おはなしの知恵 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞社
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レビュー : 1
  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022643216

感想・レビュー・書評

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  • 河合隼雄さんの「おはなしの知恵」という本を読みました。
    表紙が妙にかわいい「かちかち山」の絵ですが(笑)、よく考えたら「かちかち山」って残酷な話ですよね。うさぎがたぬきにした仕打ちは、現実に考えると酷いものです(笑)。

    でも、物語ではそれがかえって重要・・というのが、河合先生の論でした。 この本の中に紹介されている「おはなし」は、日本の昔話から、あまり馴染みのないアイヌやケルトの民話、そしてヨーロッパの童話まで幅広く取り上げられていました。

    でも、けっこうどこの地域でも、「おはなし」には「残酷さ」があるんですよね。
    残酷な話を子供に聞かせるのはよくない・・とされる説もありますが、この本ではむしろ逆です。
    残酷な物語を知ることは、「人間にはこのような残酷な闇の部分がある」ということを認識させるためなのだと。
    一番恐ろしいのは、「自分は正しい、自分には悪いところなどない」と思い込むことだと。人なら誰しもが持っている暗い影の部分に気付かないことこそ問題なのだというのは、妙に納得です。
    自分が一番正しいと信じている人間は怖いです。

    また象徴的な意味として、子供の自立のための「おはなし」としてある「父殺し」「母殺し」の物語は世界各地に存在しています。
    人間はこのような「おはなし」を通して、親への反抗心を表に現すことの代わりとしていた。でも、今は「おはなし」「物語」が上手く機能しなくなっている。だから、本来物語が代わりを果たしていたものが、今は現実の事件などになって表に出てきてしまっているのだ・・と。この指摘は鋭いなと思いました。

    人間には必ず負の感情はあります。その捌け口はどこかに必要で。その役割が「おはなし」だった。
    人はいつから「おはなし」を失ってしまったのか・・・考えさせられました。

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著者プロフィール

河合 隼雄(かわい はやお)
1928年6月23日 - 2007年7月19日
兵庫県多紀郡篠山町(現・篠山市)出身。京都大学名誉教授、国際日本文化研究センター名誉教授。文化功労者。元文化庁長官。1952年京都大学理学部数学科卒業後、京都大学大学院で心理学を学びつつ、数学の高校教諭を兼業した。
天理大学で助教授時代にユング研究所に滞在し、ユング派分析家の資格を取得。日本における分析心理学の普及と実践に邁進。箱庭療法導入者としても知られる。欧米の心理療法を日本文化に根ざす仕方で導入を試みており、日本論・日本文化論の著作も多い。
主な受賞歴に、1982年『昔話と日本人の心』で大佛次郎賞、1988年『明恵 夢を生きる』で新潮学芸賞、1992年日本心理臨床学会賞受賞、1996年NHK放送文化賞をそれぞれ受賞。1995年紫綬褒章、1998年朝日賞、2000年文化功労者顕彰。
なお2012年に一般財団法人河合隼雄財団が設立されており、そこで本人の名を冠した「河合隼雄物語賞・学芸賞」が設けられている。

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