共依存 苦しいけれど、離れられない (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022617248

作品紹介・あらすじ

家族問題に関わってきたベテランカウンセラーが、「私が見捨てればあなたは生きていけない」という幻想の背後にある「共依存」の罠を、臨床例や映画などを題材に小気味よく分析。引きこもり、ギャンブル・アルコール依存症に悩む家族を解決へと導く。

感想・レビュー・書評

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  • 引きこもりの息子と母、ギャンブル・アルコール依存症の夫婦、ダメ男を常に選んでしまう女性……。
    「私が見捨てればあなたは生きていけない」というかけがえなさ幻想の背後に張り付いた「共依存」の罠を、長年、家族援助をしてきたベテランカウンセラーが、カウンセリングの臨床例、映画、小説などを題材に子気味よく分析する。
    「愛だったはずなのに、なぜ苦しいのか」への明快な答えがここにある。
    アルコール中毒者など依存症がいる家族には、依存症患者が依存症によって問題を引き起こしても何事もなかったように表向きは平穏な家庭を維持するために、依存症患者がこのままほっておけないと家族に思わせる「ふりまわし」によって家族によるケア(依存症患者が起こした失敗の後始末をするなど)を引き出し、依存症患者の家族は依存症患者を世話しながら自分の世話が必要な依存症患者に依存しているという構造があり、夫やパートナーの世話をしわがままを許しながら上手くコントロールしていくというのが女性の上手い生き方であるという通念が根底にあること、そして弱い相手をケアすることによって自分が相手にとってなくてはならない存在になり支配するというパワーゲーム、自分と相手の意思が同じで相手を善意の元にコントロールするパターナリズムが根底にある。
    共依存の構造とその不毛な構造から抜け出し共依存を辞めるにはどうしたらいいかなどを、韓国映画や日本映画を例にとってわかりやすく描いているので、依存症患者の家族やパートナーには必読書となっています。

  • 信田さよ子先生の本は2冊目のレビューです。

    「アダルトチルドレン」「共依存」という言葉が人口に膾炙していく中で、この言葉を世に広めた一人である先生自身が、臨床事例やメディア批評を通じて自己批判的に「共依存」について問い直すという内容になっております。

    私自身は共依存の問題を「家族」の問題、つまり親子関係、夫婦関係、きょうだいの関係といった人間関係の問題としてばかり考えてきたふしがありました。ただ、それだけでなく「ジェンダー」の問題、つまり男女の性別役割分業の問題、結婚制度の問題、性別にかかわる社会的立場のズレもまた共依存の問題を乗り越えがたくしていることを改めてこの本で考えさせられました。例えば、「妻は旦那をケアして当たり前」という価値観、アルコール依存症の夫をケアする妻に対するまなざしとアルコール依存症を持つ妻をケアする夫に対するまなざしの違い等。

    それにしても、共依存の恐ろしさはやはり世話をすることが「権力」であったり「暴力」であったりに変質してしまうことですね。「あの人が困っているから助ける」というところから「強い自分が弱いあの人を世話して〈あげる〉」という支配にだんだん変わっていくことですね。

    力をもたない側がケアさせられることを強制と感じないほどに馴致され、拒否したいと感じる自分がまちがっているとまでケアの正当性が内面化されたとき、時としてケアはひとを殺すこともある。(p.85)

    ここの恐ろしさを噛みしめるとき、「共依存は依存ではなく支配なのだ」(p.184)というこの本の結論がよく理解できるようになると思います。
    だからこそ、「支配から脱するために、支配しない・されない地平を希求するために」(p.185)共依存という言葉を手掛かりに、家族のあり方、男女のあり方について問い直していきたいと思います。

  • 古い本なので、扱われている事例に冬のソナタ等がでてくる。現在ではわかりにくい箇所もあるが、パターナリズムや共依存の裏にある支配関係などを明確な文と具体例で明らかにしている。共依存の本を探して読んでいるが、一般向けの本は少ない。古い事例はあるけれど、誰にでも分かりやすく共依存という概念を理解できるこの本は名著と思う。

  • 共依存について、具体事例を挙げながら解説している本。共依存に苦しんでいる人々への具体的な処方箋は挙げられていないが、まずは「客観的に見る」「事実に気づく」ことが必要なのだろうと思った。

  • 油断すると自分も共依存に陥ってしまいそうで怖い。

  • やっぱり、一人では生きて行けない、と。
    自分が意識する、しないにかかわらず、誰かを利用しないと生きていけない、らしい。

  • 「大人とは、適度に他者に依存できる人のこと」という恩師の定義がいかに慧眼であったか。1990年代の初めのこと。

  • 分かるようで分からなかった「共依存」という言葉。
    本書を読むと、そのもやもやが晴れました。
    共依存という言葉は、もともと草の根的に使われていたのですね。それ故、概念の拡散化が起こり、曖昧な使われ方をしていたようです。

    あとがきには『支配から脱するために、支配しない・されない地平を希求するために、役立てていただきたいと思う』と書いてあります。

    共依存=悪いこと ではなく、「共依存」とよばれる関係性の裏に、支配やジェンダーの構造がかくれていいる、ということだと思いました。

  • 親切アピールなひとが何故に苦手に感じるのか、長年の謎が溶けたーッ!かけがえのなさ、家族愛、無意識下の善きことに潜む暴力の恐ろしさよ。かつてのイヤゴトがフラッシュバックしたりして、最後まで読み進めるのはしんどかったけれど、学ぶことも多し。

    いくつかのフィクションを挙げての事例紹介も大変面白かった。山田詠美はこーゆーの巧いよね。あと「冬のソナタ」のくだりとか、「ジョゼと虎と魚たち」の切り口は目から鱗!そうだったのかッ!

  • この病理について表面的にしか知らなかったけど、「支配」という言葉に妙に納得するとともに、背筋の凍るような怖さを感じた。結構裾野の広い病理だというのも初めて知った。

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著者プロフィール

公認心理師・臨床心理士、原宿カウンセリングセンター顧問、公益社団法人日本公認心理師協会会長。1946年生まれ。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。駒木野病院勤務、嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室室長を経て、1995年原宿カウンセリングセンターを設立。アルコール依存症、摂食障害、ひきこもりに悩む人やその家族、ドメスティック・バイオレンス、児童虐待、性暴力、各種ハラスメントの加害者・被害者へのカウンセリングを行ってきた。著書に、『母が重くてたまらない』『さよなら、お母さん』『家族のゆくえは金しだい』(いずれも春秋社)、『カウンセラーは何を見ているか』(医学書院)、『アダルト・チルドレン』(学芸みらい社)、『家族と国家は共謀する』(角川新書)、『タフラブ 絆を手放す生き方』(dZERO)、『共依存』(朝日文庫)などがある。

「2023年 『家族と厄災』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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