ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力 (朝日選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022630582

感想・レビュー・書評

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  • 世の中には解決できない、しようがない出来事が満ち溢れている。
    しかし、人間は理解したり、早急な対処を求めたりする生き物です。
    そのため、学校でも、いち早く正解にたどりつく力や、スピーディな問題解決能力をもとめる力をつけようとします。
    私も教員として、問題解決のための思考の仕方や、大量の問題を早く答えるような課題づくりをしていました。

    この本では、ネガテイブ・ケイパビリティという能力、答えが出ない!という本来ならマイナスの状態であり続けていく能力の重要性を説いたものです。

    最初から読んでいても、このネガテイブ・ケイパビリティがどういうものかわかりにくかったのですが、要するに考え抜く力であったり、解決できない状態を受け入れたり、問題に向き合うことを諦めなかったりという力を総合して話しているようでした。

    筆者は精神医学にこの力を発揮しており、患者さんとのやりとりで、医者は早急な対処を求められるけれど、実際は解決できないこともあるため、カウンセリングのときには、この力を意識して、患者さんを見守り続けることなどをしているそうです。

    この本では医学のみならず、創作や、政治ついてもネガテイブ・ケイパビリティが発揮される例や、早急に解決しようとすることで起こりうることなどが挙げられています。

    問題解決のためのノウハウ、スキルといった効率重視の本が大量に出回っている中、どっしりと腰を据えて、相手と向き合い続ける力について述べた本は新鮮でした。
    解決できなくてもいい、その対象と向き合い、考え続けていく中でたどり着けるものもある。

  • 「ネガティブ・ケイパビリティ」とは
    「事実や理由をせっかちに求めず、不確実さや
    不思議さ、懐疑の中にいられる能力」です。
    (言い換えると、問題を解決しない能力。)

    キーツはシェイクスピアが備えていたこの能力を
    詩人こそ身に付けるべきとしました。

    しかしこれは簡単なことではなく、なぜなら、
    人の脳は、分かろうとする生物としての方向性が
    備わっているから。

    だけれど、人生における問題はだいたいがそんなに
    すぐに解決しないもののほうが多いので
    「宙ぶらりんでいる」能力、ネガティブ・ケイパビリティが
    有効だということでした。

    個人的にすぐ正解を求めてしまう癖があるので
    「宙ぶらりん」に耐える精神力を身に付ける
    努力をしたいです

  • 詩人キーツが最初に提唱、英国精神科医ウィルフレッド・ビオンが言及して広まった概念だそう。
    この2人の生涯が、かなり詳細に描かれている。だけでなく、紫式部の生育史やメルケル首相の半生も結構細かい。
    こんな所で「源氏物語」やユルスナールの「源氏の君の最後の恋」を浚うとは、思ってもみなかった…って感じで、周辺事物/事象の羅列が多く、「ネガティブ・ケイパビリティとは何ぞや」と正面切っての論旨展開は少ない。

  • どうにも解決できない問題を、宙ぶらりんのまま、何とか耐え続けていく力。
    ネガティブ・ケイパビリティ、興味深いです。

    オープン・ダイアローグで言うところの「不確実性への耐性」と同じ概念でしょうか。

    割り切れないもの、答えを出し得ないもの、どうにもならないものと、どのように共にあるか。

    ネガティブ・ケイパビリティ、私も身につけたいです。

  • negative capability 負の能力、陰性能力
    どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力

    社会は変えられない、とりつくすべもない事柄に満ち満ちている

    キーツによるネガティブケイパビリティの重要性の発言
    不可思議さ、神秘さ、疑念をそのまま持ち続け、性急に事実や理由を求めないという態度

    謎話を謎として興味を抱いたまま、宙ぶらりんの、どうしようもない状態を耐え抜く力

    詩作「エンディミリオン」
    喜びも、悲しみも歓迎する
    忘却の川の藻も、ヘルメスの羽も同じだ
    今日も来い、明日も来い
    二つとも、私は愛する


