犬身 上 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.51
  • (12)
  • (26)
  • (25)
  • (7)
  • (3)
本棚登録 : 390
感想 : 32
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022645647

作品紹介・あらすじ

幼い頃から「犬になりたい」と切望する八束房恵は、玉石梓という理想的な犬の飼い主に出会い、「あの人の犬になりたい」と願うようになる。そこへ謎の男・朱尾献が現れ、「犬化願望を叶えてやる代わりに魂をよこせ」と契約を迫る。読売文学賞を受賞した傑作長編小説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 上巻のみ登録
    自分の性別に違和があるのが性同一性障害なら、自分は種に違和のある種同一性障害だ。
    そして運命の相手と出逢う。恋愛がしたいとは思わない、ただあの人の犬になりたいのだ…。

    好きな人間に犬を可愛がるように可愛がってもらえたら最高、というセクシュアリティ。
    そこに性的なものは存在しない…変わった切り口から始まる物語、内容が想像できなかった。
    唖然とする展開にファンタジー的なものを感じましたが、何度も出てくる「魂」という言葉、それに尽きるのかな。
    私も犬好きで「彼氏より犬の方が好きだろう」と友人に指摘されてドキッとした事があります。比較できるものではありませんが、否定もできなかった…。
    松浦さんらしく性についての深い問いもありましたが、ペットと暮らす喜び、人と犬の絆、 そういった部分が強く印象に残った。生き物と心が通じ合う瞬間は確かに存在します。
    見つめ合い、頬を寄せて、体をなでさすり、微笑み合う至福の時。言葉なんていらない。

  • 四章のうち、第一章「犬憧」読んだだけで
    十分におもしろく。
    逆に、残りはどう展開すんの!?
    って感じにさせるくらいだった。

    まぁ、それから先は
    どろどろ。を絡めていっちゃったけど。
    でもそれも面白かった。

    なんだろぉ。
    なんか彼女の何かに対する不満さ、
    というか、じれったさというものみたいのが
    なんか響いてきたかなぁ…

  • 吾輩は犬である。
    ってとこなんだろうな。
    面白し。

  • ただ「犬が好き」なだけじゃない、私は「犬になりたい」
    自称、種同一性障害の八束房恵。恋愛には興味がないアラサーの編集者。そんな彼女が、理想の犬の飼い主と出会ってしまったら...。
    長年の切望が叶えられ、仔犬のフサとなった房恵。理想の飼い主、玉石梓の元で幸せな犬生の送れると、胸躍るフサから見た人間の世界。

    一つ一つの描写が丁寧でリアル。愛らしいのもは、より愛らしく。悍しいものはより、悍しく。

    飼い犬は、人間の言葉が分かっているかと思う時があったけど、もしかしたら、本当に分かっていたのかもしれない。

  • 予想と違う始まりだった。なんかぞわぞわした。犬そんなに好きじゃないからいけないの?

  • 犬好きにはたまらない本。

    犬が大好きで犬になりたいと切望していたところ、バーで出会った男に出会い…

    後半はどろどろな人間模様が犬視点で書かれていて、描写や表現がとってもリアルで読んでて面白かったし続きが気になる!

  • 犬身 上(朝日文庫)
    著作者:松浦理英子
    朝日新聞出版
    犬好きにはうってつけに一冊です。著作者による本格的な長篇小説の待望に文庫化。
    タイムライン
    https://booklog.jp/timeline/users/collabo39698

  • 「自分は人間でなく犬に生まれるべきだった」幼少期から犬化願望を持つ八束房恵は理想の「飼い主」とでも言うべき女性・玉石梓と出逢う。「あの人の犬になりたい」と願う房恵に「その望みを叶えるかわりに魂をもらう」と謎の契約を迫る朱尾献が現れた。果たして本当に犬となり、梓の犬・フサという新たな生を梓と共に生きようとするが、フサは牝犬ではなく牡犬に変えられてしまっていた。更に、兄をはじめとする問題を抱えた梓の家族のこと、梓が兄の彬に肉体関係を強要されていることも知ってしまい――

