一握の砂 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 88
レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022644527

作品紹介・あらすじ

天才歌人・啄木は貧困に苦しみながらも、新しい明日への情熱を持ち続け、二十六歳で亡くなった。亡くなる一年前に出版した『一握の砂』の歌に、啄木はさまざまな意匠を凝らし、命を吹き込んだ。初版本の体裁(四首見開き)で読むことで、我々は流れ出でる歌の意味を理解できる。啄木の生きた証しがいま甦る。

感想・レビュー・書評

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  • 母が亡くなった後に、愛用のタンスの中にずいぶん昔の手帳があるのを見つけた。其処には啄木の歌が何首か書き抜かれていた。恋の歌が多かったと思う。その内容から10代の頃の手帳だと思った。

    意外だった。母の10代は、兄2人が戦死し、父親も後を追うように亡くなり、なんとか帰郷した兄と妹と母親とで、やり繰りしながら暮らしていた頃だ。現代の十代のように青春を謳歌する暇はなかった、と聞いていた。

    けれども、よく考えると、毎年のクリスマスに私へのプレゼントとして本が置かれるわけだが、小学高学年か中学生のある年は石川啄木詩集が置かれていた。母親のチョイスに、なんの疑問も持たずにざっと読んで、私は直ぐに歴史大河小説などを読んでいた。彼女としては、思い入れのある本で、渡す数日前には彼女が愛読していたのだろう。

    今回改めて読み直してみると、「蟹とたはむる」なよなよしさは、一切感じず、明治後年の貧困をもたらす社会と、与謝野晶子よりも遥かに直接的な反戦歌があることに驚いた。貧困と反戦、それは戦後の母にとっては、あまりにも当たり前のことであり、だからこそ彼女は啄木に惹かれたのかもしれない。

    以下、気になった歌をコピペする。

    こころよく
    我にはたらく仕事あれ
    それを仕遂げて死なむと思ふ

    何処(どこ)やらに沢山の人があらそひて
    鬮(くじ)引くごとし
    われも引きたし

    気の変る人に仕(つか)へて
    つくづくと
    わが世がいやになりにける

    友がみなわれよりえらく見ゆる日よ
    花を買ひ来て
    妻としたしむ

    夜明けまであそびてくらす場所が欲し
    家(いへ)をおもへば
    こころ冷たし

    人みなが家(いへ)を持つてふかなしみよ
    墓に入るごとく
    かへりて眠る

    何かひとつ不思議を示し
    人みなのおどろくひまに
    消えむと思ふ

    己(おの)が名をほのかに呼びて
    涙せし
    十四(じふし)の春にかへる術(すべ)なし

    そのむかし秀才(しうさい)の名の高かりし
    友牢にあり
    秋のかぜ吹く

    田も畑(はた)も売りて酒のみ
    ほろびゆくふるさと人(びと)に
    心寄する日

    わが抱く思想はすべて
    金(かね)なきに因するごとし
    秋の風吹く

    むやむやと
    口の中(うち)にてたふとげの事を呟く
    乞食(こじき)もありき

    意地悪の大工の子などもかなしかり
    戦(いくさ)に出(い)でしが
    生きてかへらず

    むらさきの袖垂れて
    空を見上げゐる支那人ありき
    公園の午後

    忘られぬ顔なりしかな
    今日街に
    捕吏(ほり)にひかれて笑(ゑ)める男は

    真白(ましろ)なる大根の根の肥(こ)ゆる頃
    うまれて
    やがて死にし児(こ)のあり

    おそ秋の空気を
    三尺四方(さんじやくしはう)ばかり
    吸ひてわが児の死にゆきしかな

    2019年3月読了

  • #novel
    そうでした、こういうのでした…中学生時代に読んで、なーんて暗い歌ばかりなのだろう…と思ったものです。が、オサーンになってから再読すると、また違う感慨が。啄木24歳とは言え、明治の天才に常である老成した視点に共感。そして胸を打つ。穿つ。

