小学生に授業 (朝日文庫)

  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 91
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022617460

作品紹介・あらすじ

「どうして勉強しなくちゃいけないの?」「わかりませーん」。小学校の教壇に立った、世界的権威の教授陣が、子供たちの率直な発言に、あらゆる知識を総動員し、身振り手振りを交えて白熱の授業を繰り広げていく。笑いあり、突っ込みありの9時限をライブ収録。

感想・レビュー・書評

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  • 2021.08.20 読了

     それぞれの分野の第一人者である研究者が、小学生に45分でわかりやすい授業をするという内容。
     その先生の生い立ちや人生の話、なぜその分野に興味を持ったかという話、また当然、その分野の分かりやすい解説などからなる。

     小学生は集中力もなく、勉強をそこまで積んでいないが、本書の講義内容はどれも大変魅力的である。読者も引き込まれてしまうが、きっと小学生も楽しい時間を過ごしただろう。たまにこのような機会が小学生に提供されるといいと思う。一生印象に残っているに違いない。

     どれも本当に面白かったが、一番面白かったのは尾本先生の「自然に学ぶ」。小さいころ蝶に興味を持っていて、ある日自分の部屋にひらひらと一匹の蝶が入ってきたが、それが大変珍しい種類であり、そこから生物にますます興味を持ったという。勉強をある程度していなければ、その蝶が珍しいということは分からない。
     そのエピソードを小学生に伝え、「運というものはね、ただ黙っていれば上からポンと降ってくるものではない、運というものはつかむものです」と尾本先生は教えた。これには大変共感できる。小学生の段階でこのような先生の講義を受けられた生徒たちはきっと立派な社会人になっているに違いない。

     他にも、井波先生の「三國志」は面白かった。小学生にはちょっと難しい内容だったかもしれない。とにかく人物名が難しくて私も何度も挫折していたが、井波先生の説明を聞いて、人物像や国がどのような動きをしていたかまで大変よく分かった。もう一度三國志にチャレンジしたい。

     また、芳賀先生の「俳句」も印象に残った。たった5・7・5の17文字なのに、その中にその時代や風景、人の営みなど、なんでも盛り込んでしまう。俳句は世界に誇る日本の芸術である。小学生たちも次々と俳句を作って発表していた。面白かったのだろう。

     最後に、木村先生の「交渉」。木村先生の御専門は国際政治学で、戦争や条約などに関わる分野だが、あえて交渉を題材とした。ルールでがんじがらめにするのではなく、「なぜそのような主張をしているのか」を話し合いで明らかにすることが大事だと。その点も大変共感できる。イスラエルの土地を取り合っていた問題などを引き合いに出し、交渉の重要性を訴えた。

     この本は何度も読み返すに値する良書である。第一線で、誰にもわからないほど難しい研究をしている先生方ばかりなのだが、専門家相手に論争もできれば、小学生相手にこれほど分かりやすい講義もできる。
     まさに自由自在、融通無碍である。最高の「教師」というものはこういうものなのかもしれない。

  • 図書館で。
    難しい事を易しく伝える事が出来るというのが本当に物の本質を掴んでいる、という事だと思う。

  • 国際日本文化研究センター(日文研:ニチブンケン)という一風変わった研究所が京都の西の端、桂坂にあります。近代的な中に日本風の様式を組み込んだなかなかしゃれた建物です。その研究所にはいろいろな分野のちょっとおもしろい先生方が集まっていらっしゃいます。その先生たちが隣の小学校で45分1回きりの授業をされています。そのようすが本書にまとめられました。現在この研究所では「小学生の授業ができないようでは、日文研の教授は務まらない」などと言われているのだそうです。だいたい大学の授業なんてつまらないものでしたが、これらの授業はいかがでしょう。ご一読を。ラインナップは 梅原猛「学問の楽しさ」、山折哲雄「宮沢賢治」、河合隼雄「道徳」、尾本恵市「自然に学ぶ」、井波律子「三国志」、芳賀徹「俳句」、木村汎「交渉」、山田慶兒「時を計る」、安田喜憲「地中の花粉」
    ここで提案です。どうでしょう、この記事を読んでいただいた保護者のみなさんの中で小学生に授業をしてもいいかなと思われた方、ぜひご連絡下さい。なかみは何でも結構です。専門にされている内容を子供たちにわかりやすくかみくだいて話してみて下さい。きっと刺激になるはずです(どちらにとっても)。(この企画、おもしろいと思ったんだけれど、結局誰からも申し出がなかったなあ。ところで、この本、新規に文庫になっている。えらい、朝日文庫さん。えらそうで、失礼)

  • 子供向けの本って良書が多いと感じます。必ず何か発見があります。分かり易く書くって、作り手としては大変な作業なんでしょうね。ところで、国際日本文化研究センターってそもそもどんな機関なのでしょうか?

  • 20130711読了
    1996年、国際日本文化研究センターの教授陣9名が小学5・6年生向けに行った授業を録画し、文字におこした記録。●テーマはさまざま。小学5・6年生の理解度に合わせようと各人が工夫している様子がうかがえる。途中で終業の鐘がなってしまう回も。●個人的には安田喜憲氏の「地中の花粉」がおもしろかった。

  • その世界では大家と尊敬を集める人ばかり。
    それでいて、その眼差しは温かく、目線は
    子供たちと同じ位置にある。
    こんな授業、受けたいなぁ。

  • 一線で活躍する研究者が、小学生にした授業の内容を文字に起こしたもの。

    程よい読み物でした。

    小学生はどんな反応をしていたのか、気になるなぁ。

  • 学ぶことの大切さを感じることができた。
    梅原猛、木村汎、安田喜憲の話が面白かった。

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