江戸時代 恋愛事情 若衆の恋、町娘の恋 (朝日選書)

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著者 : 板坂則子
  • 朝日新聞出版 (2017年6月9日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022630605

江戸時代 恋愛事情 若衆の恋、町娘の恋 (朝日選書)の感想・レビュー・書評

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  • 江戸の恋愛事情を浮世絵や小説、春画・春本から読み解こうという1冊。
    カラーを含め図版豊富だが、内容上、中には少々人目をはばかるものもあるのでご用心。とはいえ、中身は学術寄りである。

    副題にもあるとおり、焦点は「若衆」と「町娘」である。これが江戸期の恋愛全般を象徴するものであるかはさておき、著者が挙げる多くの図版は、これらの存在に対して、一定の熱い関心があったことを物語る。

    町娘については解説不要だろうが、「若衆」とは要するに美少年で、往々にして衆道(武士同士の同性愛)の片割れとなる。もう一方はといえば、念者と呼ばれる年長者で、こうした衆道の物語は江戸初期にもてはやされたという。代表的な作品が『好色一代男』で知られる井原西鶴の『男色大鑑』である。
    こうした物語では、念者も若衆も互いに操を立て、それを守るためには命を惜しまず、彼らの女嫌いぶりは徹底しており、若衆は見た目は美女にも似た外見でも武芸に秀で、といろいろありえない感が強いのだが、「至高の恋愛」を夢想するには格好の舞台装置であったというところか。

    時代が下り、「若衆」の相手は男ばかりではなく、女性が相手である作品も増えていく。
    女性たちは見目麗しい「色男」を好んだものらしく、物語の中ではこうした男たちが理想の相手として描かれ、財力があって居丈高というような男は好まれない。
    幾分か、中性的な感じがするのだが、こうした中間の性に対する人気を受けてのことか、物語の中でも、異性装の話は結構多い。『南総里見八犬伝』では、幼少時を女児の姿で育てられた犬塚信乃、女田楽師として成長する犬坂毛野と八犬士のうち2人までもが女装時代がある。そしてこの2人の人気は結構高い。
    鈴木春信の描く若衆と娘は、どちらがどちらともつかぬほど、すらりと中性的でよく似ている。

    江戸後期の作品としてやや詳しく触れられているのが、為永春水の『春色梅児誉美(しゅんしょくうめごよみ)』。人情本の人気作である。主人公は丹次郎と呼ばれる色男。一応、身分ある武士のご落胤なのだが、あっちへふらふら、こっちへふらふらと、言い寄られるままにいろいろな女と懇ろになってしまう。いい加減なのに意味不明にもてる男である。さまざま紆余曲折があるが、彼を支える女性たちの助けもあり、相応の身分に戻り、恋敵であったはずの女性たちも義理の姉妹の契りを結ぶなどして大団円となる。そんな都合のいいことがあるかい、と思うわけだが、さてこの物語がなぜ人気を博したのか。
    著者によれば、丹次郎はいわば、女性たちにとっての「スプリングボード」だったのだという。箱入り娘から娘義太夫に大変身して丹次郎を経済的に支えようとするお長。売れっ子芸者だったが、店を飛び出し、自由に稼げる自前芸者になる米八。彼女らの生き方は、恋しい男のためとはいえ、主体的で意思を持ったものである。実はこの物語は女性が主導権を握っており、そのためには男は強くあってはならなかったというのだ。恋しい男のために、強く生きる女。そこが読者たる娘たちにも受けた。
    このあたりのジェンダー論的な見方が妥当かどうか、門外漢としては少々悩むところだが、観点としてはおもしろいところかもしれない。

    娘義太夫となったお長だが、彼女も実は異性装をしている。中剃りと言われる髪型だ。芸能者には異性装が多く、芸者の絵でもよく見られる。中剃りはまた若さの象徴でもあり、「活発さ」「おてんばさ」「かわいらしさ」の象徴でもあった。
    こうした中剃りの娘たちの絵は、江戸後期に近づくにつれて増えていく。「幼さ」「若さ」が未熟の象徴ではなく、魅力の1つと認識されていったと見ることもできよう。

    古典というと教科書的な部分が注目されるが、江戸期の大衆文化には、今日からすると、かなり奔放・淫猥なものも多い。
    衆道の物語は今日のBL(ボーイズラブ)ものと通じているようでもあるが、また一方で大きく違うようにも思える。春画の大胆すぎる表現は時に滑稽でもあり、実際に江戸期の人々はどんな風に眺めていたのか、想像に困るところもある。
    近くて遠いお江戸の色恋。お行儀よく表から眺めるだけでなく、猥雑な部分にも触れてみると、もう一段、深いところが見えてくるのかもしれない。

  • 購入。

    男色や遊女に関する江戸時代の恋愛事情を研究した内容の紹介。

    江戸時代が進んでいくにつれて現代と似た状況になっていると指摘する著者の言葉に納得した。

    若衆から舞台上の役者が支持されるようになる、支持しているのは女性。
    遊女から看板娘(町娘)が支持されるようになる、支持しているのは男性。

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