【改訂完全版】アウシュヴィッツは終わらない これが人間か (朝日選書)

制作 : 竹山博英 
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 76
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022630650

作品紹介・あらすじ

【哲学心理学宗教/心理】第2次世界大戦時の強制収容所から生還した著者が、その体験を人間の極限状態として克明に、静かに描き出す。35言語に翻訳され、世界中で読み継がれてきた古典的名著。旧版『アウシュヴィッツは終わらない』を改題し、増補、完全版としておくる。

感想・レビュー・書評

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  • 1919年にトリーノに生まれた作者は44年2月アウシュビッツ強制収容所に抑留。45年1月ソ連軍に解放され、同年10月イタリア帰還。

    実話。

    ナチ統治下のドイツ地図があり主要収容所および抹殺収容所の場所が点在していてその数の多さに驚かされる。

    ユダヤ系のイタリア国民だというだけで生きる権利を奪われる。
    人でなく物として、いくつあるか数えられる。
    何百人も軍用列車で運ばれて、たまたま列車の片側に降りたものが収容所に入り、残りはガス室行きになった。

    ここでは、収容所の中での暮らしが事細かに書かれている。私たちの常識のような規範で生きていたらすぐ命はなくなる。
    こういうことがあった歴史を知ると、いまがどんなものでもありがたくなった。
    あんまり、本を誰かに勧めたりはしないけどこれは読んでほしい。と思った。

    それにしても、よく生き延びたな。

  • アウシュヴィッツ強制収容所から生還した著者が解放後すぐに執筆に取りかかり出版した収容所の記録。淡々とした筆致はそこで起こったことを、それ以上でも以下でもなく、怒りが荒ぶることもなく克明に後に残している。あの場所を生きた人にしか書けない本だった。

    読むのがとても困難だった。次々いろんな人たちが入れ替わり立ちかわり出てくるけど、人の出入りが激しいのはきっとみんなそれぞれ途中で死んでってるからなんだろうなと思うし、ダッハウやマウトハウゼン、ザクセンハウゼンを訪れたときのあの突き抜けるような快晴の、空っぽの空気が蘇ってきて。

    これが人間かと聞かれたら、人間ではないと思う。ズルをするとか抜け駆けするとか、それをいちいち咎めてたらこの人たちは死んでる。生き延びるにはなにも考えないこと、とレーヴィは語る。自尊心や希望は人を殺す、から、体を壊さないように人格の方を先に自ら壊してしまう。

    一度でも自尊心を完膚なきまでにボコボコにされた人はその経験にはできるだけ蓋をしたい、語りたくない、わたしは同じ体験なんてできないけど、きっとなにも語りたくない惨めだから。だけどこの人はただ語るのだという強い思いでこの本を残してくれた。すごい勇気だと思うし、大事にされるべき本。

  • ★4.0
    「アウシュヴィッツは終わらない」の改訂完全版。寒さと飢え、人間性の剥奪、アウシュヴィッツ強制収容所での生活は、とてもじゃないけれど過酷の一言では片付けられない。あの状況下で生き延びられるのは、より狡猾で素早く環境に適応できる者だけ。場合によっては、その機会すら与えてもらえない。著者が生還できたのはまさに奇跡で、当時の生活を客観的な視点で本書に纏め、学生たちの疑問に丁寧に答える姿勢が素晴らしい。ただ、著者が自死してしまったのが残念でならない。そして、あの1年が最期まで著者の心を蝕んだことが悲しい。

  • 打ち負かされるのは一番簡単なことだ。与えられる命令をすべて実行し、配給だけ食べ、収容所の規則、労働規律を守るだけでいい。経験の示すところでは、こすうると良い場合でも3か月以上はもたない。ガス室行きの回教徒はみな同じ歴史を持っている。いや、もっと正確に言えば、歴史がないのだ。川が海にそそぐように彼らは坂を下まで自然に転げ落ちる。収容所に入ってくると、生まれつき無能なためか、運が悪かったか、あるいは何かつまらない自己のためか、彼らは適応できる前に打ち負かされてしまう。彼らあは即座に叩きのめされてしまうので、ドイツ語を学んだり、規則や禁制の地獄のようなもつれ合いに糸口を見つけたりすることもできないうちに、すでに体はダメになり、何をもってしても選別や衰弱しから救い出せなくなっている。彼らの生は短いが、その数は限りない。彼らこそが溺れるもの、回教徒であり、収容所の中核だ。名もない
    非人間の塊で、次々に更新されるが、中身はいつも同じで、ただ黙々と行進し、働く。心の聖なるひらめきはもう消えていて、本当に苦しむには心が空っぽすぎる。彼らを生じゃと呼ぶのはためられる。彼らの死を死と呼ぶのもためられる。死を理解するにはあまりにも疲れきっていて、死を目の前にしても恐れることがないからだ。

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著者プロフィール

1919年、イタリア・トリーノ生まれ。トリーノ大学で化学を専攻。43年イタリアがドイツ軍に占領された際、レジスタンス活動に参加。同年12月に捕えられ、アウシュヴィッツ強制収容所に抑留。生還後、化学工場に勤めながら作家活動を行い、イタリア文学を代表する作家となる。その円熟の極みに達した87年、投身自殺を遂げた。

「2017年 『周期律 新装版 元素追想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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