- Amazon.co.jp ・本 (393ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022641489
感想・レビュー・書評
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この本を読了するのは2度目。
1度目は18年ほど前か。あの時より理解度高く読めたと思う。
台湾を旅しながら読むのには本当に最適で、読書を楽しむことができた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2008
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前評判通りの秀作。その前評判はどこからかというと『司馬遼太郎の遺産「街道をゆく」』という司馬氏没後に編まれたぬくもりにあふれた回顧録からであった。
第二次大戦前に日本語教育を受けた人が終戦当時15歳だったとすると今年82歳ということになる。自分の親の少し上の世代だ。そう思うとその頃を知る人達に直接あって話が出来る機会は年々減少しているということであり、それはそれで少しさみしい。ただこの「さみしい」という感覚がどこから来るのかが重要な点であり、今までの自分ならば「世界中の人口の中での数少ない親日派人口が更に減ること」というぼんやりとした幾分自分勝手な理由からだけであったわけであるが、本当はもう少し先を見据えて感じるときに少し複雑な「寂しさ」になるということが少しずつ分かってきた。
ここで言う「もう少し先」とは。
明治時代に日本政府と清朝との間にどういういきさつがあったのか、日清戦争を経て蒋介石のどのような思惑でこの豊かな島は扱われたのか、当時の「多民族国家日本」はどのようにこの島を経営していたのか、現地人渡来人を問わず私心を忘れてその地に尽くした人達にはどういった人達がいたのか、孫文の思想は如何にこの島に巣食っているのか、海の向こうから持ち込まれた国家が島にもたらした作用というのがどういうものだったのか、内省人と外省人の心のなかには当初どういった感情が渦巻いていたのか、そしてそれがどのように変化していったのか、その中で登場する李登輝とはどういう人物なのか、その後の台湾島民がどういった教育を受けどういった思想が一般的なものになっていったなのか…というような非常に複雑なものである。こんな複雑なものを全て消化して人類愛にあふれた明確な回答を持てるような人は当然稀なわけで、それ故にそんな見解を持ち得る台湾島出身の人物や大陸生まれの人物にはなかなか会えない。ましてや歪んでいない周辺諸国の歴史教育をきちんと実施していない戦後の日本生まれはこれまた人材が希少であることにまちがいはない。
ただ相手を罵ることは自身を罵ることになるということ、自身の無知を、高慢さを、心の狭さを声高に主張していことになるのであるということを常に肝に銘じておかねばならない。この島に対しての理解をできるだけ速く高め、一方で得た知識が自分の主張を誰かにぶつけて論破することが目的として使われるのではなく、様々な立場の主張を微笑みをもって聴くことに使われるように訓練した上で、もう少し踏み込んで付き合っていきたい。
これこそが司馬氏の言う「北方領土をみてモンゴルの草原を想う」という人間に一歩近づける道の一つのような気がするからである。 -
俺の学生時代、田中角栄が中国と国交を樹立したことはいいことだと単純にも思い込んだが。そのころ「光華寮問題」という問題(台湾所有の京都大学学生寮を中共がよこせと訴えた訴訟)が勃発し、実は40年経ったいまでもわざと決着させていないほど日中友好に気を使っている/侵略性大国の前では「小国は賢くなければ生き残れない」。戦前の日本の気質も残す、特筆すべき親日国ではある。台湾は主席公選の民主主義国であるが、先年小林よしのりの入国を拒むという事件が起きた。それほど大陸の共産党政府の核ミサイルを恐れている。日本は軍事的脅威に暢気すぎる
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今度仕事で台湾に行くのでその前に台湾のことを勉強しておこうと思い読んでみた。台湾の歴史について、全く知らなかった。オランダの支配、清の支配、日本の支配、そしていまだに続く外省人(中国)の支配。そういう支配された歴史のなかで、生きる市井の人々と触れあっていく司馬遼太郎。飼い犬の名前にポチと名付ける老人と出会い寂しさを覚える司馬遼太郎。台湾で生まれ、生後すぐ終戦と同時に日本に戻され生まれ故郷台湾の事をほとんど知らない若者が台湾の運動場を走る姿をみて、人は詩を言葉だけで書くものではなさそうだということを、ほのかに思わせられた。と書く司馬遼太郎の言葉。そして旅の終わりに、当然のことだが、この島の主は、この島を生死の地としてきた無数の百姓たちなのである。と書いて終わるこの紀行文は「国」や「故郷」といったものを深く考えさせられる。植民地政策は最大の国家悪(おそらく文化的側面について)と言うが、一方で占領する側が最大限の技術を投入しようと試みることで社会が整備されていく側面もあるということもなるほどなと思わされた。全編さすが司馬遼太郎といった紀行文だ。台湾行く前にもう少し台湾の事を調べてみたいと思う。
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新書文庫
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序盤が発行されて20年弱が立っているため、今の台湾とは大きく異なる描写が多く面白い。
台湾の歴史を大まかに学習することに役立った。 -
10年前に2度目の台湾旅行から帰ってきて、しばらくしてからこの本を買った。そして2015年5月に3度目の台湾となる旅を計画した。妻や子とではなく母と二人で行くことを提案し、意外にもスムーズに諸手配を終えることができた。出発の前日までに本書を再読を試みた。現地で起こるであろう様子を、あれこれ思い浮かべながらページを捲るのは楽しいものである。また、現地では限られた時間でのガイドしか無いだろうから、若干でも背景知識の足しになればと思いもあった。哲人李登輝元総統や八田與一の人柄にふれることができ、KANOの舞台となった嘉義のことも取り上げられ、有意義だった。本質をコンパクトな語句で抉る司馬節も味わえた。
