街道をゆく 13 壱岐・対馬の道 (朝日文庫 し 1-69)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022644596

作品紹介・あらすじ

急死した旧い友人の故郷、対馬への旅を思い立つ著者。船酔いに耐えつつたどり着いたその対馬は壱岐とともに、古来、日本列島と朝鮮半島の中継点でありつづけた地。海峡往還のなかでこの両島を通り過ぎた、あるいは数奇にもこの地で土に還った、有名無名の人々の人生を思う。政治情勢が帰ることを拒む故国の山影を見いだすため、波涛のかなたに目を凝らす在日朝鮮人の同行者の姿も胸を打つ。

感想・レビュー・書評

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  • 筆者旧知の唯一の対馬人であるという、青木さんという人も魅力的(勤め先の新聞社で司馬氏に『梟の城』を連載させた人で、かつての同僚でもある)だが、何と言っても壱岐の役所で働く須藤さんが印象に残る。一見仕事に無関係とみえる島の歴史に詳しく、それについて確固とした考えを持っている人で、筆者は「(東京に)かれのような姿勢をもっている人が何人いるだろうか」と静かに感動している。公民館でもらった小冊子の「文章が簡潔で、具体性に富んでいる」のに驚いて編集後記を見ると、須藤さんの名がある。「『あなたがこの本をぜんぶ書いたのですか』と問おうと思ったが、やめた。わざわざきかなくても文体が一人のものなのである」という一文に、筆者の須藤さんに対する敬意が表れていて、何度も読み返したくなる。
    一方で、壱岐と対馬で人情が大違いであるらしく、それを示す例として対馬のタクシー運転手がことごとく悪しざまに描かれていて可笑しかった。書いてしまった悪口をマイルドにするためか、珍しくその場面にだけ奥さん(恐らく『街道をゆく』の旅には頻繁に同行されているのだが、作中に登場することは稀)を登場させている。

    しかし、戦前は映画を観るにも歯医者へ行くにも、対馬の人は釜山へ日帰りしていたという話に度肝を抜かれた。今もまだ「…?」という気持ちである。

  • 同じ事が何回か出てきたけど、よくもまあこんなに調べてあるなと感心してしまった。天才そして、大歴史作家とはこういうものなのかと、よくわかった。

  • 司馬遼太郎さんの小説は好きで、時間があれば読んでいたけれど(言うほど読んでないが)、「街道をゆく」シリーズは初めて読んだ。ちょうど、対馬空港で飛行機が飛ばずに時間があったので空港の売店で買って読んだ次第。
    壱岐・対馬を旅しながら、訪問する場所ごとにさまざまな歴史エピソードや個人的意見をとりとめもなく語っていくスタイルは、そこを訪れたことがある人にとっては非常に面白い。ただ、土地勘がない場所の話を読んでも分からないだろうなとも思った。一度そこに行って、街道をゆくを読んで、またそこに行けば楽しみは広がるだろう。
    対馬は万松院や和多都見神社が出てくると思いきや出てこず、知らない場所が出てくるのも面白い。まさに自由気まま。
    対馬のタクシーが暴走だというエピソード。これに対して当時の対馬では結構な騒動になり、大阪の司馬さんのところに謝りに行ったという話があるそうだ。
    それと、対馬の朝鮮との関係。朝鮮からコメをもらっていたというのは非常に興味深い。沖縄といい対馬と言い、国境の島は外交的に色んな顔を持つ必要があったのだろう。

  • 昔、まだ学生の頃、渡り鳥を観に対馬に行ったことがありました。
    たしか北九州・小倉港からフェリーに乗って渡ったと記憶していますが、その途中、船内のtvが韓国の番組しか映らなくなりました。
    対馬から韓国の島影が見えたと思います。
    海岸に漂着したゴミ容器には、ハングル文字。
    まさに国境の島って感じでした。
    そんなことを思い出しながら、この本を読み終えました。

  • 司馬遼太郎の街道をゆくシリーズは初めて読んだかもしれない。
    農耕の壱岐と狩猟の対馬という明確な対立で描く軸がユニークである。古来から大陸との交流のルート上にあったこれらの島々は遣唐使や朝鮮通信使に出てくるのはもちろんのこと、弥生時代後期の遺跡からは同時期の他の遺跡が石器が出土しているところ、鉄器が出土している点で大陸の鉄がいち早く入ってきた場所であったことを伺い知れる。
    対馬と釜山とは距離にして60キロ、晴れた日にはそれぞれの山が遠くに見える。今の対馬は韓国からの観光客が多いと聞くが、どのような島になっているだろう。

  • 20220613読了

  • 司馬遼太郎 「 街道をゆく 壱岐・対馬の道 」

    朝鮮半島から鉄器や古神道などが輸入される入口としての壱岐・対馬を旅した感じ。壱岐・対馬は 緊張と友好の朝鮮関係史と倭国成立の拠点という位置づけであり、先日読んだ「韓国紀行」の続編的な構成。面白かった

    それまでは自由に行き来していた古代日本人と古代朝鮮人が 白村江の戦いを契機に 緊張状態となり、壱岐・対馬が 国境の防波堤のようになっている。国境のない古代人の方が幸福だったのかなーと思う

    ただ 国境があったから、朝鮮のように 中華思想に基づく儒教国家とならずに済み、日本の封建主義社会下では 賄賂横行や身分急転の不安な社会にはならなかったメリットもあったようにも思った。一長一短ある


    名言「隣国との関係は 互いに堂々たる他人であることが〜親善につながる」




  • こんな時でなかったら、旅に出ている。

  • 司馬遼太郎さん、今回は壱岐と対馬へ。壱岐と対馬は九州と韓国の間にある島としてまとめてしまうことが多いですが、地形だけでなく歴史的にも違いが大きいのですね。きっと両島の九州、韓国との距離(壱岐は九州に近く対馬は韓国のほうが近い)といったことも関係しているのでしょうな。それにしても、どちらも歴史的にはつらいことの多い島です。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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