関西人の正体 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022618658

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学評論随筆その他】かつての都、日本文化の中枢であった大阪・京都は、没落しきっている。しかし、没落の先進地帯である関西には、現在の日本全土の低迷期に役立つ知恵がたくさんある。ベストセラー『京都ぎらい』の著者による、知的興奮に満ちた関西論。

感想・レビュー・書評

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  • 献血ルームで出会った本。関西人という括りに対して、疑問を感じているようだ。
    関西人は“関西人”というありもしないイメージに踊らされている凋落と悲哀の内容な。

  • 内容は、
    1.関西弁の真実
    2.大阪の正体
    3.京都の正体
    4.関西全体への大誤解
    と、「関西論」を展開しているが、殆どが関西の没落を嘆く、自虐的なものであるが、その議論の展開がユニークであり、面白い。

    この本が1995年に出版されてから、25年。
    ベストセラーとなった「京都ぎらい」の素材が随所に見られるが、ただ幾つかの矛盾というか、特に京都についての著者の考え方に大きな変化がある。

    2016年の「朝日文庫版へのあとがき」の冒頭で、著者は「ひさしぶりで、自分が書いたこの本を手にとり、書き出しの第一行目に驚いた。なんと、そこにはこうしるされている。『私は京都に生まれ、京都に育った。今も京都に住んでいる』・・・」
    この後、著者は「京都ぎらい」で、自分は「京都人ではない」と、述べた事との違いを、れんめんと言い訳をし、自分の考え方の変遷を説明する。
    やはり、人間25年も経つと、意見も立場も変わるんやなあ・・・と思った次第です。

    他の面白い箇所をいくつか紹介します。
    【関西弁】
    「京都の若いお嬢さんから、こう言われた。『先生、先生は研究者なんやし、関西弁はやめはったほうが、ええと思います。値打ちを下げて、損するんと違いますか』と」
    また、著者が日頃から愛読している中野翠は、こう書くのである。「抽象度の高いことを語りあうシンポジウムなどでは、関西弁を使わないでほしい。その場の空気が乱される。卑俗な言葉で、場の気分を混乱させる手段として関西弁を使うにいたっては論外。つつしんでほしい」、と。

    【食いだおれ】
    「大阪の食い物といえば、うどん、たこ焼き、お好み焼き・・・なんとも安っぽいライン・アップである。いわゆる高級料理はひとつもない。この顔ぶれに、ホルモン焼きあたりがつけ加われば、安価イメージは決定的。安い食いものの街という大阪像は、不動のものとなる。
    さて、大阪には『食いだおれ』の街という評判がある。だが、どうだろう。うどんやたこ焼きなんかで、『食いだおれ』がはたしてできるのか・・・『食いだおれ』とは、食道楽により家の資産を使い果たすことを意味する」
    最近の関西の若い世代では「うどん、たこ焼き、お好み焼き」で「食いだおれる」と本気でそう思い出していると、著者は嘆く。

    【関西という言葉の意味】
    さらに「近畿・畿内」「関東」「関西」の意味を解読することによって、ますます著者の自虐感は熱気を帯びる。
    「民度の高い文明圏が『畿内』、そして関所の向こうにある野蛮な地域が『関東』だった。明治以前は『関西』という言葉があまり使われなかった。だが、今では『関西』という言い方がすっかり浸透した。『畿内』がすたれ、『関西』が普及している。この現状は、関西地方が文化の中心から辺境へ落ちていったことを、物語る」

    かなりどぎつい自虐感の詰まった本であり、私のように面白がってハマる人がいる一方で、癖のある議論展開に嫌気がさす人も多いと思われる本なので、良く考えてから読むように願う次第である。

    因みに「翔んで埼玉」の我が家での公用語は「関西弁」であり、標準語を喋るはずの娘は、時々怪しげな「関西弁」を喋っている。

  • 大阪に住んだことがある人であれば、共感できるエピソードが数多く登場する。あるある!とうなずきながら読むのが楽しかったです。

  • 大阪、京都に住んだ事があるので思いっきりうなずきながら読んだ。特に京都人が上京区、中京区以外は京都と認めないのは今でもある。それにしてもこの井上さんの気になるとこをとことん掘り下げる面白さ。京都を天皇に捨てられた古女房に例え女言葉で心情を語るのには笑ってしまいました(東京は若い愛人)。あと、皇室京都回帰を推していたワ○ールの元会長の話から女性皇室の下着にまで発展。これも笑えた~。京都井上さんのユニークさは思いっきり私好み。他の本も読んでみたい。

  • 「京都ぎらい」の20年以上前に書かれた本。
    エッセイ集のようなものなので、
    20年という時間は長く、違和感を覚える点もしばしば。

    著者自身も言及しているが、
    屈折した邪推が多い、という印象。
    諸行無常(関西の没落)を受け入れて楽しもう、
    というスタンスは共感する。

  • 前に読んだ「京都ぎらい」で有名な著者、井上章一さんの93年〜
    95年頃までに連載してたコラムをまとめた本でした。
    なので内容は若干少し前の関西についてのことなのでちょっと「京都ぎらい」に比べればズレてるところがあったかも…。
    「くいだおれ」の意味を僕は誤解してました。
    それくらいですかね。発見は。
    まぁこれ読むなら京都ぎらい読んだ方が面白いと思います。
    事実3割思い込み7割で作られた本かな。
    実際著者は京都出身なのでそういう意味でも「京都ぎらい」のほうが面白いんかも。

  • 京都ぎらい、京女の嘘の後に読んだ。20年以上前に書かれたものだ。あとがきが3つある。

  • 建築史を専攻する著者の、1993年~1995年にかけて雑誌に連載されたエッセー。大阪や京都に関するステレオタイプなイメージや偏見を、向きになって否定する、著者の屈折した情念を感じる。最近「京都ぎらい」という本を出したそうだが、どんな本か想像できるなぁ。

  • 疲れて最後まで読めない

  • 京都旅行中にアバンティの本屋で平積みになっていたところを購入。
    奥付に2016年7月初刷となっていたが、ダイナマイト関西とか関西国際空港とか宝ヶ池プリンスホテルとか吉野ケ里遺跡が大変評判を呼んでいるとか、話題がどうも古い。と思ったら、あとがきに1993年〜1995年の連載をまとめたもの、とある。がっかり。

    帯には「抱腹絶倒の関西論!」とあったので気分転換にと思って買ったが、残念ながら自虐的関西論を読んでても愉快な気持ちにはなれなかった。

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著者プロフィール

建築史家、風俗史研究者。国際日本文化研究センター所長。1955年、京都市生まれ。京都大学工学部建築学科卒業、同大学院修士課程修了。『つくられた桂離宮神話』でサントリー学芸賞、『南蛮幻想』で芸術選奨文部大臣賞、『京都ぎらい』で新書大賞2016を受賞。著書に『霊柩車の誕生』『美人論』『日本人とキリスト教』『阪神タイガースの正体』『パンツが見える。』『日本の醜さについて』『大阪的』『プロレスまみれ』『ふんどしニッポン』など多数。

「2023年 『海の向こうでニッポンは』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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