乱反射 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.88
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本棚登録 : 1544
レビュー : 234
  • Amazon.co.jp ・本 (600ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022646385

作品紹介・あらすじ

地方都市に住む幼児が、ある事故に巻き込まれる。原因の真相を追う新聞記者の父親が突き止めたのは、誰にでも心当たりのある、小さな罪の連鎖だった。決して法では裁けない「殺人」に、残された家族は沈黙するしかないのか?第63回日本推理作家協会賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • どこにでもいる、普通の人々の何気ない行為が、重大な事件につながり、しかし誰もがその結果に無自覚で、責任を認めない、まさに現代社会を告発する書。
    「みんな少しずつ身勝手で、だから少しずつしか責任がなくて、それで自分は悪くないと言い張る」人たち、「己のちょっとした都合を押し通し、それが巻き起こした波紋の責任など取ろうとしない人たち。自分だけがよければいいと考え、些細なモラル違反を犯した人たち」、被害者の父親が告発する言葉に、誰が身に覚えがないといえようか、書を閉じ、己の胸に問いかけてみたい。

  • 人々の我儘や、罪悪感を持ちながらも「まぁいっかぁ」とやってしまった事が、積み重なって子どもを死なせてしまい、果たしてその我儘やマナー違反、ついやってしまった事がそれぞれ罪になるのか、それともそれを罪だと糾弾する遺族はただの言いがかりなのか、子どもの死はただ運が悪かっただけなのか、を問う問題作。

    正直に言うと寝覚めの悪い話だ。

    だが決して面白くないと言うことではなく、子どもが死に至るまでの、初めは何なのかわからない様々な行動が、まるでバタフライエフェクトのように、だんだんと繋がっていくまでの過程は、気分が良いとは言えないながらもテンポも良く引き込まれていく。

    そして子どもの死の罪を糾弾しようとする主人公の場面に変わっていくと考えさせられてしまう。

    所々に散りばめられている、些細なと言って良いかはわからない人の我儘やマナー違反は、確かに自分もやった事がありそうな、またはやってしまいそうなことで、仕方ないかと思いつつ、
    主人公である子どもを死に追いやられた遺族の立場から見ると、悪いとわかっていても法に触れてなければ何をやっても罷り通るのかと憤りを感じつつ、
    主人公がネットで事の顛末の意見を求めた際の、「気持ちはわかるが、まるで重箱の隅をつついているようで、ただの言いがかりにしか聞こえず、そんことを言い出したらこの世の中の人みんなが犯罪者になってしまう」とのメールに納得したり、
    と、どんな立場にも共感してしまう自分に気付く。

    何が正しいのか、自分ならどうするだろうとか、結論を出すのは難しいが、最近話題に上がったりするマナーについてや周りの迷惑を考えない行動など、考えるきっかけにはなるだろうと思う。

  •  ある地方都市に住む新聞記者の2歳になる息子が事故で亡くなった。真相を知るべく訪ね歩く彼が垣間見たのは、自己を正当化する者とか自分さえ良ければいいという誰も責任を取らないという現実だった。仔犬のフンを放置する飼い主の老人、街路樹伐採に反対する主婦たち、街路樹のするべき診断を怠った業者、救急診療を拒否したアルバイト医、風邪ぐらいで夜間診療外来を頻繁に利用する学生、事なかれ主義の市役所職員、車庫入れに手間取りパニックになりそのまま放置してしまう女性など、モラルの問題やほんの些細な悪意のないルール違反が幾重にも重なる。ちょっとくらいいいだろうと、思ってしまう些細なルール違反。実は彼にもあったのだと気付く・・・。

     一頃問題になった救急患者のたらい回しとかも描かれ、謎解きがあるミステリィっていうよりか社会派的なメッセージ性がある。600ページあり前半は退屈気味であるが、中盤から事件の核心へと展開していくという訳で、やや冗長気味の感も否めない?けれども
     物語とはちょっと意味合いが違うかもしれないがこんな事を思い出した。
    空き地に放置していた車の窓が割られそのまま放置していると、やがてすべての窓が壊されるという割れ窓理論。それから導きだされたのが軽微な秩序違反行為でも取り締まることによって犯罪の抑制にもなるというもの。誰の心の奥底にも巣食う安易な気持ち、心して読みたい物語だと思う。

  • 自分も含めてですが軽い法律違反とマナー違反をしている人に読んで欲しい。言い改めれば現代の日本人の老若男女の殆どの人達に読んで欲しい!

