山口百恵 赤と青とイミテイション・ゴールドと (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022617255

作品紹介・あらすじ

無数のアイドルが生まれては消えゆくなか、なぜ私たちは、彼女だけは忘れられないのか-。芸能界デビューから40年。膨大な文献と資料から、本人と関係者の発言を徹底収集。「伝統」と「革命」を同時に達成した、歌謡史上の奇蹟「山口百恵」とその時代を活写した画期的評伝。

感想・レビュー・書評

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  • 山口百恵のデビューから引退までの軌跡を、さまざまな媒体に発表された証言をまとめながら描いた評伝です。

    戦後の芸能史の流れのなかで、歌手として、あるいは女優としての山口百恵がどのような位置を占めるのかということが明確にされており、興味深く読みました。

    ただ、不満を感じる点がないわけではありません。たとえば著者の『松田聖子と中森明菜 増補版 一九八〇年代の革命』(朝日文庫)では、著者自身がリアル・タイムで聖子と明菜の2人をどのように受け取ったのかということについても述べられていました。しかし本書では、「彼女のデビュー時から引退までのことはよく知っているが、執筆にあたっては、いったん当時の記憶をすべて消去し、文献と映像資料で確認したうえで書いた」と述べられています。これは、本書を客観的な評伝として刊行したいという著者の意図によるのだと思うのですが、評伝というフォーマットに乗せるに際して、著者がわかりやすいストーリーに頼っているような印象もあります。具体的にいえば、本書のストーリーは伝統的な芸能界の因習が、個人としての山口百恵とは区別される、芸能界のなかの「山口百恵」によって打ち破られたというストーリーにのっとって、彼女の芸能活動を整理されているのではないかと思えてしまうのです。

    たしかに著者の述べるようなしかたで「山口百恵」を戦後日本芸能史のなかに位置づけることは可能なのかもしれません。しかしリアル・タイムで彼女を応援していた人びとは、そうした「山口百恵」像にみずからの夢と青春を見ようとしていたはずであり、そうした享受のありかたも含めて「山口百恵」を描いてほしかったという気がします。たとえば平岡正明の『山口百恵は菩薩である』が、一面的なしかたではあれ、そうした「山口百恵」に迫っていましたが、それにくらべると著者の禁欲的なスタンスは、かえって単調な図式化を招いてしまったのではないかと感じてしまいました。

  • 2012年刊。1973年~80年。この山口百恵の芸能活動時代は私の小学生時代にほぼ被る。TVドラマは、ある程度お話を理解しながら見ることができ、また、歌謡曲やポップスに漸う関心が向けられていく年代。が、映画やコンサートを一人(ないし友人どうし)で見に行くのは未だ尚早だった時代。TVで薄幸の若人を演じる姿に素直に涙し、歌(特に阿木燿子作詞作品)では大人の世界を垣間見せてくれた存在である。ファンの私がバイアスなく読むことの難しい本書だが、記録ではなく記憶に残された彼女の、プロとしての在り様を刻印するには十分。
    何かを極めた上で、脱皮する。これが長く人に知られ続ける秘訣で、百恵がこれを実践できたのも確か。が、一方、これが上手くいくか否かは、時代とのマッチング・ライバル等、偶然や多要素に依拠するのは間違いない。ただ、そんな中、心身とも彼女を安定させた三浦友和という存在の大きさは随所に感じられる。PS.後年、富田靖子で撮った「さびしんぼう」という大林宣彦監督の映画。これが高校時代の山口百恵のために企画されたというのは意外。良作なのは勿論たが、百恵で見てみたかったというのも偽りない気持だ。

  • 当時の芸能界の裏側が語られており、興味深かった。

  • 純白のドレスに身を包んだ彼女が、白いマイクをステージにそっと
    置いた時に彼女は「伝説」となった。

    「わたしのわがままを許してくれてありがとう。幸せになります」

    人気アイドルのまま引退したのは山口百恵。映画やテレビ・ドラマ、
    CMで共演した俳優・三浦友和の妻になる為に。

    彼女が芸能界で活躍したのは僅かに7年半。素人スカウト番組
    「スター誕生」への出場から引退までを、年ごとに追ったのが
    本書である。

    引退前に出版されてベスト・セラーになった本人の筆になる『蒼い
    時』や雑誌のインタビュー、伴侶となった三浦友和の著書は勿論、
    関係者の発言を、既刊の書籍や雑誌から拾い集めて山口百恵像を
    浮き彫りにしている。

