銀色のフィレンツェ: メディチ家殺人事件 (朝日文庫 し 9-2)

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022640253

感想・レビュー・書評

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  • 塩野七生氏の歴史絵巻三部作のうち、これが二作目。

    ・・・
    前作同様、ヴェネツィアの貴族マルコが主人公。

    前作末、政治勢力図の変更もありヴェネツィアでの殺人事件のごたごたの責任を取らされ、一時的な追放を余儀なくされたマルコ。外遊ということでフィレンツェへ。

    これまたフィレンツェで政治騒動に巻き込まれますが、フィクションですのでそんな偶然もご愛敬。
    今回の舞台はルネサンス期後半のフィレンツェです。隆盛を極めたメディチ家、ではなく、むしろ経済的には落ち目にあり、軍事や政治へシフトしつつあるメディチ家を描きます。

    ・・・
    塩野氏というと、歴史と共に、イタリア政治を語るイメージがあります。
    本作では、登場人物に政体論を大いに語らせています。

    隣国のヴェネツィアが共和国である一方、時のフィレンツェは侯爵の収める言わば君主制。そこで外交経験豊富な主人公マルコは、傍系ながらもメディチ家の若い血、ロレンツィーノと邂逅します。更に、同国稀代の政治家・外交官のフランチェスコ・ヴェットーリらも合流、政体論を繰り広げます。

    主人公のマルコは創作ですが、それ以外は実際の歴史上の人物ということで、このヴェットーリという政治家はマキャベリの友人であった実在の人物。

    物語上では、ヴェットーリのリードのもと、政体の良しあしではなく、市民が満足するならば政体はどれでも良し、ということに。で、市民の満足はどこから得られるかといえば経済的繁栄ということに落ち着いたようです。

    これを読んだ途端、私の脳裏にはフィレンツェやヴェネツィアよりも、明るい北朝鮮と呼ばれるシンガポールが思い浮かびました。色々とルールが厳しかったり(麻薬の持ち込み=即死刑とか)しますが、周辺国はみなシンガポールを目指しますよね。

    対して日本はどうなんでしょうか。経済?いまいち伸びていなさそう。政治?首相はコロコロ変わります。

    日本の(というかうちの!?)会社でもつとに感じますが、長期的視点で運営できないとなると、致命的な無責任運営になりかねない気がします。三か年計画とか言って作っていますが、作成から三年たって、どれだけ携わった人・責任者が残っているのか。

    もちろん、経営・政治は、いうのは簡単ですが、成し遂げるのは難しいのでありましょうが。

    ・・・
    その他、前回登場したオリンピア(こちらもマルコ同様創作の人物)も登場。今度は神聖ローマ皇帝カール5世の密使として、時のフィレンツェの為政者の侯爵アレッサンドロを見張るというのがお仕事でした。

    なおマルコとの熱愛?も相も変わらず続いている様子であります。

    ・・・
    ということで歴史絵巻三部作の二作目でした。

    前作はヴェネツィアのほかにイスタンブールまで描かれておりスケールが大きかったため、本作はややこじんまりした印象があります。

    但し、フィレンツェの街をじっくりと描写しており、旅行に行かれる方にはなかなか面白い作品なのではと思いました。エトルリア人が作ったと言われるフィエーゾレ、ウフィツィ美術館、ベッキオ橋等々、観光地の有名どころがかなり描きこまれている印象です(地図付きです!)。

  • 「緋色のヴェネツィア」に続く三部作の2作目
    「銀色のフィレンツェ」。
    絶対君主制の国家に変貌したフィレンツェの経過の物語。
    コジモで始まった250年続くメディチ家確立の影には、同じ一族のロレンツィーノがいた。

    コジモは、冷徹だわ

  • 三部作一作目よりかなり楽しめた。いかにも悪者役のアレッサンドロ公爵が殺されるという勧善懲悪的な筋書きが読みやすかったのだけど、結局フィレンツェは共和国にも貴族制にも戻らず、冴えない立憲君主国に留まるというのは、歴史の皮肉というのか、大きな流れには逆らえないというのか。

