街道をゆく 41 (朝日文芸文庫 し 1-45)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022641588

感想・レビュー・書評

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  • (2020/10/28読了)

    「街道をゆく」シリーズ、その41。驚くほど面白かった。

    まほろばとは、「素晴らしい場所」「住みやすい場所」という意味だそうだ。今回の話題の中心である東奥圏は、「やませ」に代表されるように、農耕に軸足を置く限りなかなか生活環境が厳しい地域柄である。その中でなぜまほろばと呼ぶか?・・・という説明が最初にある。

    それは、農耕社会になったから苦しいんであって、狩猟採集の時代にはまたとない環境であった。北方文化圏との関連では立地も非常にいい。農耕化や近代化の功罪を思う。という内容なのである。初手から深謀がある。

    さて、今回訪れるのは青森県、津軽や南部地域。

    津軽と南部の軋轢、蠣崎・松前藩の来歴、オホーツク文化の痕跡、太宰治や棟方志功、「会津」の痕跡、りんご作りの苦悩(落果の涙)・・・などが綴られる。

    一時期弘前住みだったことがあるが、ここにあるような深いところは知らなかったし、感じたこともなかった。この本を読んで改めて思えば、もったいないことである。

  • ▼「街道をゆく41・北のまほろば」司馬遼太郎。1995、週刊朝日の連載。司馬遼太郎の旅・歴史・エトセトラエッセイ。司馬さんは1996年2月に他界しているので、かなり晩年ですね。旅したのは青森県です。

    ▼晩年の「街道をゆく」の、担当編集者だった方が書いた「街道をついてゆく」という「司馬遼太郎の思い出エッセイ」があり。それをBOOKOFFで気軽に買って読んだらなかなか面白く。その中で「北のまほろば」の旅(1994年だったらしい)についての思い出の章があり、それを楽しむために事前に「北のまほろば」を読もうと、中断。

    ▼「北のまほろば」を読み始めたら、かなり太宰治の「津軽」をベースとした記述が多いことが分かり。「津軽」も「いつか読みたい積読」に入っていたので、「北のまほろば」を楽しむためにはまずは、と中断して「津軽」を読み。それを経て「北のまほろば」に突入。

    ▼面白かった。「津軽」を事前に読んで大正解。ほかの東北の巻と同じですが、「津軽」をなぞりつつ、

    ※東北・青森→貧しいくらいイメージ→飢饉が多かった→弥生時代に普及した稲作偏重の価値観のせいである→縄文的ライフスタイルならば、実は大変に豊かな風土→まほろばである。

    というような話を、考古学的な人との邂逅などの現地感を交えて展開しつつ、

    ※「津軽」と「南部」

    ※再幕末~明治初期に「流されてきた」会津藩

    ※八甲田山事件

    ※棟方志功

    ※石坂洋二郎など(太宰も含めて)青森出身文学者話

    ※マタギと会う

    などなど多彩、充実、そして愛が溢れる本でした。

    やはりこのシリーズは、これからも再読するだろうから電子書籍で買って正解。

  • 勝手に「北海道編」と思い込んで後回しにしていたら、思いっきり本州であった…。

    そのイントロは本シリーズの第3巻までさかのぼることになる。南部、津軽と青森県の関係を語ってくれるその序章があったればこそ本巻の咀嚼スピードも上がるのであるが、そこにさらについ最近読了したばかりの33巻「会津のみち」が加わる事によって短命だった斗南藩の悲哀の部分も瞬時に消化されてくるような仕組みになっている。よくできている。

    恐山の下りにおいてはここ数年に鑑賞した寺山修司作品、中でも「田園に死す」のシーンが想い起こされた。寺山自身が青森県出身であり、自分の中での青森人サンプルが少ないことも手伝って、シバさんの形容する「青森人とは」という部分に彼という人物を透かしてみるような、そんな気持ちで読んでいたのもあとになって思うと興味深い。

    ということでペアリング考としては既に述べたように本シリーズ3巻「陸奥のみち」と33巻「白河・会津のみち」を。そして十三湖の下りで語られる江戸日本海側商品経済感を実感をもって味わうためには「菜の花の沖」も必須かな。そしてなによりも司馬版考古学を味わうためには38巻「オホーツク街道」もセットとしては欠かせない。あ、この観点からいえば「MASTERキートン」も入れておこう(笑)

  • 青森県の民俗・文化についてひととおり書いてあると思う。
    地理がわからないとなかなか読み進められないと思うけれども、県外の人にぜひ読んでほしいと思う。
    ふとしたときにパラパラして、目についたキーワードを深堀する、といった遊びが楽しそう。

    個人的には柳宗悦と棟方志功のエピソードが新しかった。
    板極道を読もうと思った。

  • 94年青森県訪問中に三内丸山遺跡発見の大ニュース、北の大地が豊かであった説は実証された。豊穣の縄文。著者に韓国の学者が「日本には奇人変人が多く居たのだけは羨ましい」と言ったとか。帝大学長を辞した狩野亨吉の発見した江戸時代の安藤昌益は博識だが悪文。「狩野は勘が良かったのでしょう」学問は勘が良くないと成り立たない。「文字を作る、身分差別の始めなり」。司馬は新聞記者時代、棟方志功にインタビューした。天才にだけ許される独自の造語…。「絵描きは下手なだけ仏様が手助けしてくださる」その版画を海外の美術館が争って求めた

  • 今で言う青森への何というのか憧憬なんでしょうか、愛たっぷりの司馬遼節炸裂。まぁこう書かれると、好きになる人も多いでしょう。
    しかし小説の時は、結構見たことあるのか?みたくの断定的人物評が多かったですが、色々関与者が多いからっすかね、そういう面が影を潜めとると今更ながら多少物足りないかな、この紀行シリーズは。

  • 14/9/27読了

  • 三内丸山遺跡の見学直後に購入。
    縄文時代、今よりも気温が高く。今よりも豊穣の海だった陸奥湾。木の実も豊富だった。稲作に頼る前の豊かな恵みの北のまほろばが浮かび上がる。北前船は文化の伝播に今の高速道路網や新幹線の役割を果たしていたであろう。
    現代科学の進歩がトータルの幸福感と比例しないように、稲作の普及が多くの人々に価値わ
    もたらしたばかりでは無いのかもしれない。

  • 青森県を周遊。「まほろば」とは素晴らしい場所という意味の古語。この地が弥生農耕に乗り遅れたのは、縄文採集生活で豊かに食っていけたから。ならばわざわざ地面を耕す必要もない。江戸時代以降近代でもドラマ多し。シリーズ中で一番面白い。

  • このシリーズを読むきっかけとなったシリーズ。元々は仕事で読む必要があったのですが、読んだあとはなんだか「賢く」なった気分。最初は読みなれるのに時間が掛かりましたが、興味のあるシリーズから読んでいくとタメになると思います。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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