戦火のサラエボ100年史 「民族浄化」 もう一つの真実 (朝日選書)

著者 : 梅原季哉
  • 朝日新聞出版 (2015年8月10日発売)
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  • レビュー :4
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022630360

作品紹介・あらすじ

1914年6月28日、オーストリア・ハンガリー帝国の皇位継承者フランツ・フェルディナント大公がサラエボ外遊中、セルビア人青年に暗殺された。第一次世界大戦の引金となったこのサラエボ事件をめぐり、100年後の今なお、暗殺者は「祖国解放の英雄」か「テロリスト」か、歴史観の対立が続く。サラエボは、元々、ボシュニャク(モスレム)人、セルビア人、クロアチア人の主要3民族が共存する多様性に富む土地だったが、民族対立をあおり利用する政治家たちによって、92〜95年、「ボスニア内戦」を余儀なくされた。当時、欧米メディアがさかんに使った「民族浄化」の言葉が広まり、99年コソボ紛争ではNATOのユーゴ空爆があった。しかしあれは本当に民族紛争だったのか?民族主義と歴史認識の相克を、サラエボで100年続く家族への聞き取りと証言でたどる本格ノンフィクション。

戦火のサラエボ100年史 「民族浄化」 もう一つの真実 (朝日選書)の感想・レビュー・書評

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  • 宗教にも民族にもこだわらず、人々は共存していた。それが、民族の
    出自を根拠に憎み合い、殺し合う事態に発展した。

    サラエボ。思い出すのは冬季オリンピック。そして、平和の祭典の対極
    に位置する内戦だ。

    ボスニア内戦については当初、事情がよく分からなかった。気が付いたら
    NATO軍によって空爆されていた。欧米寄りの視点が主体になっている
    日本の報道からも「セルビア人が悪い」との印象を受けた。

    だが、本当にセルビア人だけが悪いのだろうか。本書は代々サラエボに
    住むセルビア人、クロアチア人、モスレム人の各民族の取材協力者を
    探し出し、それぞれの家族史からセルビア内戦を描いたノンフィクションだ。

    ボスニア内戦では確かにセルビア人側が多くの他民族を殺害したことに
    変わりはない。だが、そこへ至るまでのユーゴスラビアの歴史の中では
    第二次世界大戦時にナチス・ドイツに協力して国内少数派であるユダヤ
    人の迫害に手を貸した民族もいた。

    セルビア人にすべてを負わす。それはもしかしたら、第一次世界大戦の
    原因ともなったセルビア人青年によるオーストリア・ハンガリー帝国の
    皇太子夫妻暗殺事件に根があるのではないだろうか。

    第二次世界大戦後、チトーが国のトップに立ち共産主義を掲げながらも
    ソ連に追従することをしなかった時代が、一番平穏だったのかなぁ。

    チトーの死後、権力の座についたミロシェビッチが民族意識を煽ること
    が自分に有利に働くことに気付いたことがボスニアの不運だったの
    かもしれない。不運なんて言葉で済ませられるはずもない、壮絶な
    内戦だったが。

    「昔はこの街では、誰も『お前はなに人か』なんて聞かなかったもので
    すよ。大切なのか、その人がどんな人かなんだから」

    サラエボに暮らすユダヤ人女性の言葉だ。そうなのだ。どんな宗教を
    信じているか、どの民族の出自なのか。そんなことは二の次なのだ。
    だって、ボスニア内戦で殺戮を繰り広げた3民族は元々は同じ南スラブ
    人なのだから。

    ただ、ローマンカトリック、東方正教会、イスラム。どの宗教に属している
    かの違いしかないのだから。だって、チトーの元ではお互いに協力して
    サラエボオリンピックを成功させているのだから。

    解体されたユーゴスラビアとセルビア内戦の概要を追う入門書として
    はいいのだが、最終章の一部ででサラエボの歴史と日本を比べている
    ところは余計だったのじゃないかと思う。

    尚、セルビア内戦時はイメージの戦争でもあったのだがこのテーマに
    ついては高木徹『戦争広告代理店』が秀逸な作品である。

    また、セルビア軍に包囲されたスレブレニツァでの「国境なき医師団」
    及び医療従事者たちの奮闘を描いたシェリ・フィンク『手術の前に死んで
    くれたら』もセルビア内戦関連の優れたノンフィクションである。

  • 数か月前から書店で気にしていた書ですが、ついに購入して一読。
    多民族国家ユーゴスラビアの100年史の解説と共に、著者が取材したサラエボで暮らしていた主要な民族のエピソード・想いを綴っております。
    島国・ほぼ単一民族で構成されている日本ですが、サラエボを首都とするボスニア・ヘルツェゴビナには、主要3民族であるボシュニャク人・セルビア人・クロアチア人以外にもユダヤ人など多数の民族が共存した国家であり、これら民族の利害が絡んだ内戦となり、停戦まで長期間を要した様が、生々しく理解できました。
    米国主導で今の国家形態となりましたが、構造的にはボシュニャク&クロアチア連合とセルビアで実質的に国家が分断されていることや、ユダヤ・ロマ人などに政治的な権利がないことなども、この書で知りました。
    どこでも同じですが、一旦喧嘩した後に全てを水に流すことの難しさを感じます。
    最後に、無理繰り日本人への自虐史観的な論が入っていましたので、満点を外しましたが、それ以外の部分は非常に素晴らしい内容だったと思います。良書でした。

  • 2016/07/06

  • 239.34||Um

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