静かな大地 (朝日文庫 い 38-5)

著者 : 池澤夏樹
  • 朝日新聞社 (2007年6月7日発売)
4.18
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  • Amazon.co.jp ・本 (672ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022644008

静かな大地 (朝日文庫 い 38-5)の感想・レビュー・書評

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  • アイヌの束の間の隆盛と衰退を、壮大な枠で描いた、哀しい美しさに満ちた作品。

    明治初期、開拓団の家族として淡路島から北海道へやってきた、幼い宗形三郎・志郎の兄弟。

    先住民であるアイヌ民族の人々と親しくなった彼らは、他の和人とは異なり、その自然の摂理に基づいた生活と信仰に魅せられます。
    そして、成人して後は、馬の扱いに長けたアイヌを主体とした牧場を経営しながら、アイヌの生活と地位を守ろうします。
    しかし、アイヌへの差別と、好調な事業への嫉妬が激しさを増した結果…。

    宗形兄弟とアイヌの同胞たちの夢破れた物語は、哀しい末路を迎えた三郎を追慕して止まなかった弟・志郎の、自身の幼い娘・由良への昔語りとしてはじまり、やがて成人して妻となり母となった彼女の執筆という形で、昭和初期にようやくこの世に痕跡を留めることになります。

    そのため、物語の開始から哀しみと追憶に満ちており、そして、結果的には差別と敗北に終わるため、途中で何度もつらい気持ちになりました。
    それでも、兄弟やその家族、アイヌの仲間たちなど、彼らがお互いを愛し、認め、尊敬し、思いやった気持ちが心に染みる素敵な物語でした。

    作者の池澤夏樹さんの母方の曽祖父にあたる方が三郎のモデルになっているそうで、それが物語に不思議なリアリティを添えています。
    また、近年の、人間の止まないエゴによる自然破壊や種の絶滅問題などについても考えさせられることが多い作品でした。

    気持ちの浮き沈みのせいで、読み終わるのにかなりの時間がかかりましたが、読んでよかったと思えた物語です。

  • 幕末、明治から大正にかけて時代は巡るが、概要は明治における北海道、アイヌに関わった三郎の物語を姪である由良が語るというもの。内容は非常に美しく、儚い。物語は複数の語り部が存在しており、章ごとに異なる。そのため、語り部の感情が物語へ反映されることとなっている。
    史実を取り入れたフィクション、となっているのが特徴で、北海道開拓やアイヌの歴史、考えなどが様々に取り込まれている。その中を物語の主人公である三郎が駆け抜けていく姿は非常に心地よい。だが、常にどこか暗い何かが物語を覆っているのは、その後のアイヌ、そして三郎に何らかの不幸が訪れることが語り部は知っており、読者も感じているからだろう
    物語は語り部を通してとなるので、読みやすい。だが三郎の気持ちが終盤から語られず、第三者からみた三郎の姿のみが語られている。それが非常に痛々しく、読み進めるのが辛くなってくる
    アイヌ文化、歴史については、ここで記するのはやめておくが、日本とは、日本人とは一体何かということも考えさせられたとだけ記す。これは別の本を読みながら考えていこうと思う

  • 北海道ツーリング中に読んだ一冊。
    内地を追われた侍による、アイヌ迫害・馬やジャガイモを使った開墾の歴史が伺える。

    熊送りは北方民族資料館(網走)によれば北方民族共通の習慣だという。

    足るを知っていたアイヌの生活の基盤を和人が奪っていく中、アイヌへの憧れから彼らとの共存、むしろ飢饉時にジャガイモをアイヌに配るなど、和人を裏切る側にたち、力尽きて妻子を追ってアイヌ装束で自害した一人の才人の物語。

    幕府の近視眼的な政策(奴隷ですら資産だったのに)やシャクシャインの乱での和人のだまし討ち、榎本武揚がオランダを模して独立しようとしたという解釈など、教科書からは知れない解釈も随所に。

    文字を持たないながら独特の言葉を作り上げた文化の記録は貴重なんだろう。
    目黒「静内」にまた行こうと思う。

  • 日本人として寂しい話だが読んで良かった

  • 宗形三郎=原條新次郎のモデル
    宗形志郎=原條迀のモデル
    フィクションだが、なるべく史実に基づいて書かれたお話し
    原條迀は作者(池澤夏樹)の曽祖父(母の母の父)

    北海道開拓の苦渋
    アイヌの悲哀
    和人の葛藤と裏切り
    ※『北の零年』の稲田家だ!

  • 明治維新で北海道開拓移民となった旧淡路藩の武士宗形三郎、志郎とアイヌとの交流。アイヌの価値観や宗教観に共鳴。インディアンやアボリジニなどの先住民族との共通点が多く人類の向かうべき方向性を示唆していると思う。

  • 明治維新直後、淡路島から北海道開拓を志し、静内に移り住んだ一族の歴史物語。

    静内は今でも馬産地として有名であり、自分の生まれた町からもそれほど遠い場所ではない。おそらくは自分の祖先も、同じような道を歩んで来たのだろうと思うと、とても興味深く読む事ができた。

    でも、もし自分が主人公の宗形兄弟の立場だったら、アイヌの子供と友達になれただろうか。周囲の反対を押し切ってまで、アイヌの人々と事業を起こす事が出来たのだろうか、と考えさせられた。

    考えても答えは出ないが、もしかしたら他の和人同様にアイヌの人々を蔑んでいたかもしれない。
    残念ながら自分は宗形兄弟やイザベラ・バードのような、立派な志は持ち合わせていないが、せめてクラーク博士が札幌農学校の生徒に説いたよう、紳士でありたいと思った。

    現在、何かと領土問題で騒がしい世の中だが、国内にも存在した占領と搾取の歴史について、日本人の一人として決して忘れてはいけないと思う。

  • 明治時代から200年経った今のこの世の中だったら、アイヌとシャモは、もっと良い意味で、違った運命を辿ることができているだろか。人は歴史から何かを学び、共に歩むという選択肢を選べているだろうか。ひとつの文化を滅ぼさずに済んでるだろうか。いつも、人は失ってから、その文化の大切さ、高貴さに気付く。
    (2008年12月11日 記)

    まずはパートナーと共に生きるということからかしら。
    本当に感動した本だったと思い出す。

  • 北海道開拓とアイヌの話。当時、蔑まれていたアイヌと共に土地を拓き、事業を興したものの、妬みや策謀によって離散という結末を辿るという、なんともやるせない。しかも実話に基づいている。
    人間は自分至上主義というものから逃れられないものなのか、さらにそのおかしな考え方が強ければ強いほど力を持ってしまう、追従してしまうのはどうしたらこの世から消滅させられるのか、考えさせられる。
    物語という形式ではなく、父親の問わず語りを後に娘が回想しながら文字化するという形式なので、途中の娘たちの会話に著者の考えが書かれているのが気に障ると感じる人もいるかも。

  • 「静かな大地」とは人間の住む土地、世界のことでアイヌを題材に扱った話です。朝日新聞に連載されていました。アイヌのひととなり、和人との関わりを描いた本です。アイヌの歴史や今の現状をみれば話の結末はどこにたどり着くのか自ずと分かるのですが、それでも心がきゅーうっとなりますね。

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