世界を救う7人の日本人 国際貢献の教科書 (朝日文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022618542

感想・レビュー・書評

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  • 前々から読みたいと思っていた本をやっと読むことができた。
    世界を救うとのお題であるが、人間にとって何が大事なのかを、途上国の発展への協力を通して再確認できる本である。
    まず、水の問題である。途上国の女性や子供達が水汲み労働から解放されると何が変わるのか。
    水へのアクセスが改善されれば、いままで水汲み労働に時間を奪われていた子供達も学校に通う時間が作れるし、女性もさまざまな職につく機会を得やすくなる。飲料水がたやすく手に入る社会が実現すれば、人々の命が救えるという問題が真っ先に思い浮かぶが、それより何より、教育水準の向上や女性の社会進出も促進され、経済発展に繋がるのだ。この現実というか、とっかかりでこの部分を読み、確かにそうだと自分の知らなかったことを突きつけられたため、この本を読むのに拍車がかかったのは事実だ。水の国際会議では、ジェンダーについての問題が必ず提起されるらしい。加えて、水の安定供給に対する投資は、就学率や就労率の向上のほか、農業の改善にも当然役に立つ。その波及効果は非常に大きく、アジア開発銀行の推計では、投資額の8倍ものリターンがあるという。水支援の効果を示すエピソードとして、あるイスラム圏の村で井戸の掘削事業を行ったときのこと、日本のスタッフが最初に村を訪れると、女性達は恥ずかしがって出てこなかった。イスラムの女性はつつしみ深いからだろうと思っていたのだが、井戸が整備された後にもう一度訪問すると、女性達がうれしそうにみんなの前に出てきたと言う。理由は、井戸ができるまでは水不足のため服を洗う余裕など無く、汚れたままの服で出るのが恥ずかしかったと言う。けれど、井戸が整備された結果、服が洗えるようになり、もう姿を見せても恥ずかしくないと思ったそうだ。水は生命を維持するための飲料と言うだけではなく、人としての尊厳にもかかわってくる問題なのだ。健康で文化的な最低限の生活、日本国憲法でうたわれている基本的人権の確保には水は必要不可欠だということになる。
    2つ目はスーダンで復興支援を行う話だ。欧米の機関が得意とするのは、お金を投じ、短期間で成果を出すと言うタイプの援助だ。ただ、日本は少し違ったアプローチをする。援助の仕事はとてもデリケートだ。混迷状態の他人の国に入り込んで、その国の人々が望んでもいない援助を勝手にやって自己満足だけで終わるケースは過去にあったはずだ。そうならないために、現地の人たちが自分達の展望を持ち、そのビジョンを手助けするような援助を行い、最終的には現地の人たちが自立していくようにならないといけない。そこまで現地の人たちをいざなえるかどうかが国際協力の仕事においては重要だ。
    国際協力の現場では、女性が非常に元気と言う。国際協力は、上から押し付けて命令する仕事ではなく、同じ目線で援助する側もされる側も肩を並べてやることだからかもしれない。こうした仕事のやり方は、一般的に言ってコミュニケーション能力の高い女性の方が得意だと言う。
    教育の問題でいうと、戦後の日本と途上国が違うのは、一般の人々に教育を受ける根本となる土台ができていたかということだそうだ。日本は江戸時代から庶民には”よみかきそろばん”の能力が備わっていた。江戸末期の日本は世界に冠たる識字率を誇っていた。このため、大戦で退廃しても、そのインフラさえ整えれば、その後の発展は、他の途上国とは全然違っていたのだ。多くの途上国は、留学帰りなどの一部の支配層を除くと民衆への教育機会が圧倒的に不足しており、学校と言うインフラを整えても、まずは、よみかきからはじめないといけなかった。よみかきそろばんの能力は、とても大事で基本的なことであった。
    途上国とのプロジェクトを多く行ってきた三菱商事の方は言っているが、その成否を決めるのは人、人脈の問題だと言う。まず、基本は現地の優秀な人材を取り込み、的確な情報を入手し、そして仕事を任せることだ。失敗はたいてい日本人が必要以上に自分たちだけでやろうとする場合から起こる。また、成功の秘訣は、そのプロジェクトの実現可能性調査FSをして、いかにフィージブルにするかということだそうだ。FSしてその結果がだめだから終わりではないということ。FSに頼るのではなく、このプロジェクトを実現するためにFSをし、あらゆる手を尽くしていくという。優遇税制や輸出しやすくする仕組みを作り、従業員のトレーニングをしてもらうとか、すべてにおいて、PJをフィージブルにする努力が求められる。
    国際協力の仕事は、団体ごとに縦割りになっているけれど、本来はお互いの仕事が重なり合っていないと手厚い援助は絶対に出来ない。自分の仕事に留まることなく、顰蹙を買ってでもでしゃばらないといけない。国際協力の本質はこれだ、とJICA理事長である緒方貞子さんは言う。緒方さんは言う。困っている人がいれば誰かが助けないと。越権行為といわれても、原点に戻って考えないといけない。それは自分は何のためにこの組織に入ったのかと。また、この組織は何のために設立されているのかと。迷いが生じたら原点に戻って考える。そんなことが大事だと言う。国際協力に必要なのは、自分の仕事の枠組みを超える創造性であり、時には領空侵犯するぐらいでないと人の命は救えない。