  • 三部作の二作目。
    公務から離れて訪れたフィレンツェで国の政体を揺るがす事件に巻き込まれるマルコ。
    遊女オリンピアとも再会し、フィレンツェでは様々な魅力的な人物とも出会います。歴史上のきらびやかな登場人物の息遣いも聞こえそうな文章はさすがでした。
    上流階級の持つ品の良さと生来の人柄の良さに明晰な頭脳を持つ主人公マルコは嫌なところが一つも無く、本当に魅力的です。完璧ですよね、彼は。

  • 三部作の第二巻。
    ヴェネツィアでの主人公マルコや遊女オリンピアが再登場し活躍するものの、塩野さんが仰る通り作品の主人公は都市とその歴史です。
    今回もマルコたちの努力(?)を他所に、物語は意外かつ史実通りの展開へ。
    本当に事実は小説より奇なりで、イタリアの歴史にくぎ付けです。
    しかも有名な人物や芸術が惜しげもなく登場するので、来月行くイタリア旅行が俄然楽しみになってきました。
    旅行前の予習読書として、最高の作品です。引き続き、ローマに行きます。
    面白い!!

  • ルネサンス歴史絵巻 第2部
    銀色のフィレンツェ―メディチ家殺人事件 (朝日文芸文庫)

    内容 : 
    若きヴェネツィア貴族マルコ・ダンドロは花の都フィレンツェを訪れたが、かつての共和国は今や大国を後楯にする公爵の独裁下にあった。
    その専制君主をめぐるメディチ家の陰謀に巻き込まれるマルコと遊女オリンピア…。
    16世紀前半、翳りゆくルネサンス・イタリアを描く絢爛たる歴史絵巻第二部。

    著者 : 塩野 七生
     

  •  またマルコに会えて嬉しいです。前作同様、マルコの育ちの良さや教養、タダ者ではない人物達に信頼される、有能っぷりは健全です。CDXを一時追放されたマルコの、優雅な貴族の目的のない旅路の始まりです。公務ばかりで他国をきちんと見た事がない、という理由で立ち寄ったフィレンツェで、まさかのオリンピアとの再会を果たします。宿屋のジョヴァンニ、メディチの若者ロレンツィーノ、老貴族フランチェスコなど、マルコの親しみを感じさせる態度から、人間関係が広がっていき、人脈と知恵で囚われたジョヴァンニを救出したり、食事に招かれたりするようになります。
     最後まで読みましたが、アレッサンドロ公爵は本当に人間のクズですね。ロレンツィーノは最初、妹に恋愛感情を持っているのかな?と思っていたのですが、自分が汚れ役を引き受けて、最後まで妹の幸せを願っているお兄ちゃんでしたね。計画実行から、その後の不安定な心理状態まで、すごくリアルでした。
     まさかここで、こんな形でボッディチェリやマキャヴェッリに会えた事に興奮を覚えました。
     次はいよいよ三部作の最終作品です。今から読むのが楽しみです。

  • 2作目。マルコ君旅に出るの巻。お金持ちで風采も性格も頭も良いマルコ 君。見ていてほんと気持ち良いね。この時期のフィレンツェ、メディチ家のことが少しつながった。

  • 緋色のヴェネツィアの続編。フィレンツェが、絶対君主制へ完全に移行してしまう経緯を描く。マルコがアルヴィーゼを思い出す場面にしんみりしたり。ヴェットーリがいい味出してる。マルコとヴェットーリの、政治体制に対する問答は、今の日本にも通じるものがあると思った。首飾りって一角獣を抱く貴婦人の絵のことなんかな。

  • 第三部に続くんだけどヨカッタ、良かったよフィレンツェ。斜陽にさしかかったかつての花の大都市が、スペインから来たバカ殿に手を焼きながら、誇り高い共和政から専制君主制に完全に移行してしまった時代の話。西洋美術に知識があれば、さらに楽しめるよ。

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