「自分の木」の下で (朝日文庫)

  • 朝日新聞社
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本棚登録 : 200
レビュー : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022643407

作品紹介・あらすじ

なぜ子供は学校に行かなくてはいけない?子供たちの素朴な疑問に、ノーベル賞作家はやさしく、深く、思い出もこめて答える。16のメッセージと32点のカラーイラストが美しくひびきあい、心にとどまる感動のエッセイ。「子供も『難しい言葉』を自分のものにする」を新たに加えた待望の文庫版登場。

感想・レビュー・書評

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  • 先日、好きな河合隼雄さんの本をながめていると、大江健三郎さんのこのエッセイ本を熱く紹介していました。少年少女向けの本なので、とても優しく(易しく)読みやすい。先の大戦のさなかに育った大江さんの幼少のころの話、両親や祖母たちの話、大江ゆかりさんの挿し絵も素晴らしい♪

    少し紹介すると、「シンガポールのゴムマリ」という話は、幼い大江さんとお父さんの日常会話が紹介されています。ゴムマリで遊びたくてうずうずし、それが欲しくてたまらない、なんとも子どもらしい健三郎くん。そんなほのぼのとした会話の中にも、なにやらピリッとした緊張感が漂っています。いや~いいですね。

    『……日本の兵隊さんは勇かんで強く、シンガポールを守るイギリスの軍隊を破られた。そして、日本の兵隊さんは優しく、ゴムマリを集めて送って来てくださったのだ……。
     父は仕事の手を休めると、私をジロリと見ました。そしてこういうことを言ったのです。「どこかの国の勇かんで強い兵隊が、この森の中まで攻めあがってきて(父は裏座敷の、川に面した軒に母が掛け渡している、干し柿の列を見上げました)、そのどこかの国の兵隊も優しくて、干し柿を集めて自分の国の子どもらに送ってしまうとしたら……きみはどう感じるかね?』

    そのゴムマリを集めるために、とめどなく涙を流さなければならなかったアジア・南方戦地の人々、そしてその干し柿は、いまだに涙を流し続けている沖縄の人々から取り上げた思い出深い郷土であり、豊かな青い海なのでしょう……そんなことを考えたりします。

    大江さんの子どもたちに向ける目はとびきり優しく、語りかけるように書いています。本の読み方や勉強の仕方だけでなく、この国のあり方、教育のこと、戦争や暴力といった、なかば大人はくらくらして考えることを放棄してしまいそうな難題についても、忍耐強く愛情こめて書いています。この本を読んでいると、そのひたむきさにハッとし、優しさにうるっとし、明るさに元気をもらい……これはまずもって大人に読んで欲しいものだな~とつよく感じました。

    「……たいていの人にとっては、子どもの時から老人になるまで、自分のなかの「人間」は繋がっている、続いている、と考えていいと思います。そしてそれは自分ひとりのなかの「人間」が、日本人の、そして人類全体の歴史に繋がっている、ということですね」

    自分の中にあるかけがえのない自分と、自分の中に存在する自分という他者を俯瞰するまなざし、そして壮大な時空の繋がりのなかを奔放に飛びまわる詩情……大江さんはまさに世界を股にかけた芸術家ですね♪

  • 何年か前、たまたま入った古い食堂に置いてあり、定食が出てくるまで何気なく手に取った本。そのときは読み終えぬまま店をあとにしたが、それからなぜか忘れ難くいつまでも心に残っていて、図書館でたまたま見つけ出して旧友に再会した気分で読み進める。書いてあることは、簡単な言葉には違いない。でも自分のこころに完全に腑に落ちるまで時間がかかる言葉だ。本当に難しい問題はカッコに入れて待ってみる、そうすればいつのまにか問題となくなっているかもしれない。読み終えて、すべてが今の自分に必要なことばとわかって、救われた気分だ。

  • 2017年9月10日に紹介されました!

  • どんな人になりたかったか?

