黄金のローマ: 法王庁殺人事件 (朝日文庫 し 10-3)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022640550

感想・レビュー・書評

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  • ルネサンス時代16世紀のローマの遊女オランピアと法王の子息ファルネーゼ枢機卿、そして著者の創作人物であるヴェネティアの貴族マルコ・ダンドロ。3人の三角関係から悲劇の死を招く。史上に残る気高い美女オランピアとファルネーゼが作った宮殿(現在のフランス大使館だそうです)の歴史を、想像を交え、ローマという都市の魅力の背景を語ってくれます。オランピアが事実として住んでいたというナボーナ広場にも行きました。イタリアを旅行し、その情景が良く理解できるように思います。

  • 塩野氏による歴史絵巻三部作の最終作。
    緋色のヴェネツィア、銀色のフィレンツェ、に続き、黄金のローマ、であります。

    もし本作を初めて手に取った場合は、悪いことは申しませんので、是非いちから(ヴェネツィア)から読むことをお勧めします。

    ・・・
    主人公はヴェネツィアの貴族マルコ・ダンドロ。今回もまた高級遊女である彼女のオリンピアと一緒です。

    ただ、何というかマンネリ感は否めません。

    ・・・
    これまでの塩野氏のあとがきによると、架空の人物であるマルコとオリンピアを使い、むしろ「都市を描く」ということでありました。これにはなるほどと感じました。

    ヴェネツィアでは、トルコを相手にした諜報戦やヴェネツィア共和制の政治の仕組みが巧みに描かれており面白かったです。

    フィレンツェでは、これまたメディチ家の家門内の政治闘争、そしてイタリア人であってもヴェネツィアとフィレンツェで考え方が違うという地方人気質の描き方が面白かったです。

    そして今回のローマ。確かにローマは描かれているものの、どちらかというと架空の人物であるオリンピアに焦点が当たっていたように思います(彼女の隠し子問題やモトカレの存在など)。これはこれで面白かったのですが、歴史的な深みは前作2作よりは感じられなかった気がします。

    ローマといえば、やはり法王庁ですが、この内部のドロドロさ加減にフォーカスすればもっと面白かったかも、と思った次第です。

    ・・・
    そして、自然と目がいってしまう表紙の裸婦。

    これはイタリアの巨匠ティツィアーノによるもので、「ウルビーノのヴィーナス」として有名(ウフィツィ美術館収蔵)。とても肉感がありますね。

    Wikipediaにも「官能性をより追求した」とありました(そうやって表現するのか。危うく「エロい感じ」とボキャ貧表現をしそうになった)。

    因みに上記wikipediaでは本絵画が後のマネに影響を与え、ほぼ同一構図の「オランピア」という作品に結実したことが記されています。塩野氏が高級娼婦としてオリンピアという人物を描いたことも決して偶然ではない気がします。

    ・・・
    ということで塩野氏のルネサンス歴史絵巻三部作の最終作でした。

    マルコとオリンピアの仲は悲恋で終了したのですが、個人的には区切りがついてすっきりしました。ちょいドロドロしたところも個人的には好み。ただ歴史ネタはもう少し欲しかったですね。

    それと、ローマの街の様子は沢山描写されています。テヴェレ川沿いやアッピア街道を散策される機会がある方は是非本作を片手に!少し旅行が楽しくなるかもしれません。

  • 一体何を読まされてるんだ?と思いながら読んだ。
    何も起こらない、ダンドロのローマでの生活と愛人の話だ。
    副題の法王庁殺人事件って話にあった?

