乱反射 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.87
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本棚登録 : 1881
レビュー : 260
  • Amazon.co.jp ・本 (600ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022646385

作品紹介・あらすじ

地方都市に住む幼児が、ある事故に巻き込まれる。原因の真相を追う新聞記者の父親が突き止めたのは、誰にでも心当たりのある、小さな罪の連鎖だった。決して法では裁けない「殺人」に、残された家族は沈黙するしかないのか?第63回日本推理作家協会賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • どこにでもいる、普通の人々の何気ない行為が、重大な事件につながり、しかし誰もがその結果に無自覚で、責任を認めない、まさに現代社会を告発する書。
    「みんな少しずつ身勝手で、だから少しずつしか責任がなくて、それで自分は悪くないと言い張る」人たち、「己のちょっとした都合を押し通し、それが巻き起こした波紋の責任など取ろうとしない人たち。自分だけがよければいいと考え、些細なモラル違反を犯した人たち」、被害者の父親が告発する言葉に、誰が身に覚えがないといえようか、書を閉じ、己の胸に問いかけてみたい。

  • 題名が気になり買った一冊。

    いろんな所から始まる話が事件をきっかけに、すべてが絡んでいく話だった。

    始めは個々の話が長く、いらつく内容もあったので、ちょっと読むのがダルくなった。
    しかし最後まで読めば納得する話になった。

    細かに個々の心情が書かれているから個々の話が長くなるし、それが必要な内容の話だっと思う。

    最後の主人公のショックは自分自身の心にも突き刺さった。

    一回ぐらいいいや、わからなければいいや、無責任な行動が最悪な事に繋がるかもしれない。
    いろいろ衝撃をうけ、反省しなきゃならないなと感じた小説でした。


  • 池井戸潤がカタルシスの人なら、貫井徳郎は反カタルシスの人といえるんだろうか、それだけ物語の中の登場人物や読み手の気持ちは解決しないし報われない話。
    冒頭の一節から、これから起きる事件の顛末は予想がつくのだが、次々と出てくる登場人物たちが、悲しい事件のどの部分にどう関わっていくんだろう、とページを繰る手が止まらない。
    ミステリじゃないけれど、そんなことを推論しながら読むと新しいミステリ。

    父親の心の整理に光明の兆しが見えただけでも、読者の立場としては、まだ他の作品に比べ報われた方なのかも。

  • 人々の我儘や、罪悪感を持ちながらも「まぁいっかぁ」とやってしまった事が、積み重なって子どもを死なせてしまい、果たしてその我儘やマナー違反、ついやってしまった事がそれぞれ罪になるのか、それともそれを罪だと糾弾する遺族はただの言いがかりなのか、子どもの死はただ運が悪かっただけなのか、を問う問題作。

    正直に言うと寝覚めの悪い話だ。

    だが決して面白くないと言うことではなく、子どもが死に至るまでの、初めは何なのかわからない様々な行動が、まるでバタフライエフェクトのように、だんだんと繋がっていくまでの過程は、気分が良いとは言えないながらもテンポも良く引き込まれていく。

    そして子どもの死の罪を糾弾しようとする主人公の場面に変わっていくと考えさせられてしまう。

    所々に散りばめられている、些細なと言って良いかはわからない人の我儘やマナー違反は、確かに自分もやった事がありそうな、またはやってしまいそうなことで、仕方ないかと思いつつ、
    主人公である子どもを死に追いやられた遺族の立場から見ると、悪いとわかっていても法に触れてなければ何をやっても罷り通るのかと憤りを感じつつ、
    主人公がネットで事の顛末の意見を求めた際の、「気持ちはわかるが、まるで重箱の隅をつついているようで、ただの言いがかりにしか聞こえず、そんことを言い出したらこの世の中の人みんなが犯罪者になってしまう」とのメールに納得したり、
    と、どんな立場にも共感してしまう自分に気付く。

    何が正しいのか、自分ならどうするだろうとか、結論を出すのは難しいが、最近話題に上がったりするマナーについてや周りの迷惑を考えない行動など、考えるきっかけにはなるだろうと思う。

  •  ある地方都市に住む新聞記者の2歳になる息子が事故で亡くなった。真相を知るべく訪ね歩く彼が垣間見たのは、自己を正当化する者とか自分さえ良ければいいという誰も責任を取らないという現実だった。仔犬のフンを放置する飼い主の老人、街路樹伐採に反対する主婦たち、街路樹のするべき診断を怠った業者、救急診療を拒否したアルバイト医、風邪ぐらいで夜間診療外来を頻繁に利用する学生、事なかれ主義の市役所職員、車庫入れに手間取りパニックになりそのまま放置してしまう女性など、モラルの問題やほんの些細な悪意のないルール違反が幾重にも重なる。ちょっとくらいいいだろうと、思ってしまう些細なルール違反。実は彼にもあったのだと気付く・・・。