  • 大江健三郎、ちゃんと読んでみようと思いました。

  • 古本で購入して読み。
    前の持ち主のラインマーカーが引いてあったが、結構気になるところが被ってて少しうれしい気持ちになる。

    米原万里がエッセイで紹介してたり、伊集院光もエッセイで紹介してたりしたので購入したのだった。たまたま子どもの日帰り手術の日に待合室でそわそわした気持ちでこの本を読んだ。斜め読みだったのだけど、子どもについての姿勢みたいなものをなんとなく見つめなおしたりした。


    ・私は、あなたが死なないと思います。死なないようにねがっています。 もしあなたが死んでも、私がもう一度、産んであげるから、大丈夫。 私から生まれて、あなたがいままで見たり聞いたりしたこと、読んだこと、自分でしてきたこと、それを全部新しいあなたに話してあげます。(p15)
     →これは、文章中では触れられなかったけど、ものすごく深い愛情なんではないかと思った。


    ・自分が本当によい本だと思ったなら、しばらく時を置いては繰り返し読んでください。そのたびごとに、色の違う鉛筆で線を引いたり書き込みをしたりしておくと役に立ちます。(p27)

    ・エラボレーションelaboration(p31)と言う言葉について。推敲でも添削でもなく。辞書によると「入念に作り上げること」。文章内では、「他の人の文章でも、自分の文章についてやるように磨き上げていく、しっかりしたものに丹念に作り上げてゆく」とな。

    ・柳田國男という学者が、先生から教えられたことをそのまままねるような勉強の仕方をマナブ――マネブという古い言葉と同じ――、それを自分で活用することもできるようにするのがオボエル――自転車の乗り方をオボエルというでしょう――、そして教えられなくても自分で判断できることをサトルと分けました。マナブからオボエルに進まなくてはならないし、できればサトルようになりたい、といっています。(p113)
     →まなぶ、まねぶ、のあたりは小学生の時に担任の先生から聞いて30代半ばの今でも覚えてる。柳田國男の言葉だったんだなあ。続きがあったとは。

    ・子どもにとって、もう取り返しがつかない、ということはない。いつも、なんとか取り返すことができる、と言うのは、人間の世界の「原則」なのです。(p199)

    ・――もう取り返しがつかないことをしなければならない、と思いつめたら、その時、「ある時間、待ってみる力」をふるい起こすように!(p205)

  • 【2015年交換会】子どもと学ぶさちまる⇒TSUNAMI③
    中3の娘のために頂きました。日頃子どもたちと向き合っているさちまるさんによる中3女子必読書?
    ありがとうございました。

  • 【配置場所】特集コーナー【請求記号】914.6||O【資料ID】91041586

  • 2014年21冊目「「自分の木」の下で」読了。

    初めての大江健三郎作品。国語の先生がお薦めしていたので読んでみた。こども向けに書かれたということだが、文章は奥が深く、何度も読まないときっと(少なくとも私は)理解できない。しかし、それでも著者の言いたいことがじわじわと伝わってくる。

    私も、自分の木の下でこどもの自分と出会い、「どうして生きてきたのですか?」と聞かれたら、それに対し、しっかり答えられるような生き方をしたい。

    印象に残ったのは、(「私の勉強のやり方」という章の)

    「…そして幾年かたって、実際にその本を読み、思っていたとおり良い本だと、自分で確かめることができた時は嬉しかったものです。野球で、ジャストミートということをいうでしょう?本と、それを読む自分とのジャストミートということがあるのです。本を読む能力と??成長期では、年齢とおおいに関係します??、その本のための準備の読書、そしてそこまで生きてくるうえでの経験が、それを作り出してくれるのです。あなた方が、ある本とジャストミートするためには、それを読むことを急ぎすぎてはなりません。しかも、いつも自分の知らない本に目を光らせていて、これは良い本らしいと思ったら、まず、その実物を本屋なり図書館なりで、見ておくことです。余分のお金があったら、買っておくのがいちばんいい。そしてずっと忘れないでいて、ある日、その本に向かってバッター・ボックスに入って行くのです。」

    という部分。いつか大江作品がジャストミートできるくらい成長できていたら…なんてことを考えてしまった。言葉は難しいが奥が深い。そんな気持ちにさせてくれた一冊。

  • 大江健三郎さんが初めて子供向けに書いた本。「言葉を伝えていきたい」という大江さんの想いが切々と伝わってきました。所々、難解なところもありましたが、大江さんの「難しい言葉に対する想い」も理解できたし、ご自身の子供の頃の話、知的な障害を持っている息子さんの話など、大江さんがこれまでの人生で感じてこられたことを知って、私自身の世界がものすごく広がった気がします。奥様の大江ゆかりさんが描いたやさしい雰囲気の挿絵も素敵です。

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