- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022630193
作品紹介・あらすじ
【文学/文学総記】日本文学の最高傑作『源氏物語』。現代の読者が、少しでも平安社会の意識と記憶を知り、その空気に身を浸しながら読めば、物語をもっとリアルに感じることができるのではないか。本書は、平安人の世界を様々な角度からとらえ、読者を誘うことを目指した一冊。
平安人の心で「源氏物語」を読む (朝日選書)の感想・レビュー・書評
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この本を読んでいると、紫式部のような微妙な立ち位置じゃないと、「源氏物語」はかけないなあと納得です。
王朝のきらびやかな人たちだけにスポットを当ててるわけじゃなくって、光源氏がその気になったときだけちょっかいをかけてる女房(愛人にも数えられない「召人」)にも、ちゃんと和歌を詠む機会とか、心情描写を与えていたりだとか、零落した姫君の末摘花の不器用だけど実直な愛とか。偉い博士が作法をセレブたちにクスクス笑われて「なんと無礼な!」とかいってぷんぷん怒る姿とか。
すごく人間観察が効いていて、目に浮かんでくるんですよね。
恋愛もの的イメージが強い「源氏物語」ですが、実は恋愛だけじゃない。人間模様が細かくて生き生きしている。
「源氏物語」とあるけれど、この本一冊で平安王朝時代の雑学を幅広く知ることができます。
もちろん、「源氏物語」をよりよく、深く知るための雑学なのですが、わかりにくい当時の人の感覚も、「なるほど」と納得できました。
「平安人の心で」とある通り、平安時代当時の感覚を少しでも想像できるようにと、当時の風習や、時代背景、紫式部の出自と心情表現、和歌に根差した題名の解説などなど、大ボリュームの内容。
加えて、この本、最後の記事に「紫式部が源氏物語を書いた原点」として、中宮定子の話が出てきているのです。
今、図らずも、同じ山本淳子さんの「枕草子のたくらみ」を同時並行的に読んでいるので、いろいろと感慨深い。
もしかしたら、「私が源氏物語を書いたわけ」という同じ山本さんの本でこのあたりが深く掘り下げられるのだろうか?
図書館で借りたけれど、これは買わないともったいない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本書は「週刊 絵巻で楽しむ源氏物語五十四帖」というビジュアルシリーズに連載されたエッセイがもとになっているそうで、一般向けの読みやすいものだ。最初のあたりは、以前出た著者の「源氏物語の時代」と比べるとやや浅い感じがして、読者サービスのような軽い書き方に少し違和感があった。章のタイトルが「恋の”燃え度”を確かめ合う、後朝の文」とか「祖先はセレブだった紫式部」とかだったり…。それでもやっぱり、専門の研究者による源氏のお話はさすがに面白く、内容も章が進むにつれどんどん深みを増して、結局は大満足のうちに読み終えた。
「源氏物語」は(今更言うまでもないけれど)たいそう魅力的な物語なので、時代により人により、いろいろな読み方をされるのは当然だと思うが、私はどうも現代人のものの考え方に引きつけて源氏を読んだものが苦手である。中にはいたって無自覚に、源氏の登場人物が今の私たちと同じような考え方、感じ方をするものとして書かれているものもあったりして、それは違うでしょ!と思ってしまう。
近代以前、どころか千年も昔の王朝人の感覚など、そう簡単に想像できるものではないだろうが、この物語が、どういう社会常識や生活文化の中で書かれたのか、作者がどんな思いをそこに込め、当時の人々がどのように読んだのか、少しでも知りたいと思う。だから、本書のような研究者による一般向けの本は本当にありがたい。疑問に思っていたことがすっきりしたり、間違った受け取り方をしていたことがわかったり、思いもかけなかった視点が提示されたり、いやまったく充実した読書だった。
なるほど!と思った点を箇条書きで挙げると
・「源氏物語」というタイトルは、主人公が身分社会の敗者であることを示している。
・巻名はいつ誰が付けたのか。
・作者はいつから「紫式部」と呼ばれるようになったか。
・物語はサブカル。文芸の中でも格下のジャンルだった。
・今私たちが読んでいる「源氏物語」は、研究者の並々ならぬ苦闘の成果である。
・源氏には語り手がある。
・薫は決して「草食男子」ではない。
・平安京で火災が多発したのはなぜか。
・外戚という方法での権力掌握は、考えてみればまことに迂遠な方法で、実に平和的。
などなど。源氏好きな人は楽しめること請け合い。
圧巻は、終盤で提示される源氏物語のとらえ方だ。著者は、一条天皇の中宮定子こそが「源氏物語」の原点であり、主題であった、と考える。同時代に目の当たりにした中宮定子の悲劇的な人生、その理不尽さに深く思いをいたし、虚構世界の中でその投げかけた問いに答えようとしたのが「源氏物語」なのだと。これは著者の持論であり、長く主張していきたいと書かれているだけあって、筆致に迫力があった。
「人とは何か。それは、時代や運命や世間という『世』に縛られた『身』である。身は決して心のままにならない」「筆を執り物語を書き始めたとき、紫式部が生み出した登場人物たちは、誰もがすべて『世』を生きる『身』であった。人として『世』に阻まれる『身』、それを各々がどのような『心』で生きるか。それを描くことに挑んだ『源氏物語』は、日本の文学史上初めてのリアリズム小説となった」 -
