによって一掃される。その後労働収容所へ収容され、次いでアウシュビッツへと移送された。
    アウシュビッツで両親と離れ離れになり、その後は幼いながらも(10歳だったとか・・・)幾多の死の場面をくぐりぬけ機転を利かせながら懸命に、たった一人で、おさないいのちを守りぬいた。

    ・・・本よみながら、何度も、涙がこぼれそうに・・・
    罪のな弱いたちばの人々が、国家や権力によって迫害されるという悲劇。
    ドイツという哲学や人文学のすすんだ近代国家で、何故このような人道に反する主義がまかり通ってしまったのか。(ユダヤ人、というかイスラエル人の歴史が云々とか言われてますけど)(個人的な怨恨じゃない限りこんな凄惨きわまる大量殺戮が起きるはずないわけで)(まっとうな教育を受けた知的階級の人々でさえ、ホロコーストに加担した若しくは見て見ぬふりをしたというのは・・・)、解せぬ・・・
    そもそもどうしてこのような大量虐殺がおこってしまったか、それは永久に“原因を究明できない”ことらしい。というのもホロコーストを経験した著者自身が、
    『ホロコーストについても、ドイツ人の犯した罪についても、あるいはドイツ人が何を知っていて何を知らなかったかについても、一般化したところで、いかなる力が世界史上もっともひどい悲劇のひとつを生み出したのかを理解することなどできないという、ありふれた結論にいたるだけである。また、そうした一般化は、虐殺や、その他これまで生きてきた間に起こった多くの大量殺人を人間の中にある何が企て、実行させるのかを説明するのにも役立たない。』
    と語っていた。

    ただこういった大量虐殺、歴史上の最大なる悲劇を今後おこさせないために、青年となった著者は渡米し、アメリカの大学で法律をおさめ、今では高名な国際法学者となった。
    国家に罪を犯させないために、国を裁く力が必要だという。
    それでも未だに、世界からは、大量虐殺・テロリズムが根絶していない。
    いまこの本を読んで、わたしたちにできることを考える時がきているとしみじみ考えた。

  • ナチスドイツのユダヤ人迫害については、
    「アンネの日記」が有名ですが、実際アンネフランクの日記は収容所に入る前までの事です。
    この本の主人公は、アウシュビッツを含む数か所の収容所やゲットーをまず母親と後には父親とも離れれて一人で生き抜いた生活を、長じて振り返って書いたものです。しかも作者トーマス・バーゲンソールは国際司法裁判所判事を務めた人です。

    現代の A LUCKY CHILD とあるように運がよかったのでしょう。でも、彼の両親や彼自身の知恵や勇気、度胸のようなものがその運を引き寄せたと、読んでいてつくづく思います。

    アンネの日記と並んで長く読まれる本となってほしい本です。

  • あの悪名高きアウシュビッツ収容所
    そしてその中でもよく聞く単語が”ガス室”と”死の行進”だ
    ”死の行進”の時、わずか10歳だった少年がそれを生き延び、
    そして後年国際司法裁判所の判事にまでなった。
    子どもでも殺されずに済むこともあったのか、と驚いた。

    引用した文章は矛盾しているようで確信をついているのだと。
    死の選別を逃れ、多くの人から手を差し伸べられ、
    そして助かったことが幸運なのだと。

    内容は本当に読み応えがあるが
    多分翻訳の関係で、いきなり単語がでてきたり、
    なんお脈絡もなく登場するのが読みにくくも感じた。

  • 色々な人々の行為によって生き延びるとができたという点では運が良かったと言えると思いますが、両親、特に父親の存在があったからこそ、運の良さにつながっていったのではないでしょうか。その父親が戻って来ないのはなんとも切ないです。屋根の無い列車にパンを投げ入れる行為には本当に救われる思いがします。

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