f植物園の巣穴 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 1217
レビュー : 148
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022646675

感想・レビュー・書評

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  • 日常を送っているつもりだが、なにもかもが「自分の知る日常」ではなく、自分さえもだんだん頼りにならない。それでもこれは「自分を拾い上げ再構築する」物語なのだと思う。

  • 梨木さん、『冬虫夏草』以来読んでいなかったのだけれど、読みたくなった理由を思い出せない。結果読んでとてもよかったし高湿度の今の時季にピッタリだった!
    歯痛をきっかけに未消化の事象や私情が迷走しながら浮き上がってくるプロットが気持ちいい。
    途中から、もしかするとアガサ・クリスティー『春にして君を離れ』とかカズオ・イシグロ『浮世の画家』のようなお話かと訝っていたので坊のエピソードには不意を衝かれて泣いてしまった。ぜんぜん違うし!(春も浮世も好きだけれど)ラストに向けてこわばりが優しくほぐれていくイメージがとても良かった。
    梨木さん他の作品もどしどし読んでいこうっと。

  • 『椿宿の辺りに』を読んでから手に取った。不思議なことが次々と起こる冒頭が引き込まれた。

  • 不思議な世界観だが最後はすべてつながって腑に落ちて、用意された救いも清々しかった。

  • あぶなっかしい本でした。
    だいぶ消耗しました。
    異世界なのか現実なのか、よく分からない曖昧性。
    でも稲荷とかナマズとか、いわゆる日本が昔から抱えている曖昧な感じがうまく表現されていて、読みながら自分もごぼごぼとその世界に入っていく感じがしました。
    読み終わった後もスッキリしないし、自分の世界が揺らぐけど、まぁたまにはこういうのも良いんじゃないかと感じる本です。

  • 再読。穴をめぐるファンタジー。別の世界での不思議な体験を経ることによって、自分自身を発見し、現実世界にも変化が起きる。生まれなかった子に会い、名付けて別れるくだりはうるうるきた。ラストの暖かなシーンは幸せな読後感を味わわせてくれた。

  • 「不思議の国のおっさん」。「裏庭」のおっさん版とも。

    これは東大周辺の話? f植物園も本郷?……と考えてたら、情景が三四郎池で再現されて困った。

    一番の感想は「って、生きとったんかーーーーい!」でした。

  • 2012-6-12

  • f郷にあるf植物園に赴任した園丁。
    戦前か戦後の比較的早い時期を時代背景にしているのか、昔の日本男性によくある、ある種未成熟なまま自己完結しているタイプである。
    彼の名は、佐野豊彦という。

    この人物が、f郷で歯科医に通ったり、園内に水生植物園を作ろうと考えたりする。
    その出来事の中で、前世が犬だった歯科医の家内に出会ったり、亡き妻と、亡きねえやと同じ名を持つレストランの女給の千代さんに出会ったりする。
    そうして、彼は自分の過去を、ねえやの千代を自分の宝物へのこだわりのために死なせ、子どもを宿しながら死んだ妻にも本当に心を通わせられなかったことを見つけていく。
    自分の口の中の、虫歯のうろのような、椋の大木のうろから、別世界に落ちて、旅をすることを通じて。

    読み飛ばしてしまうような、ちょっとしたモチーフが、異世界のどこかとつながっている。
    本当にぼんやり読んでいられない。

    時代設定や主人公のキャラクターのせいか、漱石の『夢十夜』とか、百閒の『冥土』とかいった作品に似た雰囲気を感じるけれど、決定的に違うところがある。
    それは女性たちのとの関係に、最終的に主人公がきちんと向き合えるようになっていくところだ。
    なんか、面白い。

  •  久しぶりに心が激しく揺さぶられた。
     読みながら涙が滲んできたのはいつ以来だろう。
     最初はちょっと滑稽で、ひょうきんでさえあるのだが、次第に重たくシリアスになってくる。
     生と死、そして血の匂いも漂ってくる。
     それでもこの読後感の爽やかさは何だろう。

     それにしても素晴らしい文章だ。
     使われる単語も、その単語の置き方も、装飾の仕方も。
     スラーっと読み進めるのがとても勿体ない。
     一文一文、ゆっくりと愛でたい文章が連なっている。

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著者プロフィール

梨木 香歩(なしき かほ)
1959年、鹿児島県生まれの小説家、児童文学作家、絵本作家。
『西の魔女が死んだ』で日本児童文学者協会新人賞を受賞。映画化もされたこの受賞作が最も著名な代表作となる。
ほかに新美南吉児童文学賞、小学館文学賞を、『裏庭』で児童文学ファンタジー大賞、『渡りの足跡』で読売文学賞随筆・紀行部門をそれぞれ受賞。
受賞作以外の代表作として、『家守綺譚』、『沼地のある森を抜けて』、『ぐるりのこと』などがある。

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