憂き世店 松前藩士物語 (朝日文庫 う 17-1)

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  • 朝日新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022644183

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  • 松前藩が移封され、解雇された相田総八郎となみの江戸・裏店での浪人暮らし。

    「生きていくことは死ぬことよりもずっと辛い。それでも生きていなければならないのは何の為だろう。その答えは、…」と、なみがか語るように、藩での暮らしとは別世界であった。それも14年後、晴れて帰藩が叶う。しかし、待つには、耐えるには長すぎたようです。
    「脇目も振らずにあの家から飛び出すには、時間が掛かり過ぎました」と語り、江戸に残る仲間の涙に、否定することは誰にもできなかった。

    そして、帰藩後、上京した総八郎に待つのは、何もなくなってしまった神田三河町であった。江戸は、町民はもっと速く時代に流されていくのかもしれない。「自分の人生がもはや終わりに近いと感じた」惣八郎の想いが、江戸の夕闇に解けていくのが見えるようです。

    14年のブランクがあり、帰藩した総八郎たちは、無事お役目が務まったのでしょうか。気になります。武士としての矜持だけだったのか、あるいは、江戸時代だから変化がなく、問題なかったのでしょうか。浦島状態ではなかったのか、と。

  • 蝦夷松前藩の移封(お国替え)から帰封までの19年間の、
    浪人となった松前藩士の江戸での暮らしを書いた作品。

    長崎での交易などは、比較的華やかに作品にされるかと
    思うのですが、北国ものって、北国人の特性なのか
    あまり主張満々で作品になかなか上ってこない印象。
    そんな北国事情の歴史動向を下敷きにしながらも、
    本作品は江戸の裏店暮らしでまっとうに生きようとする
    下町の人らの関わり合いをえがいていて飽きません。

    結末としては、多少の無常観が尾を引きますが、
    終わりの数行の、現代にも通じる、
    長く生きてつらい思いをのみこみながら前に進んだ後に
    見える、ささやかともいえる暮らしややり取りに
    息づいていた人の情というものに生かされていたと
    気づかされるくだりは、目新しくないかもしれませんが、大切な灯火ともいえる考えだと思います。

著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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