選書906 剣術修行の旅日記 (朝日選書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022630063

作品紹介・あらすじ

【歴史/日本歴史】佐賀藩士で二刀流の達人、牟田文之助は1853年から2年間、剣術修行の旅に出て「諸国廻歴日録」という日記を残した。秋田から江戸、九州の道場を訪ね歩いた記録から、時代小説とは全く異なる剣術修行の実態や旅の様子がわかる。

感想・レビュー・書評

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  • 時代小説や時代劇で時折見かける悲愴な雰囲気の「他流試合」の実態は?
    2年かけて諸国武者修行をした筆まめな江戸時代末の武士による旅日記の解説書。

    江戸時代に剣術がスポーツ化していく様子や、当時の武士の教養の種類とその修め方について、豊富な図版とともに丁寧に解説されている。

    また、案外藩を出て、諸国を巡り修養を積む武士が多かったのも意外な感じだった。
    となると、いわゆる幕末にドラマとかでよく劇的に扱われる「脱藩」って・・??

    修行を終えて藩に帰った頃、京都では禁門の変がありその後激動の時代へと突入していくため、剣術師範の道が閉ざされたようで彼の晩年の動静はよくわかっていないようである。

  • 元ネタになるのは、幕末の佐賀藩士牟田文之助高惇が自身の修行の記録として作成した『諸国廻歴日録』という、いわゆる「英名録」と呼ばれる史料である。
    著者は作家であるが、これまでの武道史を多く参照した形跡があり、その意味で非常に好感が持てた。つまり、武道研究領域の学者たちがこの史料に対して手を付けないために、作家の側から研究者が行う手続きを取り、幕末の武術動向を描き出したといえる。
    元ネタに関しては、武道研究者である故・渡辺一郎がすでに1970年代に重要な史料として挙げていたが、それでも武道研究者たちはこれに取り組まなかった。このような研究が、研究者の側から出ていないこと自体が問題であり、非常に残念である。
    しかし、どちらにしても、この作品で描き出された幕末の武術状況は魅力的であり、今後研究が進むことが期待される。

  • 読了。鍋島家家中、鉄人流牟田文之介の2年間の武者修行日記。自分も剣道、居合をやってるので自分も修行に同行しているような面白さでした。修行の悲壮感は無く。スポーツ選手の合宿、遠征試合のような感じです。幕末当時のリアルな生活を覗けます。リアル幕末青春物です。

  • 解説を交えながら、江戸後期の剣術修行の様子を語るのがとてもおもしろい。
    諸国を廻って修行というと「たのもー」と入り口で叫ぶ印象だったが、全然違った。
    修行人宿を通じて道場に申し込み、審判も置かない練習形式で、勝敗も決めない、遺恨を残さない形式。
    牟田文之助が、二年かけて全国を修行して廻る。
    人柄と二刀流で、各地で歓待される。
    コラムで、剣術がいかに剣道に進化したのかもわかって良かった。

  • 小説やテレビなどで知っている話では、剣術修行者が他流試合をしたり、道場破りをして怨みを買ったりして闇討ちされたり、というが、それは現実ではなかったのだ。実際の剣術修行の日々は他藩の武士と和気藹々に談笑し酒宴をし、地稽古をするというものであった。勝負を決めるものではないため他流試合が終わればお互いが酒を飲んで談笑することが多かった。諸国遍歴では、修行人宿がそれぞれの藩であり、藩の費用で宿泊でき、そこから道場に地稽古を申し込むシステムができあがっていたのだ。この諸国廻歴日録には各藩の修行者と交流する様が綴られている。

  • こういう本、もっと読みたい
    昔の人は毎日何をして、どんなことを考えていたのか
    江戸時代の生活とか、知りたい

  • 宮本武蔵由来の二刀流の遣い手である佐賀藩の若侍が、幕末の2年間に亘り諸国を巡り歩き武者修行をした手記に基く。
    武者修行とは実は他流派道場での連合稽古であったとか、各地の道場で知り合った侍連中と和気藹々と酒ばかり飲んでいるとか、侍階級であっても江戸期後半を除き文武教育は各家族に任されたいたとか、黒船は既に到来しているもののまだ幕末の緊迫感とは無縁の伸びやかな空気であったりとか、当時の旅の実態であったりとかが実感できて非常におもしろい。

  • エクセレント!今まで読んだ本の中でトップ10に入る。

  • 佐賀藩士、牟田文之助の武者修行の旅2年間の記録。文之助の魅力もあるだろうが、試合と言っても合同練習の様なもので、毎晩楽しく宴会もあり、何とも愉快な武者修行である。そしてこうして出来た修行人たちの友情が続く明治維新を支えたのかもしれないとの指摘、なるほどと思った。

  • 江戸後期の武者修行の様子がよくわかった。現代もこのように色々な流派が交流をすれば面白いと思う。

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著者プロフィール

1949年生まれ、97年に『算学奇人伝』で第六回開高健賞を受賞。本格的な作家活動に入る。江戸時代の庶民の生活や文化、春画や吉原、はては剣術まで豊富な歴史知識と独自の着想で人気を博し、時代小説にかぎらず、さまざまな分野で活躍中。シリーズ化した『秘剣の名医』がヒット中。『幕末一撃必殺隊』が『いちげき』(漫画・松本次郎)としてコミック化し、2023年1月NHK時代劇としてドラマ化された。

「2023年 『ご隠居同心』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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