彼女(たち)について私の知っている二、三の事柄 (朝日文庫)

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  • 朝日新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022642967

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  • 『小春日和』の10年後の続編。学生だった桃子と花子もいまや三十路。相変わらず紅梅荘に住み続けて定職を持たずバイト生活の桃子と、いったんは紅梅荘を出て、ちゃんと編集者として働いてはいるけれどまた出戻ってきた花子。さらに隣の部屋に住む岡崎さんという元愛人のおばさん(変な人だけど良い人)と、お馴染み作家の目白のおばさん、桃子のバイト先の塾の新入り小林くんなどが一緒にお酒を飲みつつうだうだと喋っているだけの相変わらずの日常。

    大きな事件といえば、桃子の弟の結婚(この相手の藤巻さんという女性もなかなか癖が強い)、桃子の母の再婚くらいで、桃子や花子自身にはとくに何も起こらず。三十路になっても一種のモラトリアムというか、あまり成長の見られない桃子は、結局なんやかんやで本当の意味での金銭的苦労も知らないプチブルだし(バイト生活で家賃7万はけして安くないはずだし、誕生日には父も母もそれぞれ現金を振り込んでくれる)タラレバ娘たちのように結婚、恋愛、良い男!と騒がない代わりに読書や映画の趣味にしか興味がなく、そういう部分は他人事ではないけれど、ちょっとは成長しなよーとも思う(苦笑)

    とはいえとくに生産性のない、でもたまに哲学的な彼女たちの果てしない雑談を聞いているのはとても楽しい。最後にちょこっとだけアレクが出てきたのも懐かしくて嬉しかった。

  • 『小春日和』の十年後、相も変わらず目白の紅梅荘に住む桃子と、花子と小説家のおばさんの日常を綴ったものだが、表題からも明らかなように彼らの会話と関心の端々にはゴダールなんかも鏤められ、あるいはフローベールでも『ボヴァリー夫人』ではなくて、ちょっとネエチャン騙しの『感情教育』だったりと、彼らに言わせれば「プチブル教養主義」的な、いたって「閉じられた」小説世界が展開する。彼らの周辺を含めた世間話につきあっているようでもあるのだが、これが何とも面白くて、時々は釣り込まれて笑ってしまったりもするのだった。

  • ちゃんと年代を調べずに、タイトルだけで、結構初期のものだろうと当て込んでしまったのですが、もうそのへんからして金井美恵子に怒られるだろうなあと思わざるを得ませんでした。

    えー、いつもながら読みながらの感想を少し。

    すごい金井美恵子ゴダールの『ヌーベルヴァーグ』見たのか…!私はあれはアランドロンが酷い役で出てるのと、大学のAV図書室みたいので見てて落ち着かなかったのとかで結局途中で挫折したままだ…。やるな金井美恵子。

    なんなの、ゴダールに出て来た言葉を使って、庭と散文と結婚は全て人工的なもので、どれもに手入れは不可欠である、なんて、実際大した意見ではないかもしれないけれど、そういうふうに一見かけ離れたものたちをささっと繋ぎ合わせて、ぽんと提示してくれる感じ、美味しすぎてよだれでまくり。

    自分の頭が弱いからこういう自然らしい頭の使い方をされるとコロっといっちゃうんだよな…。しかもそれを小説の中でメタッぽく使ってるのも美味しすぎる…。ぐぐぐぐぐ。
    そういう、文学的にくだらないことを考えられるっていいよなああああああ。

    いやしかし自分の小説が入試に使われたのを、そのまま引用して小説に組み込んじゃうのも、楽しかったなー。

    あれだな、ゴダール好きとか言う人は結構多いけど、実際に言及したり意見を述べたり出来るだけの(度胸のある、あるいは不遜な)人は少なくてつまらない。本当は、難しそうなものでも、どんどん料理してくれたほうが楽しいんだ。馬鹿にされたって、批判されたって、傍観してるよりは面白い。