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14/8/13読了
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司馬作品の主要な歴史小説は読んだが「街道をゆく」シリーズは初めて。台湾出張前の“予習”のつもりで読んだ。
「老台北」「児玉・後藤・新渡戸」「客家の人たち」「八田興一」など、司馬史観と個人への関心を感じながら、台湾を学ぶことができた。
紀行最後の「当然なことだが、この島のぬしは、この島を生死の地としてきた無数の百姓(ひゃくせい)たちなのである」(p367)には共感。
「たれよりも、大陸中国のの人たちに読んでもらいたい」(p377)という巻末の李登輝/司馬遼太郎対談では、政治家として、人間として大きい李総統を知った。 -
中国大陸と海峡を挟む形で位置する台湾。
台湾を歴代中国王朝がどのように対処してきたことも分かった。
明治維新後、日本という国が台湾とかかわった。
明治政府は、実力以上の統治をおこなったと司馬さんはいう。
李登輝さんとのかかわりが面白い。
他の国を植民地化するという不幸な歴史があったが、日本時代を懐かしむ固有の台湾の人々とのかかわりが温かい気持ちで書かれていて司馬さんと李登輝さんとの触れ合いが気持ちのいい紀行文でした。 -
国名すら覚束ない地で「国家とはなにか」に想いを巡らす。訪問は1993年で、初の本島人総統「李 登輝」政権が成立して5年後。生みの苦しみを目の当たりにしながら、この国の明るい未来を願う著者の想いがよく伝わってくる。面白い。
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なかなか頭に入りにくい文章がつながる。
登場人物が多いからである。
司馬遼太郎なりの人生美学があり、
その視点で、その人物像を描く。
台湾は、やはり日本によって、
いまの基本をつくられたところがあり、
日本的な慣例が残されている。
日本で教育を受けた人、日本兵として出兵した人、
台湾で日本の教育を受けた人など、
その人物像を中心に台湾を描いている。
また、外省人と台湾人と山地人などの複雑な関係がある。
明治初期の琉球人の殺害事件
日本領時代は、明治28年(1895年)からはじまる。
1945年に終了する。50年間支配をしていた。
高雄 もとは山地人の地名だった。
清朝以前、ここにあった山地人の集落
タアカオ社からきている。
打狗 <タアカオ>
大正9年 (1920)高雄に改めた。
第2次世界大戦後、高雄 カオシュンとよばれた。
柯旗化
この島で生まれ
この島で育ったボクだけど
ある朝目が覚めたら
地図の色が変わっていて
自由を失っていた。
2.28事件 陳義 数万人が殺される。
蒋介石、蒋経国
1988年蒋経国が死ぬことにより、李登輝が総統になる。
李登輝
1923年生まれ 旧制台北高校、京都帝国大学、台湾大学、
1984年 副総統 -
自分が読んだ街道を行くシリーズの中では一番だと思う。
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テスト
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2012.08.29 読了
台湾旅行を機に読む。
司馬さんが紀行に行って経験したことでさえすでに歴史になっているけれども、自分たちが行って感じた空気感を再度味わわせてくれたような気がする。
今後、旅行前などに、目的地に関する本シリーズがあるならぜひ押さえておきたいと思った。 -
いーねー。台湾紀行。
20年前に訪れたきりだが、当時でもまだ日本占領時代の影響は色濃いままだったみたいだし、その後の国民党政権の暗い時代から抜け出たばかりだった模様。
慈愛に満ちた生き生きとした描写から、そんな台湾に生きた人々の息遣いが聞こえるようで、清々しい。 -
以前、台湾に行ったが、その前に読むべきだった。台湾の歴史や文化が分かりやすく書かれている。李登輝との対談は面白い。
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日本と台湾との深い関係がよく分かるよい入門書。旅行に行く前に読んでおくとより楽しめる。
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ずっと読みたかったものの、何故か入手に時間がかかってしまった。今更ながら著者の文章の上手さに唸ってしまった。彼は書く対象毎に本当に入れ込んでいるんだなと思える一冊でした。
今現在台湾に居住する者として、やはり少し時代の違いを感じます。この頃はこの頃で、今とは違う良さがあったんだろうなぁと勝手に思っています。また時間をおいて読んでみよう。 -
李登輝のエピソードがおもしろかった。彼に興味を持った。
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よいです
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本来、流民の国だったものが、ここまでの社会を創った例ははアメリカ以外、世界史にないのではないか。
孫文の愉快さのひとつは、中国古典の教養に乏しかったこれである。このことも重厚過ぎる古典文明から彼を自由にしていた。
19世紀末まで、流民、棄民の化外の地だった台湾が今日繁栄していて、大陸中国が必ずしもうまくゆかないのは、ひとつにはサイズの問題がある。 -
これを読んでから台湾(というか台北)を旅行したが、台湾に対する知識や様々な角度からの見方が備わったため、結果的に旅行をより楽しめた。
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台湾にて。その場にいる楽しみ。
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や、やっと読み終えた・・・
だらだら3週間くらいかけて読破。
でも読みやすい本でしたー。 -
田中準造さんのエピソードのくだりは、何度読んでも自分まで泣いてしまう。
歴史は人が作るもの。 -
私の無知を思い知らされました。。。高校時代に学んだ世界史は大嫌いだったからな〜