静かな大地 (朝日文庫 い 38-5)

著者 :
  • 朝日新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本 (672ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022644008

感想・レビュー・書評

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  • アイヌの束の間の隆盛と衰退を、壮大な枠で描いた、哀しい美しさに満ちた作品。

    明治初期、開拓団の家族として淡路島から北海道へやってきた、幼い宗形三郎・志郎の兄弟。

    先住民であるアイヌ民族の人々と親しくなった彼らは、他の和人とは異なり、その自然の摂理に基づいた生活と信仰に魅せられます。
    そして、成人して後は、馬の扱いに長けたアイヌを主体とした牧場を経営しながら、アイヌの生活と地位を守ろうします。
    しかし、アイヌへの差別と、好調な事業への嫉妬が激しさを増した結果…。

    宗形兄弟とアイヌの同胞たちの夢破れた物語は、哀しい末路を迎えた三郎を追慕して止まなかった弟・志郎の、自身の幼い娘・由良への昔語りとしてはじまり、やがて成人して妻となり母となった彼女の執筆という形で、昭和初期にようやくこの世に痕跡を留めることになります。

    そのため、物語の開始から哀しみと追憶に満ちており、そして、結果的には差別と敗北に終わるため、途中で何度もつらい気持ちになりました。
    それでも、兄弟やその家族、アイヌの仲間たちなど、彼らがお互いを愛し、認め、尊敬し、思いやった気持ちが心に染みる素敵な物語でした。

    作者の池澤夏樹さんの母方の曽祖父にあたる方が三郎のモデルになっているそうで、それが物語に不思議なリアリティを添えています。
    また、近年の、人間の止まないエゴによる自然破壊や種の絶滅問題などについても考えさせられることが多い作品でした。

    気持ちの浮き沈みのせいで、読み終わるのにかなりの時間がかかりましたが、読んでよかったと思えた物語です。

  • 歴史の一隅にあった、しかし壮大なる、名もなき偉大な和人・宗方三郎と高潔なアイヌの物語。だが何故、三郎は最期に気が触れてしまったのだろう。高橋源一郎の解説が秀逸。文学として言葉が過去を紡ぐ、そして国を語る。アイヌの教えもまた、救国の一手となるだろうか?

  • かつてそこはアイヌの地だった。
    エスキモーやインディアンにも共通する自然に対する畏怖と感謝、共存の世界がそこにはあった。
    その地に和人が住み、暮らすようになり次第にアイヌは追いやられ、和人は自然を蔑ろにしていく。
    私利私欲の世界の始まりだ。

    自然界の仕組みのごく僅かな事しか知らない人間はテクノロジーによって自然を制御できると思い込む。
    そうで無いことに気付かされるのが自然災害だとすればそれはあまりに皮肉な事だ。

    今だからこそ、彼かに学び直す必要がある。そんな一冊。

  • 第3回親鸞賞
    著者:池澤夏樹(1945-、帯広市、小説家)
    解説:高橋源一郎(1951-、尾道市、小説家)

  • -

  • 幕末、明治から大正にかけて時代は巡るが、概要は明治における北海道、アイヌに関わった三郎の物語を姪である由良が語るというもの。内容は非常に美しく、儚い。物語は複数の語り部が存在しており、章ごとに異なる。そのため、語り部の感情が物語へ反映されることとなっている。
    史実を取り入れたフィクション、となっているのが特徴で、北海道開拓やアイヌの歴史、考えなどが様々に取り込まれている。その中を物語の主人公である三郎が駆け抜けていく姿は非常に心地よい。だが、常にどこか暗い何かが物語を覆っているのは、その後のアイヌ、そして三郎に何らかの不幸が訪れることが語り部は知っており、読者も感じているからだろう
    物語は語り部を通してとなるので、読みやすい。だが三郎の気持ちが終盤から語られず、第三者からみた三郎の姿のみが語られている。それが非常に痛々しく、読み進めるのが辛くなってくる
    アイヌ文化、歴史については、ここで記するのはやめておくが、日本とは、日本人とは一体何かということも考えさせられたとだけ記す。これは別の本を読みながら考えていこうと思う

  • 北海道ツーリング中に読んだ一冊。
    内地を追われた侍による、アイヌ迫害・馬やジャガイモを使った開墾の歴史が伺える。

    熊送りは北方民族資料館(網走)によれば北方民族共通の習慣だという。

    足るを知っていたアイヌの生活の基盤を和人が奪っていく中、アイヌへの憧れから彼らとの共存、むしろ飢饉時にジャガイモをアイヌに配るなど、和人を裏切る側にたち、力尽きて妻子を追ってアイヌ装束で自害した一人の才人の物語。

    幕府の近視眼的な政策(奴隷ですら資産だったのに)やシャクシャインの乱での和人のだまし討ち、榎本武揚がオランダを模して独立しようとしたという解釈など、教科書からは知れない解釈も随所に。

    文字を持たないながら独特の言葉を作り上げた文化の記録は貴重なんだろう。
    目黒「静内」にまた行こうと思う。

  • 日本人として寂しい話だが読んで良かった

  • 宗形三郎=原條新次郎のモデル
    宗形志郎=原條迀のモデル
    フィクションだが、なるべく史実に基づいて書かれたお話し
    原條迀は作者(池澤夏樹)の曽祖父(母の母の父)

    北海道開拓の苦渋
    アイヌの悲哀
    和人の葛藤と裏切り
    ※『北の零年』の稲田家だ!

  • 明治維新で北海道開拓移民となった旧淡路藩の武士宗形三郎、志郎とアイヌとの交流。アイヌの価値観や宗教観に共鳴。インディアンやアボリジニなどの先住民族との共通点が多く人類の向かうべき方向性を示唆していると思う。

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著者プロフィール

池澤夏樹(いけざわ なつき)
1945年、北海道帯広市生まれ。1964年に埼玉大学理工学部物理学科に入学し、1968年中退。
小説、詩、評論、翻訳など幅広い分野で活動する。著書に『スティル・ライフ』(中央公論新人賞、芥川賞)、『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)、『花を運ぶ妹』『カデナ』『光の指で触れよ』『世界文学を読みほどく』『アトミック・ボックス』等多数。また池澤夏樹=個人編集『世界文学全集』、同『日本文学全集』も多くの読者を得ている。旅と移住が多い。
2018年9月から、日本経済新聞にて連載小説「ワカタケル」を連載。

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