    主要人物二人の名前が明らかに八犬伝意識(八房と玉梓。あと、思えばフサと伏姫のフセは語感が似ている)の作品で興味があったから読んでみたいな~と思っていたのでいよいよ回ってきました読書のターンが。もうちょっと八犬伝らしい要素があるかなと思ってたのだけど、名前以外になかったのでちょっとしょんぼり。あと梓は玉梓って言うよりは伏姫に近い。
    梓の犬になる、というストーリーは知っていたのだけどまさか本当にこの瞳に吸い込みたくてあたしは犬になる(物理)だとは思わなかったでございますよw 物理、はい、人間をやめて本当に犬になったんですよ。精神的な意味であなたの犬になりたい、つまり女の子同士の百合っぽいキャッキャウフフがあるかと思ったらいい意味で予想裏切られましたで… 落語の元犬の逆パターンですねえ。こんなにファンタジーな話だとは思わなかったのでこれもいい意味で予想裏切られてます。朱尾は7割くらいキュウべぇみたいなやつ、「僕と契約して、化け犬になって欲しいんだ!」で大体説明出来るのがすごい。「説明は省いたけど」まであるとは驚きだぞ。フサが梓に懐いて愛情表現してるところ、犬を愚弄するように言ってきたのはちょっと腹が立ったっす。
    まだ下巻があるので大した感想は書けないけど、レイプ的な感じの近親相姦はもっと嫌いなのでうへぁ……となった。大体想像ついてはいたけど。フサが契約を破るようなことになったらなったですごく胸熱。百合でノマカプなの最高過ぎる(だからそうじゃないって)八犬伝の八房もこんなんだったらもっと胸熱ですわ。あと、なんか文章の書き方が妙に気になるというか…なんだろうな。なんかちょっと引っ掛かるような何というか。なんか気になる。変な文章ではないけど。

  • 主人公は地方の情報誌の編集業で生計を立てる、30代の女性。幸せでもなく不幸でもなく、孤独だけれども、どこにでもいそうな人物。しかし、そんな彼女は常人には及びもつかない願望を幼少期から培ってきました。それは文字通り”犬になりたい”という願望。

    そして、憧れの飼い主を見つけた彼女の前に、バーのオーナーにして謎の狼男(狼になったり、人間になったり)・朱尾が現れます。魂と交換に犬への変身をついに叶えますが…。

    歪んだ家族関係(兄の性的虐待・母のいやがらせ)に翻弄される飼い主を、犬となった主人公は必至に守りぬこうとします。これはひょっとしたら献身の物語なのかな?答えは下巻に、ということでしょうか…。

    個人的には、犬化願望を叶えてくれる謎の狼男・朱尾に心惹かれます。主人にしっぽを振って媚びる犬を軽蔑する気持ちを、この人物が担っていて、物語に深みを与えているように感じました。

  • 犬になりたいという願望のある女性が主人公ですが、けして「ご主人様」系のSM小説ではありません(苦笑)。人間である自分に違和感を覚えるほどの犬好きが高じて、もういっそ犬に生まれたかったっていう純粋な(?)変身願望です。そこへファウストにおけるメフィストフェレスさながら、犬にしてやる代わりに魂を寄越せという謎のバーテンダーが現れ、主人公は本当に犬に生まれ変わり、憧れの女性に飼われることに。念願の犬になった主人公はとても幸福なのですが、次第に飼い主の梓の複雑な家庭の事情が明らかになっていって・・・

  • 面白いけど気持ち悪い。けどやっぱり面白い。下巻にいきます。

  • 突拍子もない設定にぐいぐい引き込まれる。犬好きだから尚のこと、それを指す表現も素晴らしい。
    だがわたしがこの本のみならず、松浦さんの作品と言う作品を大声でお勧め出来ないことはかなり惜しい。それが松浦さんのいいところと言えばそうなのかも知れないが、全てを許容し理解出来る人はかなり限られるのではないだろうか。これに関して言えば勿体無いの一言に尽きる。