    忘れていたのが序文。この時点でもう辛かったのでした。


    「函館なる郁雨宮崎大四郎君
     同国の友文学士花明金田一京助君

     この集を両君に捧ぐ。予はすでに予のすべてを両君の前に示しつくしたるものの如し。従つて両君はここに歌はれたる歌の一一につきて最も多く知るの人なるを信ずればなり。
     また一本をとりて亡児真一に手向く。この集の稿本を書肆の手に渡したるは汝の生れたる朝なりき。この集の稿料は汝の薬餌となりたり。而してこの集の見本刷を予の閲したるは汝の火葬の夜なりき。」


    後段の三月で早逝した愛児への文章はもう…


    内容も、ネガティブ系が8割、その内半分がダウナー系、そのまた半分がスーサイドネタ。有名な一握の砂の歌も停車場の歌、ぢっと手を見るの歌も、むしろ明るい方です。あ、せっかくですから転載しましょう。


      頬につたふ
      なみだのごはず
      一握の砂を示しし人を忘れず


      はたらけど
      はたらけど猶わが生活楽にならざり
      ぢっと手を見る


      ふるさとの訛なつかし
      停車場の人ごみの中に
      そを聴きにゆく


    うん間違いなく素晴らしい。
    ダウナーネタではこんな感じ。


      誰そ我に
      ピストルにても撃てよかし
      伊藤のごとく死にて見せなむ


      我に似し友の二人よ
      一人は死に
      一人は牢を出でて今病む


    特に辛いのが、後半にある亡児への八首。
    悲しみと言うよりも、心に穿たれた巨大な空漠を感じます。
    そのラストがこれで…


      かなしくも
      夜明くるまでは残りゐぬ
      息きれし児の肌のぬくもり


    ………



    ポジティブ系は、主に友人への歌でした。


    私が知る短歌というものは、もっと「相聞」つまり恋愛の歌が多いものだと思ってました。ここまで暗いとは…しかし、暗くとも551首全てが素晴らしい。美しい。若く、そして卓抜した才能の煌き。明治の文豪の特有の、研ぎ澄まされたダダイズム。
    艱難辛苦が玉を成す。逆境と狂気こそが芸術の原動力。戦争こそが科学を進歩させる、のと同じベクトルで、あまり認めたくないのですが。しかしそれもまた一面の真理ではありますか。
    もちろん、彼ら偉大な才能が、平和な時代にあれば、また違った芸術を生み出したはずです。元禄文化とか現在のラノベ隆盛とか……やっぱり明治のダダイズムのほうが百倍美しい、と思ってしまいます。

    最後に、個人的に一番心に残った一首を。


      何がなしに
      頭のなかに崖ありて
      日毎に土のくづるるごとし



    ・石川啄木「一握の砂」読了。

  • 石川啄木の短歌(詩)に興味があるので、読んでみたいです

  • 日常の些細なこと。愛する人々の話し。故郷を思うこころ。街の情景。日々の悲しみ。子供の死など、啄木の身の回りに起こったことについて綴った短歌。

    一句一句読みながら、情景を頭に思い浮かべるると、明治時代の人になったような気がしました。

  • 有名な歌集ですが、こうして本を購入して読んだのは初めてです。
    「三行書き」に込められた啄木の思いが時空を超えて甦ってくるようです。
    特にふるさとに関する歌が心に響きました。また時を経て何度も読み返したい一冊です。

  • NHKのテレビ番組のJブンガクを見ています。
    2010年の8月に一握の砂を紹介していたので読み直しました。

    石をもて追はるるごとく
    ふるさとを出でしかなしみ
    消えゆる時なし

    という詩を

    the grief of leaving hometown as if chased by men with stones never goes away

    と訳していました。

    へー,そう訳すんだと
    一握の砂 の中身と英語の勉強になりました。

    英語にしてみると一握の砂 の良さと日本語の良さを再認識できることが分かりました

  • 国語の授業で必ず紹介される作品。ただ内容には一切触れず、素通りをするかわいそうな歌たち。

    ただ一度読んだだけでは、全く理解不能。そこで携帯片手に「『一握の砂』全歌評釈」という解説ページも一緒に追っていく。

    そこから見える限られた文字数の中から流れ出る生命感。26歳で逝った石川啄木の短い人生が集約された一冊。

    つか歌とか詩とかで表現する人たちは本当に尊敬します。

  • 啄木度98%あまり

  • 啄木のプライドが高いながらも脆い繊細な精神状態。
    日々を彩る歌。
    特に妻を思いながら書いた歌が
    日常の中でとても慈しむようで好き。
    あと、亡き息子への想いが最後綴られていて
    とても切なくなりました。

