繋がれた明日 (朝日文庫)

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  • 朝日新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022643599

感想・レビュー・書評

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  • 殺人事件を起こし、6年後仮釈放となった中道隆太。刺した相手の方から絡んできたこと、手を出してきたことをこの6年ずっと恨んできた。
    自分の言うことを誰も信じてはくれない。
    母と妹にも迷惑はかけられないと、紹介された仕事を黙々とこなし独り暮らしを始めたが、「この男は人殺しです」と書かれたビラが妹の職場や、アパートのポストにまかれるようになる。
    事件当時、未成年だった隆太の名前は報道されることはなかった為、事件の詳細を知る者の嫌がらせだと考える。
    俺から手を出した訳ではないのに、自分だけが悪いのか?妹まで退職に追いやった、ビラの人物を探しだすうちに、過去の事件の関係者のその後が見えてくる。
    本当の更正とは何か?を問う作品だった。
    事件が起きる度に、被害者家族だけではなく加害者家族のケアも必要なのではと思う。
    この時代、瞬く間に人物を特定に至り、その情報は拡散され一生付きまとう。
    中道隆太が最後の最後で見せた涙は嘘ではないと信じたい。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    この男は人殺しです―。仮釈放となった中道隆太を待ち受けていた悪意に満ちた中傷ビラ。いったい誰が何の目的でこんな仕打ちをするのか?孤独な犯人探しを始めた隆太の前には巨大な“障壁”が立ちはだかった…。殺人を犯した者の“罪と罰”の意味を問うサスペンス巨編

  • 2018.01.21読了
    哀しく暗い内容だった。
    罪を犯した少年達が塀の中よりむしろ塀の外で苦しむ現実があるのだと考えさせられた。
    全員が全員、隆太のように思慮し、耐え、悩み抜くというわけではないだろうし、過去現在の友人関係、保護司の影響、待ち受ける家族環境も彼らの行く先の明暗を分けるだろう。

    また近年の事件に多く見られるサイコパス的な犯罪者はどう更生のしようがあるのか?も疑問だ

    この作品の最後で隆太の人生に光が射したことが心の救いとなったが、犯罪者の更生の難しさを実感した

  • 間違いなく力作です。読んでいてずっと胸が苦しかった。
    殺人を犯してしまった中道隆太。仮釈放になった彼に色々な方向から波が覆いかぶせる。
    最後の最後で涙。

  • 前科者が服役してからのお話。

  • 人は一人で生きる事は出来ない。
    周りの助けがあってこそ、
    生きてゆく事が出来る。
    1歩1歩、ゆっくり、大切に生きてゆきたい。

  •  好きな女にちょっかいをかけてきた男に警告したところ、殴られ、ついカッとなってしまって持っていたナイフで刺して相手を殺してしまった中道隆太。先に手を出したのは相手の男だったが、ナイフを持ち歩いていたことから殺意があったとみなされ、懲役6年の実刑に受けた。真面目に服役し、仮釈放となって出てきた中道だったが、心を入れ替えて新しい生活を踏み出そうとするも、過去を暴露した中傷ビラが近所や職場にまかれてしまう。

     「奇跡の人」を読んだ時にも似たような感想を持った気がするのだが、主人公が全てにおいていきすぎ、関わりすぎ、我慢しなさすぎなのが気になるし、それによって招く結果がどうしても自業自得に思えてしまう。妹の元カレに会いに行く必要がどこにあるの?中傷ビラの犯人探しはあなたの仕事なの?1人で被害者宅へ行くことがどれだけ重大なことなのかなぜわからないの?その状況で、昔自分に不利な証言をした目撃者に会いに行くことがどれだけ危険なことか理解できないの? 彼は刑務所を出てから、とても良い保護司に出会い、就職先や同僚にも恵まれ、本気で心配してくれる友達や母親もいるのにどうしてそういう行動に出るのか、理解に苦しむこと多々。そういう人だから、刑務所に入ることになったんでしょと言われてしまえばそれまでなのだけど。なんだかなぁ。一度犯罪を犯した人間に対する理不尽な扱いにはたしかに同情する部分も多かったが、主人公が全然好きになれずにイラついてしょうがなかった。テーマは興味深かったし、確かに読み進んだけれど。

  • Peace

  • この話は、主人公が19歳の時に人を殺めてしまい、刑務所で刑期を終えて仮出所したところよりはじまる。

    彼はボロボロのアパートを借り小さな工場で働きだすが、「この男は人殺しです」と書かれたビラがあちこちで配られ、それにより彼や家族が再び傷つく・・。



    「自分は殺意を持っていたわけじゃない」

    そう訴えてみたところで、「殺人」という罪はもう救いようのないもの。

    自分はもとより、家族の大きな犠牲を伴う。



    高野和明の「13階段」でも同じように罪を犯した主人公がいるが、殺された遺族への何千万もの賠償金を主人公の家族が背負うことが描かれている。

    自分の息子がもしも罪を犯したら・・そんなことを想像するだけでもつらすぎる。



    また、逆の立場だったらどうだろうか。

    自分の息子にも悪いところがあったとしても、殺された相手にわく憎しみは果てしないはず。

    その犯人が6〜7年で罪をつぐなったとし、社会復帰する・・。

    これを黙って見過ごせるだろうか?

    罪はつぐなったと、許せるはずもない。



    単にドラマ化され、結末を迎え・・「へぇ〜」っと視聴者(読者)感想を持つだけの単純なものではない。

    肉親が罪を犯した者、肉親を殺された者、それぞれに何とも言い切れぬ身につまされる思いがする。



    しかし、罪を犯した者にも「明日」はある。

    過ちを犯したとしても、改悛の情を持ち、罪を心から償うことからはじめるしかない。

    それが人生の明日に繋がっていく・・そんなテーマだったので、多少ほっとした。


  • 些細なことがきかっけで殺人をおかしてしまった主人公が刑務所から出てからの生活。被害者の家族の気持ちも分かるような気がするし、加害者の家族の気持ちもすごくわかる。でも主人公がせっかくがんばろうとしてるんだから邪魔してほしくないな〜と思ったり。でも周りが良い人達ばかりでかなり恵まれている。

著者プロフィール

真保裕一(しんぽ・ゆういち)
1961年東京都生まれ。91年に『連鎖』で江戸川乱歩賞を受賞。96年に『ホワイトアウト』で吉川英治文学新人賞、97年に『奪取』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞長編部門、2006年『灰色の北壁』で新田次郎賞を受賞。他の書著に『アマルフィ』『天使の報酬』『アンダルシア』の「外交官シリーズ」や『デパートへ行こう!』『ローカル線で行こう!』『遊園地に行こう!』『オリンピックへ行こう!』の「行こう!シリーズ」、『ダーク・ブルー』『シークレット・エクスプレス』『真・慶安太平記』などがある。


「2022年 『暗闇のアリア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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