  • 松浦理英子は、僕の学生時代に『親指Pの修業時代』が大ベストセラーになったが、それ以来ご縁のなかった作家。と言っても、もともと寡作な人らしく親指P以降、長編小説はこの『犬身』(2007年)含めて 3作くらいしか出ていない。

    妙にフェティッシュな犬への憧憬が描かれる序盤から、バーテンダー朱尾が本性を表わしておどろおどろしい雰囲気を醸し出す中盤、そしていびつな家族とその崩壊を描く終盤と、まったく先の見えないジェットコースターのようなストーリー。作者の発想の奇抜さもあいまって、次の展開がまったく判らないので、最悪の事態を想像して血圧が上がることしきりだったが、まあそれなりの終末に収束していただいて、本当にほっとした。

  • 犬まみれ。
    荒唐無稽な話なのに、ぐいぐい引き込まれてすらすら読めてしまった。まるで散歩中の犬にぐいぐいリードを引っ張られて、知ってはいたけど行ったことのなかった場所に連れて来られてしまったみたいなそんな気分。いや、自分は犬の散歩なんかしたことないですけどね。っていうか猫派なんですけどね。
    犬視点で描写される世界はやはり嗅覚や聴覚、それから皮膚感覚に依存するところが大きくて、何とも生々しくて生温い。自分の近くにいる犬が、もしもこんなふうに自分達の話に聞き耳を立てて自分達を観察しているのだと考えると非常に気味が悪い。だから嫌いなんだよ、犬は。

    魂と引き換えにして手に入れた生活に、不穏な「匂い」が立ち込めてきた辺り。房恵は幸せになれるのか。梓は幸せになれるのか。朱尾は一体何者なのか。とりあえず終わりが全く予想できない。

  • おんなのひとらしい、強い思い(こみ?)が、現実になる話。
    犬の話だからか、嗅覚、味覚、触覚の表現がひじょうに細やかで、というか文章が全体的に丁寧で、ありありと光景が目に浮かぶ。

  • 自身は「人間よりも犬に生まれるべきだった」、性同一性障害ならぬ「種同一性障害」なんじゃないかと思い詰める女性、という突拍子もない設定だが思いっきり引き込まれる。奇抜な世界観と喜怒哀楽の繊細な移り変わりの描写の両立はマジですごい。

  • いつの頃からか、犬になりたい、自分は本来犬に生まれてくるべきだったと思って生きてきた房恵。ある日怪しげなバーテンダー朱尾との契約で、子犬に変身を遂げ、飼い主として惚れ込んだ梓の飼い犬となる。だが、そこで知ることになる梓の秘密に犬であるフサは心を痛め…。
    なんとも不思議な小説。いったいどこへ向かってどのように終わりを迎えるのか…読んでいてもまったく予想できなかった。 “元”人間の犬が語り手となる“おかし味”を随所にちりばめながらも、その目が追うストーリーはシリアス。そのちぐはぐさの象徴のような存在が朱尾だ。全体としては好きな部類に入る小説だったが、この朱尾だけは表現のしようのない気味悪さを感じてしまって馴染めなかった。
    ☆読売文学賞

  • 私は生まれてくる「種」を間違えたのだという考えを持つ女性が主人公。
    作品紹介の「あの人の犬になりたい-」という文だけ読むとご主人様は男性かと思いきや女性。
    人間のように損得勘定ナシで無償の愛をそそぎ合う関係に憧れているとの事。
    「犬」として梓を愛し、愛されたいと切望し、正体不明のバーのマスター朱尾と魂の取引をして本当に犬になってしまう。
    しかし、梓の飼い犬となり、梓と共に暮らしていくうちに異常な家族関係を知ってしまう…。
    別に露骨な表現・言葉ででネチネチ書かれているという訳でもないのに兄との行為の場面や母親からの言葉など読むのが本当に辛かった。
    下巻で救いがあってほしい。

