変質する平和主義 <戦争の文化>の思想と歴史を読み解く (朝日選書1042)
- 朝日新聞出版 (2024年6月10日発売)
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感想 : 5件
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Amazon.co.jp ・本 (248ページ) / ISBN・EAN: 9784022631329
作品紹介・あらすじ
日本人の「戦争と平和」の認識と変化を辿り、
平和主義の現在地を捉え、民主主義のあり方を探る、著者の新境地!
起点は1989年だった――
この頃より、<戦争の文化>が胎動し、市民的価値観が弱体化していく様相を、
歴史社会学的、思想的アプローチを通して考察する。
1990年代の「第三の開国」による「平和主義のグローバル化」、
2000年代に広まった新自由主義がもたらした「日常のサバイバル=戦争化」、
ウクライナ戦争後に強まりつつある「パワー・ポリティクス的な世界把握の浸透」。
これらを経て平和主義がより現実主義的なものに変質していく動静を明らかにする。
みんなの感想まとめ
平和主義の変質をテーマに、日本の「戦争と平和」に関する認識の変化を追う本書は、1989年以降の文化史や思想史を背景に、現代の平和主義がどのように現実主義的な方向へとシフトしているのかを考察しています。...
感想・レビュー・書評
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主に1989年以降の文化史というか思想史というか。九条の理想を掲げる昔ながらの戦後反戦・平和主義が、より現実主義的な平和主義に変質しているというのが著者の主張の核。その要因として、戦争体験の忘却、新自由主義、9.11後の米国の戦争への協力、東日本大震災等での「軍事的なもの」受容、更にはウクライナ戦争等を挙げる。
著者は前者の主義を無批判に肯定しないまでも、後者の主義には明らかに批判的。本書では専ら日本国内の思想文化を論じ、その感覚が世界的にはどうか、また安全保障環境がどうか、という視点は薄い。もっともかかる視点こそ、著者が批判的な「現実主義」なのだろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
平和主義の変質を議論する著作だが、あとがきで次のような要約がある.「戦争のない状態」としての「平和」に関する認識としては、九条の理想を掲げる戦後的な反戦・平和主義があるが、これは年長世代を中心に残存しているものの、その弱体化は疑えない.弱体化や影響力の低下をながらく指摘されながらも、確かに残っているという事実を軽視すべきではないけれども、それが弱体化することで、日本社会のより根底部にある生活保守主義に基づいたしたたかとも呼べる平和主義が目立ち始めた.230頁の内容をこのようにまとめる力に驚嘆した.その直後の解説に「したたか」が出てくるが、その通りだと思う.第二、三、四章で語られる歴史的事項はほとんどが記憶にあるもので、ベルリンの壁が崩壊した1989年からのスタートが最適だと感じた.民主主義を「生のあらゆる次元のコミュニケーションの場において作用する偏った権力関係に、批判的に介入する力を重視する思想」と位置づけているのも良い.宮﨑駿のアニメを絡めた解説も楽しめた.
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1989年~2023年までの日本社会における「戦争と平和」論を追跡する。情報は手際よく整理されていて、いろいろなことを教えてくれるが、どうにも記述に深みがない(4000字ぐらいで一つのトピックが片付けられ、すぐに次に進んでしまう)。印象が残らない。たぶん、ここで展開されている議論に文化的・思想的な深みが感じられないからだろう。宮崎駿の諸作品や岡崎京子『リバース・エッジ』、岡田利規『三月の5日間』などのフィクションも取り上げられているが、基本的には従前の議論の紹介と再解釈にとどまる。よく言えばジャーナリズム的な、皮肉に言えば気の利いた学生のレポート、というところか。
著者プロフィール
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