吉原花魁日記 光明に芽ぐむ日 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 341
レビュー : 57
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022645357

作品紹介・あらすじ

「もう泣くまい。悲しむまい。復讐の第一歩として、人知れず日記を書こう-」。親の借金のため19歳で吉原へ売られた光子が、花魁・春駒として過ごした日々を綴った壮絶な記録。大正15年、柳原白蓮の序文で刊行され、当時の社会に波紋を呼んだ、告発の書。

感想・レビュー・書評

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  • 吉原の廓に売られ、花魁として生きた女性の記録。作者の森光子は、19歳で1000円と引き換えに吉原の遊郭へと売られる。そして、初見世で見ず知らずの男に処女を奪われ花魁•春駒としての生活を始める。彼女は、そこでの生活を「復讐」として日記に克明に記録する。そうして生まれたのが本書となる。
    吉原に関する文献は多く残されているが、花魁本人の手による記録というのは数が極めて少ない。搾取される側の声はかき消されてしまうのが常であるし、そもそも字を書くことのできない花魁も多くいた。その中で、森光子はおそらくそれなりに高い教養を持ち、そして自らの境遇とその環境を冷静に見る観察眼を持っていた。だから、花魁の世界を今に伝える一級の資料であると同時に、廓の様子がいきいきと描写され読み物としてもとても面白い作品となっている。
    なにより、日記のはしばしから、森光子の意志の強さを感じられるのが最大の読みどころ。たとえ不本意な形で花魁となろうとも、心や誇りまでは決して売ることはない。それはどこまでも自らのものであるという確固とした決意を読み取ることができる。しかしそれは、そのくらいの決意を持たなければ、容易に挫け折れてしまうほどに過酷な状況であることの裏返しでもある。そこには、吉原や花魁といったキーワードから連想させるような華やかさなど微塵もない。ただひたすらに苦しみばかりの毎日があるのみ。その苦しみの毎日の中で女性たちはすり減っていく。吉原という男の快楽の街が、いかに女性の犠牲のもと成り立っていたのか、改めて考えさせられる。
    本書の最後で、彼女は吉原を脱出し晴れて自由の身にとなる。そして、柳原百蓮に保護されるのは、花子とアン」にも描かれている通り(森光子の役は壇蜜が演じている)。彼女のその行動があればこそ、現代の僕たちはこうして本書を手にすることができる。

  • NHK朝のテレビ小説「花子とアン」の中で、白蓮を訪ねて廓から逃げてきたお女郎。それがほんとうにあったことだったと知り、その彼女が書いたこの本を手にしました。貧困を理由に身売りされ、何をするかわからないまま女郎になった春駒の日記は、女性としていろんなことを考えさせられました。

  • 大正の末期。文学の好きな女の子がいた。酒飲みの父が死んで借金が残り、周旋屋に騙されて吉原の遊郭に売られ、日記をつけていた。それが大正15年に出版されたものがあり、数十年を経て3年前に再出版された。

    表紙が少女漫画風の花魁なので子供が女性史の勉強のために読むような本かと思ったが、とんでもなくヘビーな涙なくして読めない体験記録である。

    6年の年季とは言え、借金は簡単に返さないようなからくりになっていて、警察に届けられるので逃げることもできない。病気になっても入れられる病院は牢屋のようなところ、関東大震災の時経営者は被災した女性たちを見殺しにする。

    恥ずかしい日本の歴史がよくわかる。

    読んで少し嬉しかったのはクリスチャンの人がきて、卑屈にならないよう励まして、十字架の指輪を彼女にあげるエピソード。

  • ジャケ買いでしたがものすごく衝撃を受けました。

    八十年という前に、これだけの文才ある(即ちある程度は教育を受けている)聡明な女性が、自分の体を売って生活していたという事実。

    何度も何度も、これは物語ではなく事実の日記なんだと言い聞かせながら、ゆっくり読みました。

    吉原の(あくまでも春駒のいた店での)借金返済制度、一晩でどれだけの相手をしていたか、花魁同士の日々のやりとり。その一つ一つがよく分かります。果たしてこれだけの日記をひたすらに残す事が、私にできるだろうか。森光子さんの聡明さと芯の強さ、ぶれのなさがとても眩しい一冊。

    カバーイラストを描かれているこうの史代さんの漫画の中にも、吉原の女性の事が出てくる話がありますが、彼女たちはこうして暮らしてきたのかと思うと、また違った視点で読めそうです。