    自分のとった行動が自分の想像力の無さで人を苦しめる。
    ちょっとしたルール違反や嘘が自分と全く関係ない人に不幸を与える可能性がある。
    そのくせ、自分の罪は認めず頭を下げたら負けという不道徳な文化だけはきちんと守る

    本作はそのようなモラルを扱ったテーマ

    登場人物多数!
    多数の小さなマナー違反が小さな子供の命を奪う物語!
    非常に現代的で悲しい物語です。

  • 圧倒的な完成度。
    個人的には文句なしの評価5です。
    6でもいいくらいです。

    「誰もが持つちょっした悪い部分が積み重なって」起こった2歳の男の子の死。
    やり場のない被害者の怒りと、殺人の罪を認めるにはあまりに小さい加害者の悪。

    法に反するわけではないが、モラルに欠ける軽率な行動がもたらし得る最悪のケースがここにはあります。

    誰しもが意図せずに殺人の加害者になる可能性があると社会に訴える、強いモラル喚起のメッセージを含んだ作品。

    非常におもしろかったです。

  • 奥田英朗氏の著作かと思いました。話の展開の仕方がよく似てると感じました。つまり滅茶苦茶面白いってことです。こんな些細なことがこんな結末に。最高に面白いミステリー(なんでしょうか?)というか、もしかして鋭い社会派小説かもしれません。
    ただ、プロローグとエピローグ(とは書いていませんが)は全くいらないと思いました。本編だけで十二分に小説世界に浸れます。傑作です。

  • こんなにイヤな話で長大なのに、貫井さん、文章が上手いから、すらすら読めちゃったよ。イヤミスなんて言葉では片付けられない内容。たった一回のミスではなく、積み重ねた上での重大結果なんだよね。これがバタフライエフェクトなのか。被害者になるより、加害者になる確率の方が高そうで怖い。

  • 誰かが殺したわけではなく、誰もが加担した殺人者のいない殺人。
    真綿で人が死ぬとは思っていない人々は誰もが真綿を持っていて、誰かはその真綿で首を絞められて死んだ。
    本音と建前を使い分ける人々の陰湿さが産み出した、やりきれない物語。
    誰かが不幸になるけれど、人間である以上ある程度は仕方のない事なのかなと思う。

  • プレゼントしてもらって初めて貫井さん読んでみました!一人の幼児の死から始まる物語。とても辛く考えさせられる内容でした。分厚い本ですがいろんな人々のエピソードが描かれていて、それがいろいろ展開していきドンドン読み進めてしまうような感じでした!モラルについてすごく考えさせられます。このぐらいいいだろうとか自分一人くらい大丈夫だろうって軽い気持ちでマナー違反とかするのは本当にダメだと強く思いました。重く辛過ぎる内容なのですが、いろんなエピソードが後半繋がっていき、作品として面白かったです!貫井さんスゴイですね☆

  • 初めて読んだ貫井作品。本の分厚さになかなか手が出せなったが、読み出したら止まらなかった。

    複数の人々の、少しずつの我儘なルール違反・モラル低下が重なり、やがて2歳の少年が死亡する事故に繋がる。
    前半はそれぞれのルール違反の模様が延々と描かれ、「これ全てどう繋がるんだろう」と不思議に思いながら読み進めていったが…。なるほど、よくここまで話の筋道立ててまとめられるなぁと驚いた。
    前半の章題がー40、-15と事件までのカウントダウンをしているから不気味さも加わる。

    事故後に遺族である父親が関係者一人ひとりを訪れ真相を究明するが、そこでは決め手となった最後の造園業者を除いた全ての人間が「自分は悪くない」「なぜ自分だけが責められる」と謝罪の一言もない。
    犬フン放置の老人と車放置一家が特に腹立たしかったなぁ。。。
    愕然・呆然とする父親。やるせなさ、無力感とはこういうことかと読んでて気分が沈んだ。

    自分も全くルール違反しないで生きてきたとは言えない。誰だってそうだと思う。
    「やってるのは自分だけじゃない。みんなもやってること」と開き直ったり甘えが出ることも人間誰しもあることだ。
    だけど作中にもあったが“権利ばかり主張して義務を果たさない”人間は醜いし、自分の非を指摘されてそれを認められなかったり謝罪できないことは恥ずかしい。
    登場人物たちを反面教師にできるよう、自分の立ち振る舞い方は気をつけなくちゃ。

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。93年『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で日本推理作家協会賞、『後悔と真実の色』で山本周五郎賞を受賞。他書に『天使の屍』『崩れる』『灰色の虹』『新月譚』『微笑む人』『ドミノ倒し』『私に似た人』『我が心の底の光』など多数。

「2018年 『女が死んでいる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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