植物でしたしむ、日本の年中行事 (朝日文庫)

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  • 朝日新聞出版
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レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022618313

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学評論随筆その他】正月の門松、雛祭りのモモなど、日本の行事やならわしには、決まった植物が登場する。それはなぜか? 植物の特性と歴史的見地から、行事の原点を解く。すると、自然との結びつきを大事にしてきたかつての日本人の暮らしが見えてくる。

感想・レビュー・書評

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  • 20150823中日新聞、紹介

  • ・湯浅浩史「植物でしたしむ、日本の年中行事」(朝日文庫)は 植物から民俗、年中行事を見るといふ内容である。目次を見ると、「神と交わる木、マツ」「アズキの威力」等々で計24、植物好きの人ならば知つてゐるかもしれない多くのことも、さうでない私にはほとんど知らないことばかりであつた。民俗行事にある植物が使はれることがあつても、それがその植物のいかなる点 に由来するのか、私はこれを知らない。さういふ人間には有り難い書である。例へばマツ、本書では漢字で松とは書かずにカタカナ書きである。マツは神格を持つ。これは門松から容易に想像される。ならば古代から門松があつたのか。「『万葉集』の七〇首をこすマツの歌の中にも、門にマツを飾る歌は一つもない。 (中略)新年に門松を立てる行事は、平安時代以前にはなかったらしい。」(14~15頁)そして11世紀後半になつて門松は生まれた。本当は「古色蒼然と した松の古木は威厳を感じさせ畏怖の念を抱かせる。」(14頁)ことの方が先なのである。そこから神の依り代たるマツも門松も生まれたのである。これなどはある意味単純明快、身近な松だからこそであらう。
    ・私が考へもしなかつたこと、「秋の七草考」の中に「オミナエシは女郎花か」といふ小見出しがある。ここでも万葉集の山上憶良の秋の七草を引く。そこでオミナエシは「姫部志」と書かれてゐる。これは何だといふのである。万葉の他の歌でもやはり女郎花といふ表記はない。それでも姫や娘、美人といふ語を含むか らには全く無関係とも言へない。ところが「部志」に相当する部分が女郎花にはない。これはなぜか。前がオミナ、女であるなら、エシ(ヘシ)は何か。「それは飯で、メシからエシへと変化したのである。」(195頁)正確にはメシからヘシ、その現代仮名遣いでエシである。「オミナエシの蕾は黄色で、粟粒に似ており、キビも思わせる。アワやキビの飯は、米の飯にくらべて下位のものとされていた。男尊女卑の時代、米飯の男飯に対してアワ飯は女飯となったのである。 オミナエシには粟花という方言があり、同類に白いつぼみをもつオトコエシがある云々」(同前)つまり男飯と女飯が、オトコエシ、オミナエシなのである。普通はオトコエシの方が大きいからと説明されてゐるはずだが、実はさうではなく、これもまた古代の男尊女卑の名残であつたといふ。試みにインターネットで検索すると、確かに男飯、女飯が出てくる。しかし確信を持つて言へない。曖昧、逃げである。その点、本書の説明は明快である。植物の側から見ると、さうなるしかないといふことであらう。今一つ、ススキである。仲秋の名月にススキを供へるのは昔からの風習である。「中秋の名月に添えられたススキは、その後どう処置されるのだろうか。」(201頁)これも考へもしなかったことである。枯れた花は捨てる、これと同様に考へてゐた。言はば再利用など想像すらしなかつ た。ところが利用するのである。神奈川県ではそのススキを庭に挿したり、煙草乾燥小屋や門口に挿したりしたといふ。これは一種の豊穣祈願であるらしい(同 前)。似たことは台湾でも行はれるといふ。台湾ではお守り的な感じで使はれる(204頁)らしい。それはなぜか、「ススキにはテキリグサの方言があるように、葉辺は鋭利で、茎の切り口も鋭い。うっかり触れたり、踏むとけがをする。」(207頁)これが悪霊にも効くのである。ここから、更にサトイモに話は進む。なかなか一つの植物で終はらない。しかも、いづれも植物学の話題である。民俗はあつても中心は植物、これが本書である。書名通りだが、これが本書のおもしろさである。

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著者プロフィール

(一財)進化生物学研究所主任研究員。元・東京農業大学農学部バイオセラピー学科教授。1940年兵庫生まれ。兵庫農科大学(現・神戸大学)卒業。東京農業大学大学院博士過程修了。農学博士。生き物文化誌学会会長。世界50か国を訪れ、植物を調査、研究している。著書は『世界の不思議な植物ー厳しい環境で生きる』『世界の不思議な花と果実ーさまざまなしくみと彩り』『世界の葉と根の不思議ー環境に適した進化のかたち』(誠文堂新光社)、『花おりおり』(全5巻)『植物ごよみ』『植物と行事』(朝日新聞社)など多数。

「2014年 『世界の不思議な野菜』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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