  • カンピドリオ広場を見た時の感動を思い出した。その時は、ミケランジェロの設計によることを知らずにいたけれど、マルクスアウレリウス帝の騎馬像から見るローマは、これぞローマという感じで。
    この本、以前読みかけて断念してたのだが、三部作として通して読むと、それぞれの都市の空気の違いがよく感じられて、あっと言う間に読めた。
    アレッサンドロ枢機卿が爽やかでいい。

  • 半分だけ読んだ。地理がしっかり理解できてるのでそこは面白い。

  • 三部作最終巻。
    マルコとオリンピアの物語は、こう終わらせるしかなかったのかもしれない。
    切ないけれど、マルコはヴェネツィアに帰ったら亡き親友アルヴィーゼの娘を娶るはずなのだから。
    実在した人物とオリジナルのキャラクターが絶妙に絡み合う、素晴らしい三部作でした。歴史の勉強にもなりました。
    ローマに行ったら、アレッサンドロ・ファルネーゼ枢機卿に関わる物を見てみたい。
    実際はオリンピアとは無関係な彼ですが、オリンピアの面影を探して旅先で思い出して泣いてしまいそうです。
    俄然イタリア旅行が楽しみになりました。

  • ルネサンス歴史絵巻 第3部
    黄金のローマ―法王庁殺人事件 (朝日文芸文庫)

    内容 : 
    永遠の都ローマ。古代からの時間と空間が濃密に積み重なり、農穣な想像力の世界へと誘う。
    その一方で、覇を競う列国の陰謀が交錯する都市でもあった。
    ルネサンス最後の法王パウロ三世と教会軍総司令官の息子、孫の枢機卿、そして遊女オリンピアの秘密とは…
    華麗なルネサンス歴史絵巻第三部。

    著者 : 塩野 七生

  • 塩野さんの本を読むたびに日本が目指すべきはヴェネチアのような国家なのだろうと思う。大国たるトルコやスペインが中国・アメリカ、経済的な利益と嫉妬心からトルコのいいなりになるフィレンツェあたりが韓国というところか。同じ海洋国であり貿易立国であり、一時の繁栄を誇りながら長期低落傾向にあるところも似ている。人口が減り続ける日本が再び世界をリードする国になるとは思えないが、国力が落ちる中でも独立を維持し世界に冠たる貿易立国でありつづけたヴェネチアから学ぶことは大きい。彼我の差は、海軍力と外交も含めたインテリジェンス能力だけれど、いずれもベネチア男の愛国心がその基礎となっていることは言うまでもない。

  • 三部作読み終えましたー。オリビアの華やかな生活、読んでいて楽しかった。マルコの育ちの良さも気持ちよかったなあ。

  • 出版が20年以上前なので中々読む気が起こらず、ずっと積ん読してあった本なのだが、前に読んだイタリアが舞台のダン・ブラウン「インフェルノ」に触発されて三部作(緋色のヴェネツイア、銀色のフィレンツェ、黄金のローマ)を一気読み。
    塩野七生の小説というのは珍しく、彼女の歴史物で鍛えられたヴェネチア、フィレンツェ、ローマの知識にも支えられて、本三部作は本当に楽しく読めた。
    一作目緋色のヴェネツイアには、「インフェルノ」の最後の舞台や鍵となるヴェネチアの提督子孫が出てきて、その偶然に驚かされた。
    本を読んでると、時折こんな偶然に出くわすのだが、そんな時はいつも以上にワクワクするものだ。

    主人公マルコ・ダンドロと愛人のオリンピアだけが架空の人物で、彼等が三都市を舞台として歴史上実際の事件であるヴェネチアとトルコの興亡、フィレンチェの統治者アレッサンドロ公爵殺人事件、法王パオロ三世、ファルネーゼ公爵一続をめぐる葛藤、コンタリーニ枢機卿とプレヴェザの海戦とヴェネチアの危機を絡めた小説仕立ての歴史絵巻。
    各都市の性格も著者ならではの描き込みがそこかしこに出ていて、三都市とも思い入れたっぷりの私としては通常以上にのめり込んでしまった。
    他には殆ど小説など書いたこと無い塩野氏であっても、歴史と絡めたストーリー仕立てには興味津々。
    主人公マルコの仕立ても絶妙の位置にあり、これが著者が歴史を紐解きながら筋を語るのに丁度良い。
    マルコを立てた続編を書いてもらえないだろうかと(本人も最後に言っている)思うのだが、残す年月で書きたい人も残されているようで、三部作で終わりなのだろう。
    これは残念。
    これまで積ん読してあったのが大いに後悔されるほど面白く、のめり込んだ小説出会ったのは間違いない。
    ただし、そういう思いを持てるのは塩野氏ファンならではってところもありそうだ。

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