    わかりたがる脳は、音楽と絵画に戸惑う
    簡単に答えられない謎と問い
    フランス人ブランショの言葉
    「答えは質問の不幸」
    「答えは好奇心を殺す」
    黒井千次
    「謎や問いちは簡単に答えが与えられぬ方がよいのではないかと。不明のまま抱いていた謎は、それを抱く人の体温によって成長、成熟し、更に豊かな謎へと育っていくのであるまいか。そして場合によっては、一段と深みを増した謎は、底の浅い答えよりも遥かに貴重なものを内に宿しているような気がしてならない」


    日薬〜時間的な基盤の保証
    目薬〜見ていますという効果
    プラセボ効果(プラセボの原義はラテン語で、「私は喜ばす」)
    ある意味の思い込みで、効果が出る
    治療を受けいているという実感かわ症状に改善をもたらす

    ノセボ効果とは、プラセボでも副作用が出ること

    プラセボ効果を生じさせる必要条件は、意味づけと期待

    キーツ、シェイクスピアに心酔
    真の創造行為にはネガティブケイパビリティが欠かせないとの気づきから
    創造、ラテン語のcreatioの原義は、to bring into bringで、無からこの世に存在させる
    創造行為は人間が神の位置に立って、無から有を生じさせる営為
    だから通常の能力ではなく、ネガティブケイパビリティが介在すると考えられる


    精神医学では、創造行為と癒しを関連づけて考察
    創造行為は本人に癒しをもたらすと信じられている
    病理性を芸術にぶつけることで昇華させ、健全を取り戻す
    しかしこれは容易ではなく、芸術家にはアルコール依存症が多い

    芸術家の認知様式
    特徴的な能力とは、対立する曖昧な情報を統合する力、言い換えると二つの正反対の思想や概念、表象を同時に知覚して使う能力

    別の研究
    1知性
    2知識
    3能力をどこに集中させるかという知的様式
    4性格
    5動機付け
    6環境

    4の性格特徴として指摘されるのが、「曖昧な状況に耐え」「切れ切れのものが均衡をとり一体となるのを待ち受ける能力」

    キーツいわく
    自分が無になるところから詩的言語が発せられる

    シェイクスピアは
    世界の総体、人間の全体をそのまま掴みとろうとする世界に着目、自身の意見信条は出ていない

    理解と不理解の境界、読者が気づくか気づかないかの微妙な暗闇に一条の薄い光を入れる方法をとっている


    p187
    教育とは、本来もっと未知なものへの畏怖を伴うものであるべき
    この世で知られていることより知られていないことの方が多いのだから

    素読〜意味もわからずただ声に出すだけ
    繰り返すうちに、抑揚が身につき、漢字の並びからぼんやり意味が掴める
    この教育には、教える側にも教えられる側にもわからないことへの苛立ちがない
    わからなくてもいい
    言われるままにくりかえす
    問題設定もなく、ひたすら音読して学ぶだけ
    素養や教養、あるいはたしなみは、問題に対して早急に解答をだすことではない
    解決できないことにじっくり耐える、熟考するのが教養

    学習の速度の差は自然

    学習というのは、世の中の学ぶべきこと、塾の宿題ではない

    孔子の論語の3分の一は芸術論
    論じられているのは、絵画、詩、演劇、音楽
    真の人間になるためには芸術を学ばねばならないと強調されている
    それは、わけのわからないもの、解決不能なものを喜び、注視き、興味を持って味わっていく態度を養成するためなのかも
    崇高なもの、魂に触れるものというのは、ほとんど論理を超越した宙ぶらりんのところにある
    人生の本質はそこにある

    ビオンの言葉
    ネガティブケイパビリティを持つには、記憶、理解、欲望が邪魔をする

    現代の教育は、到達目標という欲望があるために、時間に追われながら、詰め込み記憶を奨励しつつ、とりあえず理解させようとする
    それではネガティブケイパビリティは育たない