    などとつぶやきながら読んでいたのですが、このような発想はさらに金井美恵子によって語られることになりました。
    「「気狂いピエロ」に出てくるのがフリッツラングでしょ」」とと身に付いていない知識をなんとなくオシャレで開陳してくる子に対し、「いやそれは「軽蔑」だろ」と冷たい視線を向けるところとか、後にいろいろとうんちくを言ってくる「小林」という人物は、彼女たちと食事をしながら、「聖パウロ」がどのような文脈の中で働かざるもの食うべからずと言ったのか?と尋ねられ、何となく自分の知っていることを断片的に話しはじめて、「それで、なんでなの?」と突っ込まれて、いやーそこは知らないんですよね、という回答に「知らないことを語るべからず」と言われてしまう。

    金井美恵子の膨大な知識は、開陳されるときには必ず(多分)必要にかられて、身に付いたものとして語られるのであって、それらはすでに知識というものを離れて、生活感のある知的体験になっているというか…(「あっ」)。
    彼女と渡り合うのは、そうとうな力が必要であることは言うまでもなく、読んでいるからこそ蚊帳の外から少しハラハラしつつ「知らないことについては黙ってる」的なスタンスで知的冒険を楽しませてもらえるのだけど、こういう小説、(小説だよなあ、いちおう)本当に贅沢品。しかし、「金井美恵子」という言葉は、お金を出して本を買って適当に読めば、金井美恵子体験OKというような、ルイ・ヴィトンのようなファッションで使われてはいけないのである、雰囲気を出す小道具として使われてはいけないのだ、決して決して決して。
    恥をさらし批判される勇気を持って初めて、金井美恵子について思うこと、を述べることが許される、毅然とした贅沢品なのである。(というか知識や芸術というものがそうであると思うのだけれど)

    それから、この文庫の解説がとってもよかった。にぶやたかし、という男、面白いし親切だ。

    何度でも帰って来れる。

  • 【読み途中】以前に開いたときには、文体になじめなくて、読み進められなかったのだけど、今回はなぜか、笑いながらたのしく読んでいる。本はこういうことがあるから面白いなぁ。
    読み終わりたくないような、読み終わって、このシリーズや、著者の他の本にも早く移りたいような。

  • 三十で、定職につかず、ぶらぶら、本読んで、映画みて、酒飲んで、という生活。

  • 金井さんは、改行がほとんどない特徴のある文体なのだけど、テンポが良くて文体が好きな作家の一人。

    だけどあまりの余白のなさに(最近の本と比べると)、読み始めるにはチョイと勇気もいる。

    特に大事件が起きるわけでもないのだが、言葉の言い回しとか映画や本からの引用や流行りが散りばめられていたりするところがいいのかな。
    紅梅荘での生活はなかなか魅力的だったりする。

  • 恐ろしく知的で饒舌

  • 続編とはいえ同時進行的だと思わされる流麗さ、というよりも一貫性のある独特の文章術にあてられてしまいそうな毒気。

  • 小春日和の続編。フェイク人生論的な、このたまらないいい加減な世界を表出してしまう著者のスタイルにはただ打ちのめされる。

  • 金井さんの小説で、これが一番お気に入り。テンポよく、痛快。センテンスがきれいなのはいつもどおり。そして知識に脱帽。

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著者プロフィール

金井美恵子(1947.11.3~) 小説家。高崎市生まれ。1967年、19歳の時に「愛の生活」が太宰治賞候補作となり、作家デビュー。翌年、現代詩手帖賞受賞。小説、エッセイ、評論など刺激的で旺盛な執筆活動を続ける。小説に『プラトン的恋愛』(泉鏡花賞)、『タマや』(女流文学賞)、『兎』、『岸辺のない海』、『文章教室』、『恋愛太平記』、『柔らかい土をふんで、』『噂の娘』、『ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ』、『お勝手太平記』など多数。また第一エッセイ集『夜になっても遊びつづけろ』より『目白雑録』シリーズまで、エッセイ集も多数刊行している。

「2015年 『エオンタ/自然の子供 金井美恵子自選短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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