東京タクシードライバー (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022618481

作品紹介・あらすじ

13人の運転手を見つめた、現代日本ノンフィクション。妻に逃げられた元ホームレス・石原裕次郎に「タメ口」をきいた男・気の優しい、いじめられっ子が持つ誇り…。事実は小説よりせつなくて、少しだけあたたかい。著者、渾身の傑作。第13回新潮ドキュメント賞候補作。

感想・レビュー・書評

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  • 著者の山田清機氏は、早大政経学部卒業後、新卒で就職した大手鉄鋼メーカーを1年半で辞め、その後出版関係の仕事を経てノンフィクション作家となった、異色のライター。自らの過去の体験についても、「長いあとがき」として綴られている。
    本書は、東京のタクシー会社4社で働くタクシードライバー13人への取材に基づいて、それぞれの人生、様々なエピソードについてまとめたノンフィクション作品である。2014年に出版、2016年文庫化された。
    それにしても、タクシードライバーというのは、非常に特異な職業である。タクシードライバーになるために必要なものは、第二種運転免許(東京の場合は、更に地理試験)のみで、過去の職歴や年齢はあまり問われない。そして、タクシー代を払えるだけの金銭を持っていること(本書には、それすら持っていない乗客も登場するが)以外の条件は何もない見ず知らずの人間と、長ければ何時間も密室とも言える空間で過ごす。。。即ち、極めて多様な属性の人間同士が、偶然ほんの一時の接点をもつ、ある意味不思議な時・場所に関わる職業なのである。また、それ故に、そこでは時折、現代日本の首都・東京の縮図とも言えるようなエピソードが生まれるのだろう。
    タクシードライバーの体験を題材にした作品は、古くは梁石日の『タクシードライバー日誌』など、少なくはないが、本書の魅力は、著者自身が苦節の半生を送り、それが、登場人物から(必ずしも明るいものばかりではない)エピソードを引き出し、味わいあるものとして描かせているところではないだろうか。
    大都会東京で生きる人々の、悲しくも、ほの温かい物語が詰まった一冊である。
    (2016年3月了)

  • 人生は予定通りには行かない、なかなかつらいなあといった時、この本を読みたくなります。ドライバー達への取材はひとつひとつがとても面白く、そして励まされます。タクシー業界のエピソードも興味深いです。

  • 13人のタクシードライバーの身の上話を収めたノンフィクション。

    タクシー業界は一種のセーフティネットのように行き場のない人たちの受け皿になっているため、ドライバー達の経歴も種々雑多で実にさまざまな過去を持った人達が集まる。
    妻に逃げられた元ホームレスや、バブル崩壊で約八億円もの借金を背負った元社長、子どもと専業主夫になった夫を養うためにタクシー業界に飛び込んだ元スーツアクターなど異色の経歴ばかりで、それぞれの人生がありとても面白かった。

    無線屋ドライバーの何曜日の何時にどこで無線客が現れるかをもとにスケジュールを組み、配車センターのオペレーターの癖まで研究し尽くして確実に客を乗せて稼ぐテクニックがパチプロのようで興味深い。アナログからデジタル無線になってこの技が活きる余地がなくなったのが残念だ。

    作者のフリーライター独立後の貧乏生活をつづったエッセイのような「長いあとがき」もクスッと笑えたりしんみりしたりするエピソードばかりで面白かった。

  • 「読む」というより、文字通り「聴き入って」しまったというような感覚。
    13人分、それぞれがひとつの小説としても成立しそう。
    酸いも甘いもしみじみと、著者も含めれば14人分、すうっと入って、静かに染み込んできた。
    いい時間だった。

  • 東京のタクシードライバーになるまでの人生は、実に多種多様。平凡な人なんていない、と感じる。

  • 13人のタクシー運転手がどのようにしてその職につくことになったのかを丁寧に書き綴ったドキュメント。
    色々な人生があり自分自身の生き方を考えさせられると同時に、最終的に将来に希望を持っている運転手の方が多いことにホッとする部分もある。
    後書きが必要であったかどうかは微妙なところ。

  • 20201230
    人生に紆余曲折があり最高なドラマチック感のあるドライバーたちの話、雑色雑光というがまさにだね。私は平凡を楽しみたい。

  • 人よりちょっと堪え性がなかったり、人よりちょっと運が悪かった人がタクシー運転手となって僕らと同じ日々を生きている。

    たまたま乗るタクシーの運ちゃんにはとても複雑な事情がある。そして彼らだけでなく誰にでも事情がある。そんな当たり前のことを僕らは想像力を働かせる余裕が無くて気がつけない。

    人にちょっと優しくなれる気がした

  • 4社の乗務員数人に取材した前職での挫折と現在の努力とちょっといい話が中心。所詮は4社乗務員、あまり過激で心打たれるエピソードはない。営業もお行儀良い4社スタイルでつまらん。それより著者のあとがきの方が行間から苦労が染み出てきて感動した。


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著者プロフィール

ノンフィクション作家

「2019年 『パラアスリート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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