中年危機 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
2.71
  • (0)
  • (1)
  • (3)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 44
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022620279

作品紹介・あらすじ

最も意気盛んな安定期に見えて、中年ほど心の危機をはらんだ季節はない――。心理療法の大家が、夏目漱石、大江健三郎、佐藤愛子、山田太一などの日本文学の名作12編を読み解き、中年の心の深層をさぐる。本書に登場する小説の登場人物たちは、職場での自らの立ち位置、配偶者の浮気、子どもの教育、老いへの不安など、ありふれているようで本人にとっては重大いな問題に直面し、戸惑い、やがて人生の大切な転換点を体験する。読者にその問題が降りかかってきたとき、どう立ち向かえばよいか。著者ならではの「中年論」。目次はじめに1人生の四季 夏目漱石『門』2四十の惑い 山田太一『異人たちとの夏』3入り口に立つ 広津和郎『神経病時代』4心の傷を癒す 大江健三郎『人生の親戚』5砂の眼 安倍公房『砂の女』6エロスの行方 円地文子『妖』7男性のエロス 中村真一郎『恋の泉』8二つの太陽 佐藤愛子『凪の光景』9母なる遊女 谷崎潤一郎『蘆刈』10 ワイルドネス 本間洋平『家族ゲーム』11夫婦の転生 志賀直哉『転生』12自己実現の王道 夏目漱石『道草』あとがき

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 臨床心理学者の河合隼雄さんが日本の小説で描かれる中年の危機を読み解く。

    選ばれた作品で描かれる「危機」は基本的に男女の関係、または夫婦・家族の関係が中心で、主に男性視点である。死への不安、孤独との闘い、という内容を期待していた自分にとっては正直ピンとくる話はあまりなかったが、河合隼雄の読書録だと割り切って読んだ。

    紹介された小説の中で印象に残ったのは、山田太一「異人たちとの夏」と阿部公房「砂の女」。
    「異人たちとの夏」は中年の孤独や死、若くに死んだ父母への思いが描かれている。学生時代に読んだときは不思議な世界観だと思ったが、今なら大きな共感を持って読めるのではないかという気がした。

    「砂の女」を最初に読んだときは、逃れられない砂地獄の生活がとにかく恐ろしく、ホラー小説の感覚で読んだ記憶があるが、今読むと、主人公の生き方をむしろ前向きだと感じられるのかもしれないという気がする。

    この本自体は思っていた内容と違ったが、昔読んだ本を読み直す気持ちにさせてくれたのはよかった。

  • タイトルは「中年クライシス」のままでよかった気もするが、もともと文庫で出ていたはずなのに読んでいなかった。改題されて、新しく発行。そのことで、こうしてつられて読む人間もいるのだから、まあ版元の思惑は成功しているということか。やはり河合先生はおもしろい。中年という切り口がまたおもしろい。森毅先生が言うところの第7,8ステージ(6×6=36歳を越えて、8×8=64歳くらいまで)にあたるのか。結婚して、子育てをして、ひと段落すんだと思ったら問題勃発。親の死(これは本書では取り上げられていない)、自分またはつれあいの病気、子どもの問題行動、転勤、転職、不倫、離婚などなど。子どもに問題があって心療内科などを訪れると、実は家族の抱えた問題をその子が一身に引き受けて行動としてあらわしていたということがある。我が家ではどうだったか。これからまだ問題が起こるのか。「困難を避けて親が仕事を怠っていると、子どもはいろいろ問題を起こし、親に警告を与えてくれるように思われる。」(第10章 章末)「家族ゲーム」は映画をもう1回観てみようかな。本書では12冊の小説を読みときながら中年期の問題が取り上げられている。もとの小説は読まなくてもいいかな、というくらい中身が語られている(養老先生も巻末エッセイでそのことにふれている)。まあ、本の紹介をしているわけではないのでそれはよしとしよう。「トポスを見いだし、そのトポスとの関連で『私』を定位できるとき、その人の独自性は強固なものとなる。そのようなことができてこそ、人間は一回限りの人生を安心して終えることができるのではなかろうか。老いや死を迎える前の中年の仕事として、このことがあると思われる。」(巻末エッセイから)そんなトポスはまだ見つけられていないから、私はまだ中年の域には達していないということなのか。

  • 本の帯の紹介に惹かれて読み始めたが、心理療法家が有名作家が書いた小説を解説?したものですね。読み切ったが小難しくほとんど興味を持てなかったというが正直な印象。ただ谷崎潤一郎の小説と本間洋平の「家族ゲーム」は面白そうと思った。

  •  河合隼雄はいつもしっくり来ないけど、何か感じるものはあるんだよな。取り上げられた12作品のうちいくつかを読んでみようと思う。

  • 本書を読んで、原書に触れる機会をと考えていましたが、先に原書を読んどけばと思う箇所が何箇所かありました。

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。メーカー勤務を経て、現在フリーランスの翻訳者。

「2020年 『パリジャンが教える ヒゲの教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

河合隼雄の作品

ツイートする
×