  • 犬が飼い主恋しさに人間になる話は今まで読んだ気がするけれど、その逆は初めてかも^_^前者は犬を飼っていたら誰もが想像し願望する事もあると思うけど、自分自身が犬とは…かなりの犬マニアかド変態か(||゚Д゚)くらいに思ってちょっと引いてたのですが。
    読み進めていくうちに、この突拍子もない状況も楽しめる程引き込まれていました。
    房枝は犬になっただけでなく、牡犬になって性まで変えられてしまうのですが、全く無になった自分に向けられるものは、何の計算も性欲もない見返りを決して求めない唯の無垢な愛情。これこそ究極の愛情なのではないか、と思ってしまう。
    背景には房枝の愛する梓の不幸がある訳ですが、それが今後どう房枝に関わって来るのか気になるところです。狼マスターとのやり取りはちょっと笑えて面白かったです^_^

  • 2012/04/19読み始め。2012/04/25読了。ひきこまれる。こんな設定をよくかんがえたものだ。

  • 犬が好きなあまり、性同一性障害のごとく、自分が犬なら…と常に考えていた房恵は、バーの怪しいマスターに契約を持ちかけられる。

    理想的な犬の飼い主玉石梓の犬にしてやる代わりに魂を寄こせ。怪しみながらも合意した房恵は白黒模様のオスの仔犬フサとなった…

    かなりぶっとんだ設定で最初はついていき辛いけど、段々入り込んできます…
    犬を愛でたい!

  • 2012年2月読了。犬が好きすぎる女性が、不思議なバーのマスターの力によって犬になる話。と聞くとファンタジーっぽくて、たしかに中盤までの犬エピソードには猫派のわたしでもホンワカした気分になります。でも後半、犬になった後の飼い主の身辺がとってもどろどろしてる。だんだん話が重たくなっていくほど話に入りこめて、上下巻の長編も飽きずに読めました。
    最後、飼い主のほうは決着がつくんだけど、バーのマスターが何者なのかが書かれてなかったのがモヤモヤ。マスター不思議すぎ。
    マスターの謎が明かされてないので、続編があってもいいですね~!

  • おもしろい!!!犬になっちゃった…朱尾さんのキャラ良い!

  • 幼少から、「犬になりたい」と強く切望していた房恵。

    そんな彼女はひょんなことから玉石梓という女性と知り合う。
    彼女はハルという犬を飼っていたが、
    どんなことをしてでも飼い犬を守ろうとした姿に、
    「あの人の犬になりたい」と、房恵は願うようになる。

    房恵の魂に興味をもったというバーのマスター、朱尾は、
    魂と引き換えに、房恵を犬にしてくれるという契約を持ちかける。

    朱尾の計らいで、みごと玉石梓の飼い犬になれた房恵は、
    梓と共に暮らすうちに、梓の家庭に抱えられた秘密を知ってゆく。

    犬となったフサは、梓を救うことが出来るのだろうか。


    犬になってみたい、と思ったことがある人は、決して少なくないと思う。

    この本は、そんな願望を形にした、ファンタジックな本なのかな、と思っていたけれど、
    そんな優しい本ではなく、もっと、どろどろとして、なまぐさく、重たい作品だった。
    犬になった房恵よりも、その房恵の目を通して語られる、玉石梓とその家族のヒューマンストーリーだったように感じた。

  • 上巻を読み終えた今、どうやったって幸せになれないだろうと思う。
    下巻の最後に彼女と彼女の犬に幸せが待っているなんて絶対に思えない。

    全ての頁に「犬」にまつわることばや名前が出てくる様に感じる。
    犬まみれだ。

  • 下巻にコメント。

  • 犬になってしまう設定はおもしろかったけど、家族の人間関係など重たいテーマを含んでいた。ファンタジーによりじっとりしたリアリティーが助長されているように感じた。

  • 101030

  • 犬になったよ……!
    展開が面白い……
    でもきんしんそうかんやらなにやらちょっと苦手なの多かったー

全32件中 1 - 30件を表示

著者プロフィール

1958年生まれ。78年「葬儀の日」で文學界新人賞を受賞しデビュー。著書に『親指Pの修業時代』(女流文学賞)、『犬身』(読売文学賞)、『奇貨』『最愛の子ども』(泉鏡花文学賞)など。

「2022年 『たけくらべ 現代語訳・樋口一葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

松浦理英子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×