ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力 (朝日選書)

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022630582

感想・レビュー・書評

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  • 自己啓発?
    かかった時間60分くらい。ただしナナメ読み。

    わからないことをわからないまま保留するチカラを、ネガティブ・ケイパビリティという。本書はそのネガティブ・ケイパビリティについて、詩人のキースやシェイクスピア、紫式部、または精神科の臨床例等々から、必要性を主張している。

    どちらかといえば、新しいことを知るための本というよりは、ネガティブ・ケイパビリティ(この言葉は使っていないにしろ)の重要性を知っている読者に再確認させる意図の方が強い本だと思った。いわゆるファン向けの本かと。

    前述の、キースやシェイクスピア、紫式部等々について、それぞれまあまあ詳細な説明がしてあって、薄め広めの雑学本みたいな感じもある。

    それでも、筆者のいう、この、ネガティブ・ケイパビリティは今の世の中ではより大切だよなあと思う。

  •  負の能力もしくは陰性能力。「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に堪える能力」である、Negative Capabilityについて語った本。

     昨今、というか、もう高度経済成長の頃から、なんなら産業革命以降の趨勢であろう「マニュアル化」に一石投じるかのような内容で、非常に示唆に富んで面白い考え方だ。
     詩人のキーツが兄弟に宛てた手紙の中でその考え方を示し、後の世に精神科医のビオンが見いだし、著者は論文で目にして注目してきたという概念。本書の前半は、キーツの生い立ち、ビオンの半生を紹介するので、なかなか本題というか、この能力の効用について語られないのでイライラする。 が! それこそ早急に回答を求めてしまう近代教育の悪弊、現代病なのかもしれないところだ。
     それをこの読書体験からも分からせようとする著者の深慮遠謀だとしたら見事なものだ(多分そりゃ違うとは思うが)。

     こうしてこの能力が発想され、発見に至り、世に膾炙された一連の経緯のあと語られるネガティブ・ケイパビリティであるが、今は、そんな悠長な考え方は認められにくい世の中だ。究極の対局が、なんでも分かったものとして片付けようとするマニュアル。
     
    ”マニュアルがあれば、その場に展開する事象は「分かった」ものとして片づけられ、対処法も定まります。ヒトの脳が悩まなくてもすむように、マニュアルは考案されていると言えます。”

     人は、こうして考えることをしなくなると警鐘。現代の教育がそもそも、如何に早く正確に”解”を吐き出すかを目的としているため、「不確かさの中で事態や状況を持ちこたえ、不思議さや疑いの中にいる能力」なんてもっての外ということだ。しかし、そうした、不確かさの中に身を置くことで、モノゴトの本質に深く迫ることができる。それをやってきた個々の偉人がシェイクスピアであり、紫式部だったと説く。人間の本性を赤裸々に描いた洋の東西の文学界の巨人はネガティブ・ケイパビリティの体現者でもあったということだ。
     この能力の効用として対人間の場合、
    「相手を本当に思いやる共感に至る手立」と、本書は説く。 
     相手を思いやる、自分ファーストじゃないんだよとなと、ふとあの人のことを思いながら読んでいると、ドイツのメルケル首相との対比で、トランプ氏のことも取り上げてあり、やっぱり、そこ、言いたくなるよな、とほくそ笑んだ。

     斯様に、このネガティブ・ケイパビリティは、国際社会の問題でも、文学の創造性においても、教育問題や、もっと身近な対人関係でも重要で大切な能力だと、現代のあらゆる風潮に対するアンチテーゼとして提示している。
     著者の本業である精神科医としての臨床の例だけでなく、作家としてシェイクスピアの発想、池波正太郎と編集者との会話、黒井千次の書評委員会でのエピソード、フランスの作家モーリス・ブランショ(1907-2003)の言葉などを引用した喩えも示唆に富んでいる。

    ー La reponse est le malheur de question. (答えは質問の不幸である)

     なかなかいい言葉だ。
     とはいえ、謎を謎のまま置いておかない性分は、これはひとえに現代教育の賜物ではなく、記憶と理解を通じ、こうありたいという欲望をかきたてる、他ならぬヒトという種族の脳の成せる業。こうしてホモ・サピエンスは地球上の覇者となり得たので、その方向や勢いにいまさらブレーキを掛けることは非常に難しいはずだ。
     ただ、そろそろ、立ち止まって考えることも必要なのかもしれない。そんなことを思わせてくれる面白い一冊だった。

  • ある機関紙で紹介されていたので、買ってみた。「ネガティブ・ケイパビリティ」の能力を強くして、もっと生きやすくなりたいという思いから。
    読み始めは興味深くページを進めたが、6章あたりからペースが落ちて来て、9章(教育)は再び共感しながら読んだが、10章は飛ばし読みしてしまった。飛ばし読みをすることはあまりないのだけれど…
    意義深い主題だが、読みながら構成上ついていきにくいところが時々あり、1冊の本としての完成度は高くないと感じてしまった。(編集の問題か…)