    きれいな日本語で日常を描く啄木はとても素敵。
    音でも美しさを感じられるので、
    ぜひ声に出して言葉にして読んでほしい作品です。


    以下、心に残った詩です。
    (メモ代わりなのでとても多いです。)


    しつとりと/なみだを吸へる砂の玉/なみだは重きものにしあるかな
    やはらかに積れる雪に/熱てる頬を埋むるごとき/恋してみたし
    それもよしこれもよしとてある人の/その気がるさを/欲しくなりたり
    何がなしに/息きれるまで駆け出してみたくなりたり/草原などを
    とかくして家を出づれば/日光のあたたかさあり/息ふかく吸ふ
    ある日のこと/室の障子をはりかへぬ/その日はそれにて心なごみき
    人といふ人のこころに/一人づつ囚人がゐて/うめくかなしさ
    叱られて/わつと泣き出す子供心/その心にもなりてみたきかな
    顔あかめ怒りしことが/あくる日は/さほどにもなきをさびしがるかな
    学校の図書庫の裏の秋の草/黄なる花咲きし/今も名知らず
    さらさらと雨落ち来り/庭の面の濡れゆくを見て/涙わすれぬ
    愁ひ来て/丘にのぼれば/名も知らぬ鳥啄めり赤き茨の実
    西風に/内丸大路の桜の葉/かさこそ散るを踏みてあそびき
    飴売のチヤルメラ聴けば/うしなひし/をさなき心ひろへるごとし
    あはれ我がノスタルジヤは/金のごと/心に照れり清くしみらに
    ほのかなる朽木の香り/そがなかのたけの香りに/秋やや深し
    わかれ来てふと瞬けば/ゆくりなく/つめたきものの頬をつたへり
    さらさらと氷の屑が/波に鳴る/磯の月夜のゆきかへりかな
    さりげなく言ひし言葉は/さりげなく君も聴きつらむ/それだけのこと
    世の中の明るさのみを吸ふごとき/黒き瞳の/今も目にあり
    かの時に言ひそびれたる/大切の言葉は今も/胸にのこれど
    山の子の/山を思ふがごとくにも/かなしき時は君を思へり
    忘れをれば/ひよつとした事が思ひ出の種にまたなる/忘れかねつも
    君に似し姿を街に見る時の/こころ踊りを/あはれと思へ
    かの声を最一後聴かば/すつきりと/胸やはれむと今朝も思へる
    時として/君を思へば/安かりし心にはかに騒ぐかなしさ
    わかれ来て年を重ねて/年ごとに恋しくなれる/君にしあるかな
    こころよく/春のねむりをむさぼれる/目にやはらかき庭の草かな
    用もなき文など長く書きさして/ふと人こひし/街に出てゆく
    するどくも/夏の来るを感じつつ/雨後の小庭の土の香を嗅ぐ
    すずしげに飾り立てたる/硝子屋の前にながめし/夏の夜の月
    君来るといふに夙く起き/白シヤツの/袖のよごれを気にする日かな
    ゆゑもなく海が見たくて/海に来ぬ/こころ傷みてたへがたき日に
    葡萄色の/長椅子の上に眠りたる猫ほの白き/秋のゆふぐれ
    水のごと/身体をひたすかなしみに/葱の香などのまじれる夕

  •  
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/4022644524
    ── 石川 啄木《一握の砂 19101201 東雲堂書店 20081007 朝日文庫》
     
    http://www.aozora.gr.jp/cards/000153/files/816_15786.html
     
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/search?idst=87518&key=%A1%A1%C0%D0%C0%EE+%C2%EF%CC%DA
     
     啄木の三行革命
    http://asahidake-n.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/index.html
     たんたらたらたんたらたらと 20100514 近藤 典彦ブログ
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/19080624
     三行革命縁起 ~ The origin of the three lines ~
     

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