    タイムの記事から
    普通の親から生まれた成功者の子どもの共通点
    他国からの移民
    両親は子どもの小さい頃、教育熱心
    0〜5歳までいろいろなことを学ばせていた
    学ぶ心を植えつけていた
    親が社会活動家
    家庭内は平穏ではなかった
    子ども時代に人の死を見てきた、生きることの大切さを学んでた
    丁寧な幼児教育の後は放任

    森田療法

    持ち堪えるは、能力のひとつ

    エラスムス(オランダ人、愚神礼賛を書いた)
    寛容を説き続けた

    寛容を支えるのがネガティブケイパビリティ

    精神科医として大切なのは、親切
    中尾弘之先生

    人間の最高の財産は、empathy、共感

  • レベッカ・ソルニットの「迷うことについて」でネガティブ・ケイパビリティに触れられていて、興味を持ったので読んでみたのだが期待していたような本ではなかった。
    「ネガティブ・ケイパビリティは拙速な理解ではなく、謎を謎として興味を抱いたまま、宙ぶらりんの、どうしようもない状態を耐え抜く力です。その先には必ず発展的な深い理解が待ち受けていると確信して、耐えていく持続力を生み出すのです。」
    とあるけれど、私はネガティブ・ケイパビリティ自体には「希望」の要素は含まれていないように思う。むしろ、理解できるかどうかすら分からないところに留まるもののような気もする。共感こそネガティブ・ケイパビリティみたいなことも言うけど、それもちょっと違うような…。

    どうしようもない状況の患者さんたちの話とか、プラセボ効果の話とか(ここ長かった)でちょっとずれてきたなと思ったけど、文学作品のあらすじを長々語り出したあたりではっきりおかしいなと感じ、ヒトラーと同一視してのトランプ批判と旧日本軍批判が始まってもう斜め読みになった。

    「寛容さのひとかけらもない」「軍隊はネガティブ・ケイパビリティとは全く無縁の存在」と声高に批判するけれど、本当に寛容を求め、本当に戦争を止めたいと思うのなら、戦争の悲惨さを延々書き綴るのでは足りないのではないか。むしろヒトラーやトランプや旧日本軍の心にこそどこまでも潜って、早急な価値判断で断罪せずに考え続けるべきなんじゃないのか。
    戦争は腐っても手段なんだから、悲惨さを主張してその効用の宣伝をしたってしょうがないというか、むしろそこに至るまでの経緯と手段としてのメリットをきりきり考え詰めて、はじめて対抗する策も生まれるのでは?と思う。メルケル首相を称揚する文章を読む限り、現実に進行中の戦争そのものには著者は興味なさそうなので、本当はどうでもいいのかもしれませんが。
    理解できないものこそ、放り出さず、寄り添って、留まる、自分の知っている理論から安易な答えを貼り付けない。キーツのネガティブ・ケイパビリティに言及し世に送り出したビオンの言いたいことって、そういうことだと、著者自身が書いていると思うのだけど。

  • ソリューションフォーカスを違った側面から理解できる本。

  • 実は、隠れた名著らしいのだが。

  • ネガティブ・ケイパビリティとは何か、それを人生に生かすには、というあたりが知りたかったのだけれど、歴史上の人物の誰がその能力を持っていたとかそんな話ばかり。なのでパラパラと斜め読みして終わった。

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著者プロフィール

1947年、福岡県生まれ。東大仏文卒後、TBS勤務。その後、九大医学部を卒業し、現在は精神科医を務めながら執筆を続ける。93年『三たびの海峡』で吉川英治文学新人賞、95年『閉鎖病棟』で山本周五郎賞、97年『逃亡』で柴田連三郎賞、2010年『水神』で新田次郎賞、11年『ソルハ』で小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』で日本医療小説大賞、13年『日御子』で歴史時代作家クラブ章作品賞、18年『守教』で吉川英治文学賞をそれぞれ受賞した。

「2019年 『受難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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