    出会えて良かった一冊。
    辛いけれど、目を背けたらいけない事を一つ知れたと思います。

  • 大正時代に借金のかたに吉原に売られた女性の日記。
    ノンフィクションなので、エンターテイメントというよりは歴史的な価値の方が高そう。

    出版を予定したものでないなら、ここまで物語として完成しているのはすごいなぁ。文章は口語に直したと書かれていたけど、それにしても読みやすい。

    日記って、基本的に根暗になりがちだと思うのに、人に優しいままの光子さんがすごい。ちょっとバカでお人好しなのかな。だから商売ッ気がないのにそこそこ売れちゃったんだろうな。
    昔の人の気質なのか、光子さんの個性なのか。

    消息がしれないらしいけど、お幸せになってるとよいと思う。

  • 昭和初期に妓楼に売られてその後脱出した女性の日記。

    2つの側面がある。
    1.人身売買の理不尽、過酷さへの抗議
    2.吉原を取り巻く人々(花魁、楼主他、客)の人間観察。

    両方が背中合わせであり、いずれ筆者が脱出することも分かっているので2を楽しく読む余裕もあり、その2を書くたくましさが1を前向きなものにしている。筆者もマンドリンを置いていかせたり、稼ぎ高が上位に来たり、なかなかのものではある。しかし非業の最期を遂げる人もあり、警察官、客も含めた社会もグルみたいなもので、ウーンとなる。清川さんに対する筆者の気持ちの変化がリアル。

  • 2015.07.04 田山花袋『蒲団』を検索して、偶然見つける。

  • こうの史代のカバーイラストにひかれて借りた。大正時代、吉原に売られて娼妓として暮らした花魁・春駒(森光子)の日記。当時の女性の地位がいかに低く、遊廓のルールがいかに理不尽であったか、内部からの視点で知る一級の資料。同じ女性として、読んでいて悲しみと憤りを共に感じた。光子は最後、柳原白蓮を頼って吉原を脱出し自由廃業する。華族出身の白蓮が、彼女の心情をどれだけ理解したかは定かではないけれど、彼女にとって救いの神だったのは間違いない。しかし自由廃業できた娼妓など氷山の一角に過ぎず、不遇の中で世の中を恨みながら亡くなって行った多くの女たちがいて、それは現代にも変わりなく存在することを、胸に刻んでおきたい。

  • 周旋屋に「お酒を注ぐだけの仕事だから」と騙されて吉原に売られた女性が、宮崎白蓮宅に駆け込んで抜け出すまでの2年間の日記。
    売られたと言っても娘を担保に金を借りただけで、花魁の稼ぎから借金を返していくシステム。客の払った金の大半は店にいき、花魁の手元に残るのは1割程度。その中で日々の費えや仕事道具をそろえ、客が金を払わなければ花魁が負担、ものを壊せばそれも花魁が責任を取る。お茶をひいても罰金で、逆に借金が増えていき吉原から抜けられないシステム。壮絶。

  • 1924年、実際に群馬の田舎から吉原に売られた女性の日記。
    1924年といえば大正13年、谷崎の痴人の愛や、宮沢賢治の春と修羅が世に出た年だ。
    そう考えると、案外最近までこういった文化が残っていたんだなと思う。

    今までいろんな文献や資料を見るに、廓の女性は大変だと思っていたが、実際に存在が確認できる人の手記は重みが違う。
    本当の吉原の実態が廓の内で生きた者の言葉で語られる。

    森光子さんは、歌人の柳原白蓮を頼って、吉原から脱走する。
    柳原白蓮について以前調べたことがあって、妙なところで繋がるもんだと思った。
    白蓮は華族出身で、縁戚や炭鉱王と政略結婚させられたが、青年記者と駆け落ちした当時スキャンダラスな女性だった。この人もなかなか波瀾万丈で興味深い人生である。

    文章も上手だし、言葉も現代と全く変わらないので、とても読みやすかった。(編集してるのかな?)

    廓の話を見るにつけ、女性たちへの同情心とともに、不謹慎な好奇心が湧く。吉原の文化や人間関係も面白い。
    今までの吉原に関する知識・印象に実際の声が加わり、当時を窺い知るとても貴重な資料だと思った。

    続編の『春駒日記』も読もうと思う。

    それにしてもこの装丁はどうなの。

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