犬身 上 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 210
レビュー : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022645647

作品紹介・あらすじ

幼い頃から「犬になりたい」と切望する八束房恵は、玉石梓という理想的な犬の飼い主に出会い、「あの人の犬になりたい」と願うようになる。そこへ謎の男・朱尾献が現れ、「犬化願望を叶えてやる代わりに魂をよこせ」と契約を迫る。読売文学賞を受賞した傑作長編小説。

感想・レビュー・書評

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    自分の性別に違和があるのが性同一性障害なら、自分は種に違和のある種同一性障害だ。
    そして運命の相手と出逢う。恋愛がしたいとは思わない、ただあの人の犬になりたいのだ…。

    好きな人間に犬を可愛がるように可愛がってもらえたら最高、というセクシュアリティ。
    そこに性的なものは存在しない…変わった切り口から始まる物語、内容が想像できなかった。
    唖然とする展開にファンタジー的なものを感じましたが、何度も出てくる「魂」という言葉、それに尽きるのかな。
    私も犬好きで「彼氏より犬の方が好きだろう」と友人に指摘されてドキッとした事があります。比較できるものではありませんが、否定もできなかった…。
    松浦さんらしく性についての深い問いもありましたが、ペットと暮らす喜び、人と犬の絆、 そういった部分が強く印象に残った。生き物と心が通じ合う瞬間は確かに存在します。
    見つめ合い、頬を寄せて、体をなでさすり、微笑み合う至福の時。言葉なんていらない。

  • 四章のうち、第一章「犬憧」読んだだけで
    十分におもしろく。
    逆に、残りはどう展開すんの!?
    って感じにさせるくらいだった。

    まぁ、それから先は
    どろどろ。を絡めていっちゃったけど。
    でもそれも面白かった。

    なんだろぉ。
    なんか彼女の何かに対する不満さ、
    というか、じれったさというものみたいのが
    なんか響いてきたかなぁ…

  • 吾輩は犬である。
    ってとこなんだろうな。
    面白し。

  • 「自分は人間でなく犬に生まれるべきだった」幼少期から犬化願望を持つ八束房恵は理想の「飼い主」とでも言うべき女性・玉石梓と出逢う。「あの人の犬になりたい」と願う房恵に「その望みを叶えるかわりに魂をもらう」と謎の契約を迫る朱尾献が現れた。果たして本当に犬となり、梓の犬・フサという新たな生を梓と共に生きようとするが、フサは牝犬ではなく牡犬に変えられてしまっていた。更に、兄をはじめとする問題を抱えた梓の家族のこと、梓が兄の彬に肉体関係を強要されていることも知ってしまい――

    主要人物二人の名前が明らかに八犬伝意識(八房と玉梓。あと、思えばフサと伏姫のフセは語感が似ている)の作品で興味があったから読んでみたいな~と思っていたのでいよいよ回ってきました読書のターンが。もうちょっと八犬伝らしい要素があるかなと思ってたのだけど、名前以外になかったのでちょっとしょんぼり。あと梓は玉梓って言うよりは伏姫に近い。
    梓の犬になる、というストーリーは知っていたのだけどまさか本当にこの瞳に吸い込みたくてあたしは犬になる(物理)だとは思わなかったでございますよw 物理、はい、人間をやめて本当に犬になったんですよ。精神的な意味であなたの犬になりたい、つまり女の子同士の百合っぽいキャッキャウフフがあるかと思ったらいい意味で予想裏切られましたで… 落語の元犬の逆パターンですねえ。こんなにファンタジーな話だとは思わなかったのでこれもいい意味で予想裏切られてます。朱尾は7割くらいキュウべぇみたいなやつ、「僕と契約して、化け犬になって欲しいんだ!」で大体説明出来るのがすごい。「説明は省いたけど」まであるとは驚きだぞ。フサが梓に懐いて愛情表現してるところ、犬を愚弄するように言ってきたのはちょっと腹が立ったっす。
    まだ下巻があるので大した感想は書けないけど、レイプ的な感じの近親相姦はもっと嫌いなのでうへぁ……となった。大体想像ついてはいたけど。フサが契約を破るようなことになったらなったですごく胸熱。百合でノマカプなの最高過ぎる(だからそうじゃないって)八犬伝の八房もこんなんだったらもっと胸熱ですわ。あと、なんか文章の書き方が妙に気になるというか…なんだろうな。なんかちょっと引っ掛かるような何というか。なんか気になる。変な文章ではないけど。