  • 発展途上国に自ら出向き、各専門的分野で活躍している7人の日本人の方々と池上彰さんの対談集。
    ・タイの水問題
    ・スーダンでの社会基盤作り
    ・アフガニスタンでの母子問題(助産婦)
    ・ウガンダでの米稲作
    ・ニジェールでの学校改革
    ・モザンビークでのアルミ製錬工場
    ・特別対談(緒方貞子)

    危険を伴う労働環境だと思うのだが、悲壮感は全くなく、使命感に溢れ、活き活きとした感じが伝わる。
    JICAを含めて、国際関係機関のサポートに基づき、想定以上に、組織的に整斉と支援が行われていることも分かった。(人的、金銭的が足りているという意味ではなく、このような国際貢献分野に入っていくハードルは然程高くない、という印象)

    ここに登場する7人の方は、その分野では有名な方なのだろうが、まだまだ社会的な認知は低いはず。もっと、このようなソフトな分野での国際活動は広く認知されても良いのではないか。

    その他、改めて認識した点は、
    ・アフリカ等の発展途上国は、欧米旧宗主国との利害関係が残る。一方、日本はより中立的な立場で関係を築くことができることから、現地における日本人の評価は高い。

    ・若い人で、この分野で活躍する女性が増えている。
    ひとつの理由として、女性の国内での就職難が挙げられていることは、何とも皮肉なことだが、一方で現場での女性が持つ調整力、包容力が評価されており、その意味でも女性が活躍できる場になっているのだろう。

    以下引用~
    『グローバル化によって、企業や市民社会が国籍を超えた存在となって世界をつないでいます。そのような中で、いままで富んでいた国だけが繁栄を誇るのはおかしいと思うのです。貿易問題ひとつをとっても、あらゆる国が他のさまざまな国の影響を大きく受けています。先進国から途上国への援助について、私たちはつい「貢献」という言葉を無意識に使ったり、一方的に施しを与えると思いがちです。でも、グローバル化の視点に立ってみると、その考えはおごりにすぎません。世界は既に相互に依存し、共存しているのです。だから「貢献」ではなくて「協力」、なんですよ』

  • 緒方さん以外は恥ずかしいですが、初見の方たちでした。日本人が国際的に活躍する幅が広がっていることを実感しました。

  • 途上国への援助は、一方的な「貢献」ではなく、双方向的な「協力」なのだと言っておきながら、タイトルが「国際貢献~」になってるの何でだろ~。それはともかく、水問題、戦後の復興支援、医療、食料、教育など、様々な分野で「国際協力」に貢献している人たちの話には、知的好奇心やら冒険心やらを刺激される。

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