フランクル『夜と霧』への旅 (朝日文庫)

著者 : 河原理子
  • 朝日新聞出版 (2017年4月7日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022618986

作品紹介

【文学/日本文学評論随筆その他】強制収容所の体験の記録『夜と霧』をはじめ、精神科医フランクルの著作が、日本中で静かに読み継がれている。苦しみを抱えながらフランクルの言葉を生きる支えにする人々と、フランクル自身の人生をたどり、その思想の深奥を追う。《解説・後藤正治》

フランクル『夜と霧』への旅 (朝日文庫)の感想・レビュー・書評

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  • フランクルの『夜と霧』を関係する人の言葉等を交えながら深めていく。

     解説本というと厳密に違うが、本に関わる様々な人にふれることで解説と同じような働きになっている。それも『夜と霧』が人生そのものにふれる特殊性ゆえか。
     フランクルが国家や個人の罪という考えをしなかったことで、ドイツでは否定的にとらえている人も多いというのは知らなかった。

  • ・心療内科医・永田勝太郎は筋肉が萎縮して力が抜けていく病気で寝たきりになった。「もう一生、歩けないし、車イスも無理でしょう」と医者に見放された。2年のブランクを経て多くのものを失ったが、患者の気持ちは前よりわかるようになった。「先生、私、死ぬんですか?」と聞かれたとき、前は答えられなかった。でも今はこう言う。「いいか、これは医者として言うんじゃない。人間として言うんだよ。僕は三途の川まで行って帰ってきた。だから今、生きていることが楽しくて仕方ない。あんただって、今、生きているじゃないか」。三途の川から帰ってきて、永田は優しくなった。

    ・人間の本質は「苦悩する人」。創造的な活動の機会が奪われた強制収容所で、人は苦悩を引き受けることによって人であり得た。苦悩や死は人生を無意味にするのではなく、苦悩と死こそが人生を意味あるものにするのだ。あえて苦悩せよ。この敢然さ、この苦悩への勇気こそが重要。苦悩を引き受けること、運命を肯定すること、運命に対して態度をとることが大切。それはこの道を歩んでこそできることであって、苦悩を恐れ苦悩から逃げる道をとってはできないこと。

    ・人間が人生の意味は何かと問う前に、人生のほうが人間に問いを発してきている。だから人間は、ほんとうは、生きる意味を求める必要なんかないのである。人間は人生から問われている存在である。人間は、生きる意味を求めて問いを発するのではなく、人生からの問いに答えなくてはならない。

    ・人は人生がその人に問いかけてくる問いに応答しようとし、それに応答することによって、人生が差し出してくれる意味を満たしているのではないだろうか。

    ・人間の精神は、たとえばユーモアをもって自分と距離をとること(自己距離化)ができる。自分の内面ばかり見つめるのをやめて、外側へ、未来へ、目を向けて、誰かのため何かのために、人間は自分の制約を超えること(自己超越)ができるのだ。

    ・私は不幸な出来事には遭いましたが、私自身は不幸な人間ではありません。事故後のただ一つの大きな成長は、小さな幸せを見つけるのがうまくなったことでしょうか。小さな幸せをたくさん感じています。

    ・実際には、人生は二度ない。それでも、一度目は簡単な方を選んだり、長いものに巻かれたり、決断できなかったとしても、二度目だったら?二度目がもしあっても、おそらく私は、はしたないことをしでかし、行動すべきときに行動できず、「そんなつもりじゃなかった」と言いながら人を傷つけるだろう。それでもこの問いにほんの時たまでも、立ち戻ることができるなら、少しは自分から解き放たれて、少しは意味を感じて生涯を終えることができるのではないか。それをいつ、どのような形で迎えるとしても。

    ・フランクルは安易な処方箋は何も提示していない。人生の意味は自身が見出す他にない。多くを失い、奪われ、途方にくれる。人生にはさまざまな局面が訪れる。「それでも」「にもかかわらず」「それでもなお」これらのキーワードはフランクルの思想である。

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