f植物園の巣穴 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 1226
レビュー : 147
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022646675

感想・レビュー・書評

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  • 読み始めしばらく「あれ?今は現実?それとも異世界?さっきのシーンからどこに来たの?」と、どこで起きている話なのかわからなくなること数度。
    主人公の一人称なのに主人公の立ち位置がわからないので読んでるほうとしても不安定さを感じつつも、読み進める。

    物語の進行場所など考えずにさっさと物語の流れに身を任せて読むのがいいんだろうな。読んでりゃわかるだろうし―と思えるまで時間がかかってしまったのはしばらく続けてロジックたっぷりのミステリばかり読んでいたせいか。

    主人公の落ちた穴は主人公自身の心の中の深いところへ降りていく穴だったのだと思う。
    そこは「坊」や「ねえやの千代」の世界とリンクして異世界を作り出して。

    主人公は自覚せず、失くしたものも実は失くしていなかったものも、乗り越えるべき痛みごと無かったことにして心の奥深くにしまいこんでしまった。
    それはひとつの自己防衛であるのだから、掘り起こして正視するのはその時よりもさらに苦く痛いものになっている。
    だけれど、坊の助けによりその苦く痛いはずのものと向き合い受け容れる。

    滞っていた水は、滞っていた時間。
    溜まっている水を流すことは、止まっていた時間を動かすこと。
    動き出した心の時間は置き去りにしていた過去を連れてくる。
    過去は現在の自分に追いつき、融合し、喪失したものを見据えることで喪失したと思っていたものを取り戻す。
    優しい結末でよかった。

    主人公の内部という閉じられている部分のお話なので「家守綺譚」や「村田エフェンディ滞土録」などに比べると、同じ男性一人称でも主人公への共感具合によって読みやすさや好き嫌いが変わるかも。
    わたしはあまり主人公の感情に入り込めなかったのでお話自体には☆3つ。ただ梨木作品の世界や文体が好きなので☆ひとつ追加。

  • ストーリー展開を楽しむというより、梨木さんの懐かしい匂いのする素敵な文章を楽しむ、といった感じだった。
    優しくて心地よくて、何度も読み返したくなります。

  • 西の魔女・・・の映画が素敵だったので、この人の作品を読みたくなったが、不思議すぎてついていけない…
    途中で挫折。

  • やっぱり私は梨木さんが好きだなぁ、と再認識。喪失と、再生の物語です。

    虫歯に耐えられなくなった主人公が歯医者に駆け込むけれど、何かがおかしい。次第に現実が溶け出していき、夢か現かわからない、過去と現在が何層にも重なった世界へと降りていく。
    虫歯にできた大きなうろは植物園の椋のような木のうろとリンクし、歯にも心は宿る、ということは心に大きな穴が空いているということ。
    主人公が失ったものとは、そしてそれを取り戻し、木のうろから抜け出ることはできるのか…というお話。

    幾重にも重なったの暗喩や、いたるところに張り巡らされた伏線など、読むたびに新しい発見がありそうです。
    2013.01.07

  • 歯と心という点で、わたくし率、イン、歯ー、または世界?と思ったんだけど、あとがきにも書かれていた。
    だからなんだというはなし。

    今年ある植物園に足を運んで以来、植物園というものに対しての浪漫を抱いているため手にしたけれど、読みにくい印象だった。モチーフは好みだけど。

  • 蛙小僧が出てくるまでが長かった。それからは全体が見えてきて一気に読んでしまった。感涙。雰囲気は家守綺譚に近い。

  • うまく言えないけれど、
    自分がこの世に生まれてきて、今ここにいることが、
    心にストンと落ちる。

    読み終わったあと、世界が優しく見える本。

  • 家守綺譚のようなものを期待して読んだので、序盤はちょっと期待はずれかなぁ~というように感じました。しかし、カエル小僧?が出てきたあたりからの終盤の展開で一気に引き込まれまれてしまいました。ちょっと泣けます。

  • 夢と現が交錯してこんがらがった話の筋が
    主人公の記憶がよみがえるにつれ紐解かれていく様は
    離れ離れだった島々が引き潮によってひとつに
    繋がっていくようだった。

  • 不思議な話。喪失がテーマかな。ラストがとてもよい。

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著者プロフィール

梨木 香歩(なしき かほ)
1959年、鹿児島県生まれの小説家、児童文学作家、絵本作家。
『西の魔女が死んだ』で日本児童文学者協会新人賞を受賞。映画化もされたこの受賞作が最も著名な代表作となる。
ほかに新美南吉児童文学賞、小学館文学賞を、『裏庭』で児童文学ファンタジー大賞、『渡りの足跡』で読売文学賞随筆・紀行部門をそれぞれ受賞。
受賞作以外の代表作として、『家守綺譚』、『沼地のある森を抜けて』、『ぐるりのこと』などがある。

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