     一頃問題になった救急患者のたらい回しとかも描かれ、謎解きがあるミステリィっていうよりか社会派的なメッセージ性がある。600ページあり前半は退屈気味であるが、中盤から事件の核心へと展開していくという訳で、やや冗長気味の感も否めない?けれども
     物語とはちょっと意味合いが違うかもしれないがこんな事を思い出した。
    空き地に放置していた車の窓が割られそのまま放置していると、やがてすべての窓が壊されるという割れ窓理論。それから導きだされたのが軽微な秩序違反行為でも取り締まることによって犯罪の抑制にもなるというもの。誰の心の奥底にも巣食う安易な気持ち、心して読みたい物語だと思う。

  • 「乱反射」
    公開日:2019年9月21日
    公園の木が倒れる事故で最愛の息子を失った新聞記者・加山聡と妻の光恵。原因の真相を突き止めようとする2人だったが、責任のなすりつけ合いをする人々の中、聡は次第に怒りや悲しみの矛先が自分自身へと向いてしまい―。「責任の所在が曖昧な現代の日本社会の縮図」が描かれた作品。
    キャスト: 妻夫木聡、井上真央、萩原聖人、北村有起哉、光石研
    監督:石井裕也
    Twitter https://twitter.com/ranhansyaMovie
    Youtube https://youtu.be/aqF_In38nJE

  • 数年前から気になってた文庫。
    テレビドラマで見てつい買ってしまった。

    ドラマで見ても「あぁあぁあぁあぁ」と思ったけど、文章だとますます辛い。
    犬のフンをいつも同じ木の下に放置する老人
    フンの苦情を受けたのに片付けなかった市の役員
    極度の潔癖症でその木だけ調査できなかった作業員
    伐採反対運動で作業員を妨害するマダム
    夜間診療だと空いてるから入りびたる患者たち
    救急車の受け入れを拒否したアルバイト医
    車庫入れを諦めて車道に車を放置、渋滞させた女性

    他にもいたかな・・・・
    「小さな罪」の連鎖により、強風で木が倒れ、その下敷きになって2歳の息子が死んだ。新聞記者の父親が調べ始め、真実が明らかになっていく・・・・のだけど、知れば知るほど打ちのめされていく。誰を恨めばいい?誰のせいで?法が裁くことができない人災。

    「私も誰かを殺しているかもしれない」と思ってしまうと何も出来なくなるから、いけません。でも、本当にそうかもしれません。
    ただ、普通に生活してて突然「あなたのせいで子供が死んだ」と言われても、それは皆「ふざけるな!」となりますね。関係ない!と。でも今回の事故(人災)に関しては、それぞれの罪が原因であることは、まぎれもない事実。ちゃんと受け止めて考えて欲しい。車庫入れの姉さんみたいに、せめてお花ぐらいは。

    ペーパードライバー脱出中の私としては、車庫入れの姉さんの気持ちがすんごくわかる。けど駄目。父親の車なんてボッコボコにしてやればいいからとりあえず入れないと。代理で車庫入れしてくれた人、めっちゃ怒ってたろうな。

    人として一番許せないのはフンを片付けないじじ。飼う資格なし。「晩節を汚す」初めて知った言葉だけど、ピッタリすぎる。

    冒頭で捨てた家庭ごみが風に吹かれてバナナの皮が道端に落ちてて、じじがそれを踏んで転んで腰を痛めたのならもっと怖い。距離的にないか。

  • 自分も含めてですが軽い法律違反とマナー違反をしている人に読んで欲しい。言い改めれば現代の日本人の老若男女の殆どの人達に読んで欲しい!

    自分のとった行動が自分の想像力の無さで人を苦しめる。
    ちょっとしたルール違反や嘘が自分と全く関係ない人に不幸を与える可能性がある。
    そのくせ、自分の罪は認めず頭を下げたら負けという不道徳な文化だけはきちんと守る

    本作はそのようなモラルを扱ったテーマ

    登場人物多数!
    多数の小さなマナー違反が小さな子供の命を奪う物語!
    非常に現代的で悲しい物語です。

  • 圧倒的な完成度。
    個人的には文句なしの評価5です。
    6でもいいくらいです。

    「誰もが持つちょっした悪い部分が積み重なって」起こった2歳の男の子の死。
    やり場のない被害者の怒りと、殺人の罪を認めるにはあまりに小さい加害者の悪。

    法に反するわけではないが、モラルに欠ける軽率な行動がもたらし得る最悪のケースがここにはあります。

    誰しもが意図せずに殺人の加害者になる可能性があると社会に訴える、強いモラル喚起のメッセージを含んだ作品。

    非常におもしろかったです。

  • 奥田英朗氏の著作かと思いました。話の展開の仕方がよく似てると感じました。つまり滅茶苦茶面白いってことです。こんな些細なことがこんな結末に。最高に面白いミステリー(なんでしょうか?)というか、もしかして鋭い社会派小説かもしれません。
    ただ、プロローグとエピローグ(とは書いていませんが)は全くいらないと思いました。本編だけで十二分に小説世界に浸れます。傑作です。

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。93年『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で日本推理作家協会賞、『後悔と真実の色』で山本周五郎賞を受賞。他書に『天使の屍』『崩れる』『灰色の虹』『新月譚』『微笑む人』『ドミノ倒し』『私に似た人』『我が心の底の光』など多数。

「2018年 『女が死んでいる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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