  • 主人公は地方の情報誌の編集業で生計を立てる、30代の女性。幸せでもなく不幸でもなく、孤独だけれども、どこにでもいそうな人物。しかし、そんな彼女は常人には及びもつかない願望を幼少期から培ってきました。それは文字通り”犬になりたい”という願望。

    そして、憧れの飼い主を見つけた彼女の前に、バーのオーナーにして謎の狼男(狼になったり、人間になったり)・朱尾が現れます。魂と交換に犬への変身をついに叶えますが…。

    歪んだ家族関係(兄の性的虐待・母のいやがらせ)に翻弄される飼い主を、犬となった主人公は必至に守りぬこうとします。これはひょっとしたら献身の物語なのかな?答えは下巻に、ということでしょうか…。

    個人的には、犬化願望を叶えてくれる謎の狼男・朱尾に心惹かれます。主人にしっぽを振って媚びる犬を軽蔑する気持ちを、この人物が担っていて、物語に深みを与えているように感じました。

  • 犬になりたいという願望のある女性が主人公ですが、けして「ご主人様」系のSM小説ではありません(苦笑)。人間である自分に違和感を覚えるほどの犬好きが高じて、もういっそ犬に生まれたかったっていう純粋な(?)変身願望です。そこへファウストにおけるメフィストフェレスさながら、犬にしてやる代わりに魂を寄越せという謎のバーテンダーが現れ、主人公は本当に犬に生まれ変わり、憧れの女性に飼われることに。念願の犬になった主人公はとても幸福なのですが、次第に飼い主の梓の複雑な家庭の事情が明らかになっていって・・・

  • 面白いけど気持ち悪い。けどやっぱり面白い。下巻にいきます。

  • 突拍子もない設定にぐいぐい引き込まれる。犬好きだから尚のこと、それを指す表現も素晴らしい。
    だがわたしがこの本のみならず、松浦さんの作品と言う作品を大声でお勧め出来ないことはかなり惜しい。それが松浦さんのいいところと言えばそうなのかも知れないが、全てを許容し理解出来る人はかなり限られるのではないだろうか。これに関して言えば勿体無いの一言に尽きる。

  • 松浦理英子は、僕の学生時代に『親指Pの修業時代』が大ベストセラーになったが、それ以来ご縁のなかった作家。と言っても、もともと寡作な人らしく親指P以降、長編小説はこの『犬身』(2007年)含めて 3作くらいしか出ていない。

    妙にフェティッシュな犬への憧憬が描かれる序盤から、バーテンダー朱尾が本性を表わしておどろおどろしい雰囲気を醸し出す中盤、そしていびつな家族とその崩壊を描く終盤と、まったく先の見えないジェットコースターのようなストーリー。作者の発想の奇抜さもあいまって、次の展開がまったく判らないので、最悪の事態を想像して血圧が上がることしきりだったが、まあそれなりの終末に収束していただいて、本当にほっとした。

  • 犬まみれ。
    荒唐無稽な話なのに、ぐいぐい引き込まれてすらすら読めてしまった。まるで散歩中の犬にぐいぐいリードを引っ張られて、知ってはいたけど行ったことのなかった場所に連れて来られてしまったみたいなそんな気分。いや、自分は犬の散歩なんかしたことないですけどね。っていうか猫派なんですけどね。
    犬視点で描写される世界はやはり嗅覚や聴覚、それから皮膚感覚に依存するところが大きくて、何とも生々しくて生温い。自分の近くにいる犬が、もしもこんなふうに自分達の話に聞き耳を立てて自分達を観察しているのだと考えると非常に気味が悪い。だから嫌いなんだよ、犬は。

    魂と引き換えにして手に入れた生活に、不穏な「匂い」が立ち込めてきた辺り。房恵は幸せになれるのか。梓は幸せになれるのか。朱尾は一体何者なのか。とりあえず終わりが全く予想できない。

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