図書館で。面白かったけど読み終わるのに時間がかかりました。
源氏物語は小説(現代語訳)や漫画で何度か読んだ事はあるのですが細かい所忘れているなぁ…という感じ。一帖づつ説明され、その時代背景や事象を丁寧に解説してくれるのでとても楽しく読みました。そしてこの作品が書かれた時代背景を知るというのは作中人物の行動や心境がより身近に感じられてすごく良いテキストだなぁと思いました。今の感覚で光源氏は~だの、藤壺の女御は…とか判断するのは怖いことだな、とも思いました。
とは言えそんな昔の人達も今の人と同じように権力を手に入れようと足掻いたり、権力者に怯えたり、愛しあったり憎みあったりと…人というものは昔も今も変わらないものだなぁと思う所も多々あり面白いと思うわけです。
正直、源氏物語は今の高校生が読んでも面白さはわからないだろうな、と思う。反対に変に潔癖な時代だから光源氏なんてフケツよ!とか反感買って終わりそうな気がしなくもない。わからなくもないけど、ウン。個人的にはもう少し大人になってから読んだ方が良い作品だとは思うけど本読まない人は学生時代に強制的に読まされないと大人になったら本なんて手に取るのもイヤって人多いからなぁ… まあその辺り難しい所ですな。
それにしても紫式部の時代、物語はサブカルチャーだったってのは面白かったです。 -
平安人の視点で源氏物語を読めるように,その背景となる平安時代の貴族社会を紹介した本.
源氏物語の五十四帖(長い部分は2節にわけてある)のそれぞれに対し,1ページの要約と3ページの解説というスタイルですすむ.要約は本文から読み取れるよりも,思い切って踏み込んだものになっている.解説の部分が秀逸.かならずしもその巻に密着したものではなくて,平安時代の政治や社会の常識から,紫式部が源氏物語を書いた背景,貴族の生活など,まさに平安人が源氏物語を読んだときに常識としてもっていたことがいろいろ紹介されている.源氏物語を読む上でよい伴侶だと思う. -
源氏物語の各巻の要約と、その内容に関する背景の解説が続いていく構成で、源氏物語と交互に読んでいくのに非常に親切。内容に関する背景の解説は、内容にあまり関しないときもあるけれども。源氏物語自体は長すぎて途中で断念してしまい、これを読んで源氏物語を読んだ気になることにしました。
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「源氏物語」の背景を知ることができ、ますます「源氏物語」への興味が広がる。いろいろな角度から「源氏物語」を知っていきたいと思う。
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読み応えあり。
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紫式部の時代について詳しく考証し、源氏物語が当時の人たちにとってどんな意味があったのかを、各巻毎に詳しく解いているので、物語の内容を復唱しつつ、意味を考えていくことが出来るという嬉しい構成。第17帖「絵合」は当時のサブカルだった物語(小説)が登場人物により多く語られるという堪らなく魅力的だったという!逢瀬の場面では濡れ場に差し掛かると、登場人物を肩書きなしで単に「男」「女」と呼び始めるとの説明がある。実にリアルで当時の人は目に浮かんだ!?。最後に著者はこの作品が読者に醍醐天皇の時代を思い出させるという策を講じつつ、一条天皇が愛し続けた中宮定子へのトルソーとして書かれていると主張する。桐壺更衣も浮舟も当時の人は定子を思い出させたという。これは少し無理があるとは私は思うが・・・。
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同時代人なら、源氏物語を読んで、どんな現実の事例を思い起こしたか、ということを主題にした本。
『週刊絵巻で楽しむ源氏物語』で連載されたコラムが元なのだそうだ。
あらすじはあるものの、例えば、若紫の巻の記事では、「源」氏とはどのような位置づけの一族かという解説がくる。
若紫(紫の上)のことは一言も触れられていない!
源氏物語の筋も全く知らない、という人にとっては、びっくりするかも?
ただ、私にはこの解説、面白く読めた。
桐壺の更衣と桐壺帝のモデルは定子中宮と一条帝だという著者の持論も。
(さすがに浮舟にも定子を重ねられるというところでは、どうなのかと思ったけれど) -
この方の書いた本が好きで、某ネット書店で新刊案内が来たので即予約。お高い本でしたが…
とある「週刊○○」みたいなシリーズものの週刊雑誌に連載されてたものをまとめた本だそうです。
54帖の各巻をそれぞれ1章として、最初にその巻のあらすじ、それから「源氏物語こぼれ話」的な話題が続いています。
この方の本を読んでいるわたしには、既出な話もあったけど、楽しく読めました。
この物語が書かれて1000年、現代のわたしたちの感覚とはどんどん離れていく一方になってしまうから、これからの研究者はいかに源氏を読んで行くかを一般の人に伝えていくかも大切な使命、と語っていた筆者さんの思いのつまった本だと思います。
源氏物語について、もう少し知りたいなと思う方にはおすすめ。
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