    詩人キーツが兄弟宛ての手紙の中で、シェイクスピアは「ネガティブ・ケイパビリティ」を有していたと書いていたことを、後に精神科医ビオンが見つけ、精神分析の分野でも「ネガティブ・ケイパビリティ」の重要性を説いた背景があるそうだ。「ネガティブ・ケイパビリティ」という概念の誕生秘話についてはもっと短く紹介して、5章くらいのボリュームでまとめたほうがすっきりするのではないか。キーツやシェイクスピアから始まった「ネガティブ・ケイパビリティ」という定義に縛られ過ぎている気がする。「答えの出ない事態に耐える力」だけでは、ありきたり過ぎるのだろうか…
     
    「答えの出ない事態に耐える力」は、シェイクスピアや紫式部、ユルスナールなどの大作家だけでなく、芸術活動を続けているほとんどの人が、多少の違いはあっても有している能力だと思う。また、「答えの出ない事態」は、研究者、事業家、サラリーマン、闘病者、介護者など、あらゆる立場の人々が日常的に直面している問題だ。なので、大作家の作品を殊更多くのページを割いて取り上げていることに違和感を覚えた。

    「答えの出ない事態に耐える力」で思い浮かべるのは、大震災の後、仮設住宅に住み続けている人たちだ。日々生きていくために、否応なく「ネガティブ・ケイパビリティ」を持たざるを得ず、共感のない事態にも直面し闘っていかなければならない。「ネガティブ・ケイパビリティ」を持ち続けるためには、何よりも共感が大切なのだとあらためて気づかされた。

  • 判型も小さく目立つ本でもないが、書名「ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力」が目にとまり。引き寄せられるように手にとった本。
    ネガティブ・ケイパビリティという概念に出会えたこと、その意味するところを知ることができたのは、本当にありがたい。
    ネガティブ・ケイパビリティ、寛容、共感、の欠如がこの今の世界の生きづらさの根源にあるのだということが理解できた。
    多くの人に読んで欲しい。とくに、子育て中の方、これから親となるような方には、ぜひおすすめしたいと思う。

  • 「ネガティブ・ケイパビリティ」この言葉から、逆境に耐える力のような想像をしていたが、全く違った。
    容易に答えの出ない事態に耐える力、とのこと。答えがあることが前提の教育を受けてきて、答えがない日常に煩悶してしまう日々だが、まさにこの力が欠けているのだろう。
    世間でも、他人への寛容さが失われている様を目にすることが多い。瞬時を求めるネット社会を生きている今、改めて目を向けたい。
    しかし本書には、突然に紫式部、源氏物語が登場して、どうもしっくりこなくなった。すっきりしないと感じるのは、やはりネガティブ・ケイパビリティが足りないからか?

  • 啓蒙書のような本はめったに読まない。この本は人に勧められて読み始めた。書いてあることに違和感はない。聞き慣れないネガティブ・ケイパビリティという言葉も、考え方自体は特異なものではない。要は結論を急がないということ。急ぐ前に相手の意図をよくよく聞き分けるということ。そして共感することを心掛けるということ。結論を押し付けないこと、と付け加えてもよい。

    作家はこの言葉の起源から、自身の生業である精神科におけるこの概念の重要性を簡潔に記してゆく。するすると言葉は読み下される。

    残念なことが二つ。
    小説もものにするという作家の日本語が、微妙に頭の中で音像を結ばない。何度か読み返して音のつながりを理解する必要がある文章に時々出食わす。本全体の構成が完結で読者の興味を引くことに腐心していることも判るので、文章ももう少し平易な日本語で綴るべきだったのではないか。
    もう一つはやたら作家自身の他の著作への言及が多いこと。この作家の熱心な読者であればそれもまた楽しい趣向だが、初めて出会う読者にとっては自慢話を聞かされているように聞こえてしまう。その寄り道は本当に必要だったのだろうか。

    但し作家が鳴らす警鐘はとても切実なもの。昨今の不寛容な世相を鑑みれば、そろそろ僕らは立ち止まって一体何がいけなかったのかを考えてみてもいい筈だ。多様性の重要さが声高に叫ばれるご時世に必要なのは、相手を説き伏せることができる秀逸なアイデアでもそれを効果的に伝えるプレゼンテーションでもなく、確かにネガティブ・ケイパビリティなのかも知れない。

  • 結論を急がず、混沌をそのまま受け入れる
    ネガティブケイパビリティ、
    大切な能力だと思う。

    ただ、紫式部やシェイクスピアと
    議論が深まるより横滑りしていった印象。

  • 別記

  • 学会での講演で紹介のあった本で読んでみました。
    講演会の内容はこの本からの引用が多く、すっと入っていきました。
    宙ぶらりんのどうしようもない状態を耐え抜いて苦悩を抱えて持ちこたえる力。
    カタカナ語でなくて日本語だともっと定着するのでは。
    研究会に参加してみたい。

  • 2017.12.9市立図書館

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著者プロフィール

1947年、福岡県生まれ。東大仏文卒後、TBS勤務。その後、九大医学部を卒業し、現在は精神科医。93年「三たびの海峡」で吉川英治文学新人賞、95年「閉鎖病棟」で山本周五郎賞、97年「逃亡で」柴田連三郎賞、10年「水神」で新田次郎賞、12年「蠅の帝国」「蛍の航跡」で日本医療小説大賞、13年「日御子」で歴史時代作家クラブ章作品賞をそれぞれ受賞した。

「2016年 『受難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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