近代化と世間 私が見たヨーロッパと日本 (朝日文庫)

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  • 朝日新聞出版
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レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022618115

作品紹介・あらすじ

かつて日本と同様な「世間」が存在していたヨーロッパが、なぜ個人を重視する社会へと転換したのか。個人の誕生の背景には何が存在していたか。従来の歴史学が語らなかった生活の風景に踏み込み、日本人の生き方を問い続けた著者による総決算。西洋中世史研究と日本社会論とを鮮やかに連結させた、碩学の遺著。

感想・レビュー・書評

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  • 「世間」の中で生きている日本と、「世間」をもたない欧米人の差はどこから来たのか?社会society、個人Individualが日本語に訳出されて150年らしいが、日本では概念が確立していない!一方、西洋では12世紀から思想分野でのルネッサンスが始まり、900年を経てきたとのこと。漠然とした公共性である「世間」の中で生きている無責任体質の日本人の特徴は思い当たる。「世間」は大学が91年の文科省大綱化により大学が崩壊した!それを許している?!と舌鋒鋭い批判がそれを示している。キリスト教と天皇制の影響が明らかにあったのであろう。西洋では脱神話化とともに動物、自然、性などに関わる聖なる仕事が差別される対象になっていったという紹介がリアルで興味深い。結語に引用される12世紀の哲学者フーゴーの『ディスカリコン』の言葉が面白い。「故郷が甘美だと思うものはいまだ脆弱な者に過ぎない。どこに行っても故郷と同じだと思うものはすでに力強い人である。しかし全世界が流謫の地であると思うものこそ完全な人である」著者は親鸞の中にこの答えを見つけようとしたらしい。この「流謫の地」が「世間」であり、その中で生きるということが結論か。

  • 阿部謹也さんの本は、ともに大学学長である日高敏隆さんとの対談を読んで、とても面白かったので、今回も気軽に読んでみました。

    しかし、この本はかなり難しいです…。

    結語の日付が2006年7月10日、亡くなったのが9月4日、刊行されたのが12月です。
    いわば絶筆ですが、最晩年腎臓病を患い透析を受けていて、71歳で急性心不全により急逝されたということで、もしかしたら遺書の意図もあったのかしら?
    私レベルではダイイングメッセージのようにも見えます。

    たとえば終章の最後の3行が、こちら。
    「最後に結論らしきものを掲げれば次のようになろう。
    欧米の自然諸科学の現状を仏教の視点から見直すこと。
    さらに、わが国の現状を個人の優位の下で整序すること。」

    巻末にこの部分について養老孟司さんの解説があって、少しだけ救われます。
    「さすがによく見ておられたなあ、と思う。でも多くの読者にはピンと来ないかもしれない。具体的になにをいっているのか、説明が欠けるからである。でもそれは大切なことである。なぜなら読者は、そこから出発して、あたらめて自分の頭で考えざるを得ないからである。この短い文章は、阿部さんが将来を考えて行った予言の一つといってもいいであろう。それはやがて実現するはずだと、私は思っているのである。」

    頭の良いかたなら、この本一冊で阿部謹也さんの言おうとしていること理解できるのかもしれないけど、私のレベルでは彼の書かれたたくさんの本を読んで、ようやく見えて来るのでしょうか?
    それでも結局わからないのか?それでも頑張って読みあさる意味があるのか?そうまでして彼の本を読む必要が私にあるか?それよりもっと読むべき本がたくさんあるのではないか?

    http://mixi.jp/view_item.pl?id=668665

  • 読み応え強力。歴史を学ぶとはこういうことか。視程の広さと自省の深さ、潔さ。すばらしい。読むのに体力がこちらにも必要。

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プロフィール

1935年生まれ。共立女子大学学長。専攻は西洋中世史。著書に『阿部謹也著作集』(筑摩書房)、『学問と「世間」』『ヨーロッパを見る視角』(ともに岩波書店)、『「世間」とは何か』『「教養」とは何か』(講談社)。

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