    頭脳警察などを聴いていた背伸びした子供だった私は、ピンクレディ
    やキャンディーズの歌は歌えないし、振付も出来なかった。しかし、
    山口百恵と沢田研二は別格だ。このふたりの歌なら、結構歌える。

    映画も、ドラマも「百恵ちゃんが出ているから」との理由で見ていた。
    不幸な役柄が多かった。白血病になったり、産まれたばかりの頃に
    取り違えられていたり、短距離走のトップ・ランナーだったのに
    走れなくなったり、身分違いの恋を反対されたり。

    映画「絶唱」を観て、死して花嫁になれた小雪が可哀想でボロボロ
    泣いたのを思い出す。

    歌手として、女優として。ふたつの面の百恵像を描きながら、その
    時代の芸能界の動きも記されている。

    存命している関係者もまだまだいるのだが、直接の取材を一切せずに
    書くという実験的評伝の手法も面白い。

    コアな百恵ファンには物足りないかもしれないが、私のようなミーハー
    なファンだった人間にはいい資料だ。

    本書を読んで改めて気付いた。百恵ちゃんは引退した時、21歳だった
    のだよね。その歳にしてあの存在感。こんなアイドル、もう出て来ない
    だろうなぁ。「百恵伝説」は「百恵神話」になりそうだ。

  • 丁寧に資料を集めてあるのも、山口百恵が歌手と女優の2つの分野に分化してなおかつ、同時並行的に成功していたことも、よくわかるけれど、幾分飛躍し過ぎでは?という箇所も。

    たとえば1978年の紅白の場で、「真っ赤なポルシェ」を「真っ赤なクルマ」とかえて歌うよう指導されていたというのは、有名な話であるし、それにも関わらず彼女が本番で「真っ赤なポルシェ」のまま歌い切ったこともまた有名であるが、それを「芸能が官僚主義を打ち破った瞬間」とまで言うのは、飛躍し過ぎではないだろうか?

    また、彼女の恋人宣言を、「芸能人が置かれている不自然な状況を打破うするものとなり、その意味において、人権宣言と言っても過言ではなかった。」とまで言うが、いややっぱりそれは過言ではないのか。

    彼女の成し遂げたことを偉業と言うにやぶさかではないが、でも、ここまで別格扱い、ここまで美化されるほどなのだろうか?と当時も今も、思う。
    潔く引退したことによって(そしてその後ほぼ出てこないことによって)価値が高まっているのは、否定出来ないところではないか。

  • 自分でも呆れるが、やはり私は百恵ちゃんがものすごく好きだ。で、ついついこの手の本を買ってしまう。
    知っている話も多かったが、これを読んで改めて思うのは、彼女は本当に「大人」だという事。
    引退時、まだ21歳だった彼女は、今の私よりもずっと大人だ。

  •  山口百恵の評伝。おおよそ知っていたことばかりだったけど、それなりに面白く読んだ。やはり百恵さんって活動していた頃から稀代の存在だったんだなあ。とはいえ、私の認識や記録に照らしても、どうにも首を傾げる記述が何か所かあったのも事実。

  • 膨大な資料から分析する時代の顔、山口百恵。当時の風俗、背景も客観的で芸能界とテレビ史の教科書としても読みやすい。

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プロフィール

作家、編集者。1960年東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。出版社勤務の後、アルファベータを設立し、代表取締役編集長として雑誌『クラシックジャーナル』、音楽家・文学者の評伝や写真集の編集・出版を手掛ける(2014年まで)。その一方で、作家としても活躍。クラシック音楽への造詣の深さはもとより、歌舞伎、映画、歌謡曲、漫画などにも精通。膨大な資料から埋もれていた史実を掘り起こし、歴史に新しい光を当てる執筆スタイルで人気を博している。

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