ヒーローを待っていても世界は変わらない (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022618184

作品紹介・あらすじ

【社会科学/社会】「反貧困」を掲げ、格差社会に異議を申し立てた著者渾身の民主主義論。議会政治とは非効率的なシステムでありつつも擁護すべきとの立場から「おまかせ民主主義」「強いリーダーシップ待望論」に警鐘を鳴らす。文庫化にあたり補章を追加。地域格差や教育にも言及。

感想・レビュー・書評

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  • 民主主義の面倒くささ(利害調整の拒否)を放棄するところに、強いリーダーを待望する心象が作られる。自分が何ができるか、できるところから始めなければ、上が変わればという誘惑、堕落は常に押し寄せてくる。はっと目の覚めた文章でした。

    ・政府も個人もやる気や意欲の問題にするのは安直で見せかけの回答。
    ・直視すべきは、自分と仲間うちがいかに限定された、ごく限られた人たちにすぎないか、全く理解できないという気持ちになるのは、他の多数の人と大きく意識が乖離してしまっているか、という距離の問題。
    ・あるテーマに強い執着を持っている人ほど、自分はわかっていると強い自信を持っているだけに、異なる意見を落ち着いて聞くことができない。
    ・これからの日本はより競争を激化させる方向では個人も社会も元気にならない、かえってより停滞する。必要なことは競争環境をより過酷にすることではなく、人と人をつなぎ、その関係を結び直す工夫と仕掛けを蓄積すること。
    ・すりよった、とりこまれたという評価の仕方が好きな人たちは、もしかしたらその人自身が俺のいうことを聞けといった一方的なコミュニケーションしか知らない。
    ・時間と空間の問題は、言い換えれば参加の問題。
    ・アウトリーチしても説教では意味がない。
    ・自殺のキーワード。ごめんね、まさか。
    ・誰でも支えられるよりは支える側に回りたい。
    ・なぜ政治家は私たちの声を聞かないのかではなく、より本質的な重要な問いはなぜ私たちは主権者なのに、主権者でないように振る舞うのか、という点。

  • 年越し派遣村の村長をしたことで知られる社会活動家で、内閣府参与として政府入りした経験も持つ湯浅誠氏による民主主義論。
    民主主義は面倒くさくて疲れるものだ。その事実を直視した上で、どうすべきか考えよう。民主主義の活性化のためには、対話が必要であり、そのための時間と空間が必要だ。それらをデザインする力を身につけることが必要だ。本書の大きなメッセージはこのようなものである。
    本書の内容には、かなり共感しながら読み進めた。自分が漠然と考えていたことをうまく言い表してくれていることが多かった。特に政策実施には、異なる意見の人との意見調整が必須であり、その調整コストの負担が必要(政府のやる気の問題ではない)、最善を求めつつ最悪を回避するという態度が求められる、という指摘には膝をうつものがあった。「”溜め”のない社会」になりつつあるという懸念にも同感である。結局、人任せではなく、一人ひとりが直面する課題に向き合い、他者と対話して、一つずつ前に進めていくということを積み上げていくしかないのだと感じた。

  • 関係調整のコストを担う存在が必要。
    ヒーローを求める集団の心理を想像すること。

    現実的で、地に足の着いた支援を重ねてこられた方の言葉だと思いながら読みました。

  • 「みんなにいい顔はできない。現実は厳しいんだ」と言われますが、もしそれが虚構(フィクション)を現実だと思いこんで、現実を見ていないのだとしたら、それは現実に裏切られる他ありません。現実は複雑につながり合っており、弱く見える者を排除していく社会は不活性化し、停滞します。(p.44)

    「壊す時には、壊す前にその建物がなぜ建てられたかを考えてみよ」という格言がヨーロッパにあるそうですが、それを思い出します。(p.65)

     誰でも、支えられるよりは、支える側に回りたい。実際そのほうが、人はより大きな力を発揮します。では、その人が「自分は支え手だ」と実感できるような形でその人を支えることはできないのでしょうか。それが私たちの力量です。
     面倒くさい話です。人と人が出会う場、関係のないところに関係をつくる場、人と人の関係を結び直す場づくりというのは、面倒くさいものです。その面倒くささは、民主主義の面倒くささに通じます。(p.130)

    「決められる」とか「決められない」とかではなく、「自分たちで決める」のが常識になります。(p.160)

     結局、必要なことは、他者の気持ちをくみ取る想像力と(それは自分を省みる力がないとできません)、それを言葉にしたり形にしたりする創造的な実践力です。他人を思いやる気持ちと、それに言葉や形で応える力。人としてもっとも基本的な力が、人間の人間的領域として残るのだと思います。(p.173)

    聞き入れなかった政府が悪いからだ、で済ましてしまうと、自分たちの意見をより政治的・社会的力関係総体に浸透させるために不足しているものは何か、どうして自分たちの意見は十分に広がらないのか、どんな工夫が足りないのか、という問題意識が出てきません。(p.235)

    立てられるべき問いは「なぜ、政治家にロクな人間が少ないのか」「なぜ、政治家は私たちの声を聞かないのか」ではありません。そういう政治家はいるでしょう。しかしより本質的で重要な問いは「なぜ私たちは、主権者なのに、主権者でないように振る舞うのか」という点にあります。どんなときも問いの立て方が重要です。
     これは、政治家の問題ではありません。私たち自身の問題です。(p.244)

  • Ryoさんのおすすめ

  • 付録が素晴らしい。

  • 調整力、場のデザイン、うちらのやるべきこと、できること。

  • 傑作。こういう本が書きたかったね。
    でも、湯浅さんほど社会運動していないから、私には無理か。
    私が言いたいことを代弁してくれている本なので、学生たちには絶対にしっかり読ませたい。

