ぼくたち、Hを勉強しています (朝日文庫 か 37-1)

著者 : 鹿島茂 井上章一

• 朝日新聞出版 (2006年8月1日発売)

感想・レビュー・書評

[キじばと。。さんの感想 · 2015年11月6日]

鹿島茂、井上章一、さらに後半に参加する原武史のインテリおやじ三人が、性についての薀蓄を傾けている本です。

これまで男たちは、自分が「所有」しているものによって女の気を引こうとしてきました。しかし鹿島は、このことが男のおおいなる錯覚だと明快にいいきります。その主張をサポートするために引きあいに出される、東西にわたる性の歴史についての博識には、舌を巻くほかありません。

これに対して井上は、男が所有するものに女がなびくという現実はいまもつづいているけれども、ただ学歴の価値だけが著しく低下したと主張します。井上はこの事実を嘆いて、「モテるおっさん」になるための条件を分析しています。

さらに鉄道史研究の著書がある原が途中からくわわって、「痴漢」という行為がどのように受け止められてきたかという、社会意識の歴史的変遷を考察しています。

才能の無駄遣いなのかどうなのか、とにかくだれよりも著者たち自身がたのしんでいることはよくわかりました。

個人的には、現代についての分析が弱いことが残念でした。たとえば鹿島は、女優の藤原紀香が広く人気を集めた理由を、彼女のアニメ的なルックスに求めています。大きなタイム・スパンの中で考えればそういう見かたもできるのかもしれないと感心させられたものの、もうすこし倍率の高いレンズをつかった分析と、広範な視野をとって歴史的変遷をながめる議論を組みあわせた議論を読んでみたいと思いました。

[titowg7さんの感想 · 2016年10月28日]

新書文庫

[rafmonさんの感想 · 2016年8月10日]

くだらない、と思うような下世話な話も何故だろう、語彙や史実のせいか、知識欲を満たすインテリ談話の如く。良い年した叔父さん二人の対話式エロ知識披露、とでも言おうか。ハリスが日本に来た時に性器まで晒して言葉を尋ねた日本人の話や、パリの性風俗。男色から芸者遊びまで面白い。

巻末の解説。室井佑月の「やばい本、読んじゃったよ」のやばいという単語が、何とも色んな意味に捉えることが出来て絶妙。

[tigersilkyさんの感想 · 2013年1月9日]

面白かった。博覧強記のスケベ版。

[ズゴッ子さんの感想 · 2011年10月27日]

東大、京大出身のインテリ中年が語る性文化。一生懸命Y にしようとしているが、根が勉強好きだからか、どうしても高尚になる。飲み会で使えそうなネタはいくつか拾えた。

著者プロフィール

1949(昭和24)年、横浜に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。2008年より明治大学国際日本学部教授。20年、退任。専門は、19世紀フランスの社会生活と文学。1991年『馬車が買いたい！』でサントリー学芸賞、96年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、99年『愛書狂』でゲスナー賞、2000年『職業別パリ風俗』で読売文学賞、04年『成功する読書日記』で毎日書評賞を受賞。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設。書評アーカイブWEBサイト「All REVIEWS」を主宰。22年、神保町に共同書店「PASSAGE」を開店した。

「2022年 『神田神保町書肆街考』 で使われていた紹介文から引用しています。」