街道をゆく 31 愛蘭土紀行II (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022644855

作品紹介・あらすじ

いまなお妖精の棲む「アイルランドの中のアイルランド」に、いよいよ足を踏み入れる。アラン島に象徴される荒れ地と英国支配のくびきが育んだ信仰、孤独、幻想…。そして、それらアイルランド的な性格なしには生まれ得なかった文学。「山河も民族も国も、ひとりの"アイルランド"という名の作家が古代から書きつづけてきた長大な作品のようでもある」という感慨とともに旅は終点へ。

感想・レビュー・書評

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  • Iから一貫している視点はプロテスタントとカトリックの関係からアイルランドという国を読み解こうとしていること、またジョイスやイェイツ他の文学を通しても見ている。最後に「まことに、文学の国としかいいよがない」(p。274)とあるが、そこに視点がやや固定されてしまっているのではないかとも思う。連載途中で文学によりすぎていると指摘を受けたいう件りもあるから他の方も同様に思われたのだろう。他の海外の紀行は未読だが、ご自身の文学への関心もあろうが、現地でのコミュニケーション等の限界を埋めようとなさったのではとも思ってしまった。ダブリンに戦時中日本の領事館が置かれていた話は興味深かった。

  • Ⅰに書きました。

  • アイルランドを旅して、アイルランドからいろんなことを語る、第2巻。全2巻です。

    結局、ちょっと昔に。
    帝国主義という、とっても暴力的で理不尽な、国家レベルの資本主義ルールにのっとったヤクザ的な支配で、ものすごい被害者になったわけです。
    それも、殴られた、とか殺された、というだけぢゃなくて、その後子々孫々まで、「勝ち組に這い上がれない仕組み」を狡く作られたわけです。
    そして後年、さすがに大枠としては撤廃されているけれど、資本主義というのは、自由ではあるけれど、勝っているものが次も勝ち易い、という特色のゲームなのです。
    だから、過去のつけというのは、被害者にとっては払われていないまま。
    加害者にとっては「歴史のことじゃん?今更どうしろって言うの?怠けてるお前らが自業自得だから貧しいんだろ?」と、上から見下す訳です。

    という、実はとっても2016年現在でもリアルな状況を、司馬遼太郎さんが、解剖した癌を淡々と研修医に説明する外科医のように語ります。

    色々と面白い、「ふむふむへー」という話に満ちた魅力的な読書でした。

    そして。
    だからそれでどうだっていうのサ。という、大きな難しい壁に、そろそろと近づいて行くような、2冊でした。
    その壁がこの本で壊れるワケでもなければ、魔法のような精神的救済を説くわけでも、ありません。

    好みが別れるでしょうが、僕は司馬さんの考え方は、好きです。

    (本文より)
    ひとつの民族が他の民族に歴史的怨恨をもつというのは、その民族にとって幸福であるのかどうか、わかりにくい。

    ---それは歴史を知らない者の謂だ。

    という人があれば、その人はきっと歴史というものを別なふうに理解しているのだろう。

    歴史は本来、そこから知恵や希を導きだすべきものなのである。

    でなければ人類は何のために歳月をかさねるのか、無意味になる。




    ##########以下、備忘メモ#########


    ●アイルランド系アメリカ人である、映画監督ジョン・フォード。
    彼が、映画監督として成功したあとで、アイルランドに1度来ている。
    その時、イギリスからの独立運動を非合法にしていた叔父と会っている。
    それ以降、映画監督として快進撃を続けるのだが、フォードにとって、アイルランド、抵抗の血、というものが、物語を語る主題になっているのでは、というお話。

    ●アイルランドの中でも、悲しいくらいに貧しい土壌の島。アラン島の話。

    ●ジャガイモが、虐げられし国にとって、どれだけの助けになったか、という話。

    ●ホーンブロアー・シリーズ、小泉八雲、その他文芸から垣間見える、「アイルランド対イングランド」。虐げられし愛蘭土。

    ●搾取の構造。貧しく、単純労働にしか従事できないような巧妙な仕組み。
     その上で、搾取される側のことを、「自業自得だ。愚かなのだから」と見下す精神。差別。
     帝国主義という、侵略と簒奪の仕掛けの分析。それを短期間でやろうとしたヒトラーまでに言及。

  • ダブリンから西へ行き、荒野のゴールウェイへ。アメリカのジョン・フォード監督はアイルランド系移民で父親が移住したとか。故郷を舞台に『静かなる男』を撮った。そして記録映画『アラン』で有名なアラン島へ。そこへ行くことが目的だったようだ。南部を周りダブリンへ戻ったところで終わる。何度も触れられているが、アイルランド人は「英国憎し」でアイルランド対英国、カトリック対プロテスタントという思考で英国の敵は味方という発想だそうだ。1は大変面白く読んだが、2は連載だったせいか同じ話が繰り返されてちょっと辟易してしまった。

    アイルランドは〈偏った言い方をすれば、行かずとも、イェイツやジョイス、あるいはシング、でなければベケットを読むだけでもいいといえるかもしれない。〉

  • 自身の世界観がある。そうして、それが清純な気がする国。

  • 上下巻の下巻。ダブリンに着いた後、西岸ゴールウェイまで向かい、南下して再びダブリンまで戻ってきます。そこで出くわす様々な出来事にアイルランドの反英の国、移民の国、妖精の国としてのアイデンティティを随所に感じます。著者本人も認める通り、今回の旅は歴史の旅というよりむしろ文学の旅になってますが、貴重なアイルランド文学入門になっていますし、アイルランド史もポイントを押さえてますので、アイルランド史の入門書としても面白く読めると思います。

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