  •  主題は、最近の政治(特に国政)への関心のもたれ方について著者が考えたこと。
     なお、本書で指摘されている〈切り込み隊長的なヒーロー〉像という点は、『民主政治はなぜ「大統領制化」するのか――現代民主主義国家の比較研究』(ミネルヴァ書房, 2014年)でも、俎上に上がっている。


    【内容紹介文】
    “「反貧困」を旗印に、格差社会に異議を申し立てた「年越し派遣村」元村長・湯浅誠の最新刊。2012年3月までの約2年間、内閣府参与として政権に入った著者が、「橋下現象」や「決められない政治」「強いリーダーシップ待望論」について徹底的に考え抜いた民主主義論。議会政治と政党政治をあえて擁護する立場から、「おまかせ民主主義」に警鐘を鳴らし、真の民主主義のあり方を探る画期的論考!”
    http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=14122


    【目次】
    目次 [003]
    文庫版まえがき(二〇一四年十一月 湯浅誠) [007-010]

    第1章 民主主義とヒーロー待望論 011
    〔Q.ホームレス支援、格差・貧困問題に携わってきた経験から、一転、政策づくりの現場に入った経験をどう振り返りますか。〕
    壁の向こうにあるもの/討論番組で直面した「ガラパゴス化」/「狭く濃く」か「広く薄く」か/誰が調整責任を負うのか/一億二千万の「民意」/最善を求めつつ最悪を回避する
    〔Q.「強いリーダーシップ」や「決断できる政治」を望む声が高まっています。前へ進むためには必要な力ではありませんか。〕
    「一人ひとりを大切に」は「既得権益を大切に」?/ヒーローは切り込み隊長/「マスコミが悪い」で済ませてはいけない/ヒーロー待望論の心理と帰結/私の兄も「既得権益」?/家族に及ぼす影響/「もらいすぎだ」と世間の声が高まれば/悲しすぎる結末

    第2章 「橋下現象」の読み方 047
    〔Q.「決められない政治」から「決められる政治」へ政府は舵を切ったと言っていますが、どう評価しますか。〕 
    民主主義は、面倒くさくてうんざりするもの/主権者は、降りられない/民主主義を放棄するという選択肢/水戸黄門型ヒーローという魔法のボタン/巨大なグレーゾーン/橋下大阪市長への期待/政治不信の質的変化/言語センスと芸風/議会政治と政党政治をあえて擁護する/焦りの背後にある格差・貧困問題/“溜め”のない社会/杞憂に終わればそれでよし

    第3章 私たちができること、やるべきこと 077
    〔Q.ヒーロー待望論は危ういとして、では人々はどこに向かえばいいと考えますか。〕
    自分たちで考える民主主義へ/「青い鳥」は見つからない/時間と空間が必要だ/時間と空間が参加を可能にする/参加のバリア/「本人の気持ち次第」という落とし穴/東大合格発表の日/「ホームレスなんかにかぶれて」/記者会見の開き方を知っているのか/誰が矛盾を引き受けるのか/言い放つだけでは、現状は変わらない/どうして「既得権益」に見えるのか/寄り添うということ
    〔Q.これまでの経験から、今、どんなアプローチが可能だと思いますか。〕
    やれることはたくさんある/東日本大震災、仮説団地の悩み/被災地で増えるパチンコ店/仕事を失った中高年男性の居場所をつくれますか/自殺と「サバイバーズ・ギルト」/隠れた稼ぎ頭がいる/「あなたの力が必要です」/「足湯」は何のためにするのか/創造性に乏しい社会は発展しない/「高度経済成長」という断絶/社縁中心社会/こじれた関係を修復する技法/無縁からの縁づくり/ヒーローを待っていても世界は変わらない

    文庫版補章 「今ここ」にあるものに気づく 153
    「決断する政治」の実現/「アベノミクス」と「アベイズム」の同時進行/低下し続ける議会の存在感/主権者からは逃れられない/手持ちの衣服を増やすように/東大生は何を売りにできるのか/「ないものねだりより、あるものさがし」/「教える」と「学ぶ」/補足(二〇一四年十一月二十四日 自宅にて)

    資料 [193-240]
    解説 時代の一冊(あさのあつこ) [241-249]



    【抜き出し】
     アメリカの批評家ノーム・チョムスキーは依然、公民権運動のヒロインだったローザ・パークスについて「ローザ・パークスは傑出した人物だが、私たちにとって重要なのは第二のローザを探すことではなく、ローザを生み出した土壌をつくることだ」といった趣旨のことを言い、その全体を「魔法のボタンは存在しない」という一文で結びました。
     公民権運動のヒロインをこの文脈で出すことに違和感を抱く人は多いかもしれません。しかし、〔……〕重要なのは「人」である以上に「土壌」だというのは、同じようにあてはまる普遍的な指摘だと思っています。
    [pp.62-63]

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著者プロフィール

社会活動家・法政大学教授。1969年東京都生まれ。日本の貧困問題に携わる。2008年末の年越し派遣村村長を経て、09~12年内閣府参与(通算2年3ヶ月)。政策決定の現場に携わったことで、官民協働とともに、日本社会を前に進めるために民主主義の成熟が重要と痛感する。著書に『ヒーローを待っていても世界は変わらない』(朝日文庫)、『反貧困』(岩波新書、第8回大佛次郎論壇賞ならびに第14回平和・協同ジャーナリスト基金賞受賞)、『正社員が没落する』(角川新書、堤未果氏との共著)など多数。

「2017年 『「なんとかする」子どもの貧困』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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