- Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022643865
感想・レビュー・書評
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大学にてフェミニズム、ジェンダー論について講義をしている心理学者・小倉千加子さんの著作です。
2007年に発行された書籍ということで、2019年現在からでは少し時代のズレというものがあるかと思いますが、それを感じさせないほどの「納得感」とでも言うのでしょうか、腑に落ちる時代の流れ、その中でいかに女性が心理的に流動していったかが(時にふっと笑わせてくれるような表現を交えて)示されています。
「男女の結婚論」に始まり、「主婦層階級」「ロマンティック・ラブと情熱恋愛の違い」「娘の結婚は父親と国で決まる」「恋愛とフェティッシュ」などなど、思わず覗き見たくなるような興味をそそられる項目がずらりと並んでいます。
特に本著で面白いのは、これがただの心理学の先生が一般論を述べたのではなく、大学教授として日々学生と接する一教授が実際に肌に触れて感じた事実を交えて展開されているということです。
『優しい言葉をかけられ、安心感が得られて、はじめて心を許して自分を委ねられる相手と出会うと、それを「恋愛」だと思い込む学生がいる。』(p.74)
と、恋愛に対して全く免疫のない学生の実態を語るかと思えば、
『結婚相手に求める条件として、「金遣いが荒くなく、子ども好きで、美人」と書いてくるのがよくある。』(p.181)
このように、男子学生・女子学生それぞれに「理想の相手」の条件をアンケート形式で問い、それらを紹介するといった(端から見ていれば)面白い形式も取られていて、最初から最後まで全くお堅い雰囲気も、中だるみも、飽きもなく読み終えることができました。
個人的にはこの直前に読んだ『ザ・フェミニズム』よりずっと簡単に読めて楽しかったなというのが率直な感想で、フェミニズムがこういうことを深く掘り下げていく学問なんだと考えると、巷を席捲している「フェミ=面倒でうるさい人たち」というイメージが全く違うものに見えてくるほどでした。
しかし、楽しい(クスッと笑えるような)文章の裏側で、女性というものに求められる無意識的な条件であったり、女性の内面化している女性像、さらには結婚を「経済(カネ)と美(カオ)の交換」と表現するあたり、やはりこの問題には笑ってばかりいられないのだなという“本当の”メッセージも窺い知れます。
特にドキッとしたのが下の引用で、男性と女性の本質を見事に突いているのではないかと感じました。
『女性は男性社会では、一般的に力関係において劣位に置かれているため、最初から強い恥の感覚を内面化し、男性の前で恥をかくことを恐れている。』(p.157)
『男性は、女性に動物性を排除した「聖なる者」でいよという要求を出している。』(p.158)
『女性には男性と較べると「笑顔でいること」がより強く要求される。』(p.158)
『男と女の間には、バカの壁が立ちはだかっているのである。』(p.165)
他にも、「なぜ父がひどいことをしても子供は何とも思わないのに、母がすると嫌な気分になるのか?」や、「なぜ女性は男性より経済力があると、そこから降りようとするのか?」などに対しての見解が述べられています。
古さを感じない一冊でした。 -
結婚相手への条件が、どんどん厳しくなっているという。
条件に合う人がいないからそれでも待っているうちに晩婚化・非婚化・少子化が進み、これらは人々が意識を変えない限り止まらないという。
…でも結婚て、そもそも条件の合う人を探してお互いが囲いこみ、囲いこまれることで制度的にも優遇してもらいましょうという政府がつくった制度であるはず。
その制度に忠実に従ってでも今の社会的な事情を考えると少し条件を引き上げざるをえない、それはしごく当然と思われる。
条件を引き上げることで結婚できない人がいけないのではない。いつまでも古い制度を引きずってそこに適合できない人を責めるだけの、鈍感な政府が責められるべきだと思うんだけど… -
面白い文章を書くブロガーさんのお勧めで読んでみたらやっぱり面白かった。なぜ未婚率が上がっているのか、これを読めばよくわかる。
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10年位前の本だけど、今と状況はあまり変わらないんじゃないかな。
雇用の非正規化が進む中で、結婚なんてできないと思う男性。だからこそ結婚して生活のレベルアップを図りたい女性。
すでに安定した収入と充実した生活を持っている人は、今さら生活のレベルを下げる様な結婚はしたくないと思っている。
自分を客観的に見られないから、不釣り合いなくらい高い条件設定してしまう男女。
私が違和感を感じるのはそういうことではなく、結婚したい相手がいないのに、結婚したい気持ちだけが、結婚に対する条件だけが膨らんでいくという事実。
「この人と結婚したい」「この人と一生を一緒に生きていきたい」
それがまずあってしかるべきなんではないの?
苦労したいと思いますか?って聞かれたら、誰だってしたくないと思うだろう。
でも、何の苦労もない生活ってないでしょ?あるの?私が知らないだけ?
あまりにも安全地帯に自分を置きすぎなんじゃないの?
親も悪いの。
子どもに苦労や失敗をさせないようにしすぎなんだよ。
ちょっとした苦労を笑い飛ばせる人間、失敗しても自力で立ちあがれる人間に育てようよ。
こんなことを思ってしまう私は生きた化石なのかもしれない。
シーラカンスと呼んでくれてもかまわんよ。
とりあえず結婚相手には条件があるのだそうだ。もちろん男女ともに。
でも、見合い結婚ではなく恋愛結婚が望ましい。
だが、恋愛と結婚は別物と割り切ってもいる。
よい結婚をするために条件をずらりと提示した結果、該当者はいません、と。
結婚は義務じゃない。
出産は義務じゃない。
したくないならしなきゃいいじゃん。
そして冷静になって考えてみて。完璧な人なんていない。
なんで結婚相手にだけ、完璧を求めるの?
相手の足りないところを自分が補うくらいの気持ちがなければ、結婚なんてできないんじゃないの?
少子化が急激に進んでいるのが、日本とドイツとイタリアなんですって。
“「少子の枢軸」日・独・伊は、敗戦によって莫大な賠償金を払わされ、貧しいところから出発した国だ。貧しかった国で「愛とは金」だと思う父たちが、娘にピアノを習わせ、大学を出し、自分は一度も行っていないのに海外旅行に行かせ、ちゃんと箔をつけたのだ。父はみんな思っている。なんでうちの娘が、高校しか出ていない貧乏な男と結婚しなければならないのかと。”
晩婚化、非婚化、少子化の根は深そうです。
でも、地球全体では人間増えてるからさ。
あんまり煽られないように、落ち着いてどうしたらいいのか考えましょう? -
「人間がある道を行くのは、計算や打算によってではない。」
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昔読んだ本だけど、作者の毒が心地よい。
結婚は金と顔の交換というのは、なるほどね。
最近の女性達も余り変化はないかも -
仕事関係で上司に借りて読んだ。現代の女性の気持ちを心理学的に理解する必要があったため。
仕事は関係なく、ほんとに面白くて電車の中で噴き出しそうだった。
エスプリのきいた文章、日本政府は本気で少子化対策をするなら、VERYを若い女性に無料配布すればいい、っと言うところなど、軽いようだが実は奥深い分析に基づいていると笑いながらも、感心した。未婚のときに読んだら、この毒舌ぶりをどう思っただろう。