街道をゆく 10 羽州街道、佐渡のみち (朝日文庫 し 1-66)

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022644558

作品紹介・あらすじ

「羽州街道」では、家康に挑戦した上杉景勝、参謀の直江兼続ゆかりの米沢などを歩く。筆者は上杉景勝について、「謙信や直江兼続の華やかさよりも好きであるかもしれない」と書いている。「佐渡のみち」では、江戸初期の佐渡でおきた「小比叡事件」の主人公、辻藤左衛門が登場する。歴史的にはそれほど有名ではないが、いじめぬかれ、最期は名誉を賭けて戦った男への深い同情を感じさせる。

感想・レビュー・書評

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  • 『街道をゆく10』は「羽州街道、佐渡のみち」。地元山形の「羽州街道」を読んだままにしてたのだが、今夏の佐渡旅行を思い出しながら「佐渡のみち」を読み終えた。
    大佐渡を「大陸の影」と勘違いした太宰治の逸話、鏡のように静かな真野湾、そして小木の海など、実感をこめて読むことができた。
    最後の「無宿人の道」では、旅行時にはそれほど感じなかった水替人足に送られた無宿人の哀れを感じた。
    「江戸幕府は、同時代の地球上のいろんな政府にくらべ、ほめられるべき点も多い。しかし最大の汚点は、無宿人狩りをやっては、かれらを佐渡の水替人夫に送ったことである(p257)」

  • 今回は山形と佐渡。米沢の上杉と佐渡の金山を見ながらの度という感じです。佐渡は一度行ってみないといけないと思いつつ、相川以外にも訪問すべき場所があるようで日帰りでは大変そうだなぁと。いや、一泊すればよいのだけど(司馬さんも日帰りではないし)

  • 佐渡の負の歴史。

  • しまった…、また陸続きではないものに手を付けてしまった(苦笑)

    今回は二本立て、県名でいうところの山形県「羽州街道」と海の向こうの「佐渡のみち」。

    羽州街道という呼び名さえもが聞きなれない状態で、ただフムフムフムとうなづきながら読み進めた。その一部の頁をお酒ののめるカウンターで開きつつ、山形産というだけで「裏・雅山流」というお酒に手を伸ばしてみたとき、その味がすばらしかったというだけではなく、それこそがど真ん中の米沢のお酒だったというのがちょっとした幸せだった。この前半部のペアリングはこの銘柄で決まり!ということで(笑)

    後半「佐渡のみち」はシバさんの短編小説でも読んでいるような錯覚に陥った。「鼠草紙」という土地に残るお話の冒頭部を紹介しつつ、辻藤左衛門という江戸時代の役人にまつわる話を聞かせてくれる。途中孫悟空への脱線はいささか驚いたが、それがシバさん流のものがたりの結び方にたどり着いた時、心のなかで拍手を送っている自分がいた。

    終末部、日が暮れる様に薄暗くなっていく佐渡の無宿人にまつわる景観はシバさんが書かないわけにはいかなかった部分だったのだろう。後味は決して良くないが否定もできない。

  • 誰かの目を通して知る故郷

  • 本著では、山形県の羽州街道と佐渡のみちを著者が歩いている。
    羽州街道の章では、以前に大河ドラマ「天地人」の主人公ともなった直江兼続や、上杉鷹山の人物に触れられているほか、今では山形名物となっている大鍋の芋煮も紹介されている。
    佐渡のみちの章では、江戸時代初期の町奉行・辻藤左衛門に重点が置かれて著されている。
    米沢藩も佐渡も、「田舎」と呼べる地域がある。この日本人が持つ「田舎観」について著者は言及している。他国と異なり、「田舎」にはどこか蔑視の感があるというのである。確かに、「田舎者」、「お上りさん」といった言葉が定着している社会を見ると、著者の指摘は的を射ていると思える。また、豊臣秀吉が上杉家を越後から米沢・会津に転封したこと、佐渡が流刑地となっていたことなどの歴史的事実も、その裏付けとなるかも知れない。
    確かに田舎は不便な点が多い。交通の便が悪いため、モノと情報が入ってこない。佐渡では明治維新後も1ヶ月半にわたって徳川家の直轄領と認識していたようである。この便の悪さは、自然と閉鎖的な社会を生むと同時に、独自の文化を築く。本著でも紹介されていた、大量の芋を短期間で消費するために生み出されたという山形の芋煮はその一例であろう。
    現在、田舎回帰の傾向もある。都会の方が素晴らしいという妄言から、今後解き放たれていくのかも知れない。

  • 羽州は今の山形秋田。佐渡はもちろん佐渡島。謙信のあと羽州米沢に移され窮乏した上杉家や、金鉱で沸いた一時期を除き中央から顧みられなかった佐渡の話など。いずれも歴史的に華やかではないが、このシリーズはそういうトコほど面白い。

  • 『佐渡のみち』の中の、孫悟空と佐渡、の話が良かった。面白くて、何回も繰り返し読みました。よくこんな話を思いつくな、と感心します。
    西遊記なんて子供用の物語だと思ってましたが、そうでもないようです。今度一回読んで見ます。

  • 米沢旅行のお供におススメ。
    『天地人』よりもコンパクトにまとまっていてかつ非常に面白い。
    司馬遼太郎は華やかな兼続よりも寡黙で沈思黙考型の景勝さんが好きだったようで主従関係がとても好ましく思えました。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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