袴田事件を裁いた男 無罪を確信しながら死刑判決文を書いた元判事の転落と再生の四十六年 (朝日文庫)

著者 : 尾形誠規
  • 朝日新聞出版 (2014年6月6日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022617996

作品紹介

【社会科学/社会】袴田事件の裁判官だった熊本典道は、無罪を確信しながら死刑判決文を書くが、罪の意識に苦しみ、裁判官も辞め、酒で体を壊し、離婚を重ね、自殺も試みる。罪を背負った裁判官の半生に迫る一方で、冤罪の過程を克明に記す本格ノンフィクション!

袴田事件を裁いた男 無罪を確信しながら死刑判決文を書いた元判事の転落と再生の四十六年 (朝日文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 1966年、静岡県清水市の味噌製造会社専務宅で発生した強盗殺人事件は、
    2年後の1968年に静岡地裁で被疑者とされた袴田巌氏に対して死刑判決
    を下した。

    「私はやっていません」。公判で一貫して無罪を主張する袴田氏に対し、
    3人の裁判官うちのひとりであった熊本典道氏は無罪を確信していた。
    しかし、合議の間にも残り二人の裁判官を説得することが出来ず、無罪
    であろうと感じた袴田氏の死刑判決文を書く役目を負わされた。

    公判後、裁判官の職を辞した熊本氏が突然に公の場で袴田氏の無罪を
    主張したのはあの判決文を書いてから約40年後のことであった。

    裁判官には退任後にも守秘義務が課せられる。それを破ってまで声を
    上げた点だけでも熊本氏を評価していいではないかと思う。

    だから、著者のように一私人となった熊本氏の過去をほじくり出すこと
    は必要だったのだろうかと疑問に感じるのだ。

    自身が係わった袴田事件に関しての発言を、美談と受け取るかどうかは
    人によって違うのだろうし、裁判官を辞めた後、ホームレス寸前まで
    行った熊本氏の境遇には様々な要因があるのだろう。だからと言って、
    袴田事件の公判がまったく影響を与えていないとは言い切れないので
    はないか。

    前立腺がんの治療の影響で高齢者特有の症状が出ている熊本氏から、
    著者が聞きたいと思ったであろう肝心な部分はほとんど聞けていない。
    取材対象に迫れずに周囲をぐるぐると回っているだけの印象を受けた。

    取材対象に迫れなくても、書き方が違えばもっと違った印象を受けた
    のかもしれない。著者の感情を抑えてくれればよかったのにと思う。

    尚、ジャーナリストの江川紹子氏の解説には冤罪事件に対する静かな
    怒りに満ちていた。本文よりもこの解説の方がよかった。

  • 江川紹子氏の解説が一番読み応え有り。

    証拠を捏造した警察官や違法な取り調べに対して罪は問われなかったのか?
    捜査自体無かったのか?

  • 「袴田事件」とは、2014年3月、死刑判決から45年後に犯人とされた袴田氏が釈放されることとなった冤罪事件。その一審となった静岡の地方裁判所で無罪の心証を持ちながらも、他の二人の裁判官の意見を覆せず、多数決から死刑判決を書くことになった熊本氏の人生を追い掛けた本。

    熊本氏は、袴田氏釈放につながることにもなった告白を2007年に行っている。熊本氏が死刑判決のあと良心の呵責のために裁判官を辞し、さらに今は身を持ち崩していることからも、評議内容を洩らすということは法に触れているかもしれないが、その姿勢が世の中からは称賛された。

    しかしながら、この男を追っていくとどうも正義感だけで語れるものではなさそうだ、というのがこの本。本人へのインタビューも通して、酒におぼれ、二度の離婚、子供からも疎遠にされていること、など性格破綻者としての面も見えてくる。先の無罪の心証を語るインタビューについても子供からは冷たく効果を意識したうまい演出だったと言われる。一度再会してもその後連絡が続くことはないようだ。

    これだけの素材が揃っているので、もう少し本としての娯楽性を高めることができたのではないかと思われる。一方、熊本氏がこれを美談にすべきではない、と言ったことに対して、著者の記述はバランスの取れたものになっている。熊本氏のその言葉は、決して謙虚さから出たものではなく、心底からの切実な要望であるからだ。そこについては信頼できるような気がする。

    ちなみに袴田氏は裁判所勤務時代、検察からの勾留請求を3割くらい拒否していたという。今は1%程度と言われているので、当時から比べても今の検察と司法の方が癒着した関係が進んでいるのではないか。冤罪事件の裏には、捕まることのなかった真犯人がいるということも忘れてはならないことだ。司法システムへの批判は本書の主題とは離れるとはいえ、その点にも言及してほしいところではある。

    どこかもやもやする後味を残す本。

  • 読み応えはあった
    けど どうなんだろう?
    なんとなく後味が悪いというか なんとなく消化不良に感じた

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