生半可版 英米小説演習 (朝日文庫)

著者 : 柴田元幸
  • 朝日新聞出版 (2013年3月7日発売)
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  • レビュー :6
  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022646958

作品紹介

サリンジャー、ピンチョン、オースター…様々な作家の代表作のさわりと著者による対訳、そして作家来歴や作風の味わい方までをたっぷりと解説!小説演習の体をとった恰好の英米小説入門書にして、物語をより楽しく深く味わうヒントに満ちた知的読み物。

生半可版 英米小説演習 (朝日文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 単行本のときにずっと読みたいと思っていたものの、遠巻きに見ていた本。このたび文庫になったのをきっかけに、えいやっと読んでみた。

    クラシックから現代までの英米(というより近現代アメリカ)文学が、横書きのテキスト原文と柴田先生による訳文、および作家・著作に関する短評で構成されており、タイトルのとおり「演習」をほうふつとさせる形式である。最初はオースター『最後の物たちの国で(原題:In the Country of Last Things)』。「原文を訳さないと読み進めないのかなあ…(ちょっと訳してみて)ああ、やっぱり柴田先生のようにはいかないなあ…」と、以前、英語を勉強していたときに、「文芸翻訳者になれるかもしれない!」とうっすら思っていたときの感覚がよみがえってきて、ひとりで緊張し、ひとりで勝手にしょっぱくなる(笑)。

    でも、そういう「演習」形式は趣向であって、本当はそういうところでなにも緊張したり卑屈になったりする必要はなく、英米文学の紹介本として読めばいい本なのは明らか。原文はわかればベターだけど、必須条件ではない。柴田先生の明晰な訳に甘えてしまえばそれでよいし、各作家に関する短評がシャープで、ついほれぼれとしてしまう。「アメリカ文学において『優等生』は『馬鹿』と同義である。偉いのは『不良』であり、もっと偉いのは『浮浪児』である(22ページ)」や「The Catcher in the Ryeを一度は読むことは、多くの国において、何十年にもわたって青春の非公式必修科目であり続けている(178ページ)」などと紹介されると、自分には合わないと思って遠ざけている、エバーグリーンなアメリカ文学も魅力的に見えてくる。シャープというよりは、はっとして、次の瞬間にふふっと笑みのこぼれるキャッチーさがあるのかもしれない。うっかり、サリンジャーを読んでしまうところだった。

    単行本の出版から少々時間の経ってしまった感もあるけれど、コンパクトで明晰な英米文学ガイドとして、今でも十分に刺激的だと思う。この演習は結局架空のものだけれど、こういう地獄の(でもないけど)ドリル方式の授業を受けてみたかった気もする。今ならこてんぱんにやられても、へらへら笑ってよたよたついて行くかもしれない。

  • 英米小説の原文(抜粋)、柴田さんの翻訳、解説がワンセットで、全部で28種類の小説が収録されている。難解な英語を苦労しながら読み、柴田さんの翻訳に唸り、解説を読んで作品や作者の知識を得ることができる。大学の授業を受けているようで、刺激的で面白かった。

  • オースター、サリンジャーがとくによかった。

  • 海外の小説が好きでよく読む。もちろん日本語訳で。読んでいて思うのは「これって原作者じゃなくて、翻訳家が書いた文章だよね」ってこと。フォークナーを読もうが、サリンジャーを読もうが、はっきり言って、読んでいるのは「筋」であって、本来英語で書かれた「小説」が持っている微細なニュアンスのようなものは、翻訳の上手下手はあるにしても、ほとんど抜け落ちているのではないか。実際に原文で読んだら、そのちがいは分かるんだろうか、なんてことを常々考えていたところに、この本が出た。もともとは1998年に出版されたものの文庫化である。

    原作の「さわり」の引用に、作家や作品についての解説をつけるというスタイルは、デイヴィッド・ロッジ作『小説の技巧』その他の先例があるようだが、原文の引用に対訳つきというのは、この本が初めてなのではないか。タイトルに「演習」とあるように、大学で教えているゼミの学生に提出を義務づけているレポートの体裁と同じらしい。

    英語が堪能というわけでもないので、対訳がたよりになるが、一読して分かるのは、なるほど、同じ英語による文章でも作者の個性というのはあるものだな、ということ。たとえば、カズオ・イシグロの「ほとんどそのまま辞書の例文に使えそうな」几帳面かつ端正な英語によって書かれた『充たされざる者』と、絵本『フランシス』シリーズで知られるラッセル・ホーバンのコンマも改行もなく、奇妙なスペルの頻出する『リドリー・ウォーカー』を読み比べてみれば、そのちがいは明らかだ。

    スティーヴン・ミルハウザーやスチュアート・ダイベックが、さわりだけとはいえ対訳つきの原文で読めるのはファンとしてうれしい限りだが、何のことはない、柴田元幸がさかんに推奨し、訳出したからこそ日本でも話題になり、多くの作品が読めるようになったわけだ。1998年に本が出た時点で「こんな本誰が訳すんだ」と書かれているトマス・ピンチョンの『メイスン&ディクスン』は、結局そう書いた当人の翻訳を待って日本初お目見えとなった次第。

    翻訳者としての著者の功績はミルハウザーやダイベックの翻訳でもあきらかだが、柴田の存在価値は単に訳が上手というだけではない。数多ある英米文学の中から面白いのに紹介されていない作家、作品を見つけてきて、どうだい面白いだろう、と読者に薦めつつ、その本が世界文学の中で占める位置や作家の持つ個性といったものをしっかりとらえてみせること、つまりは、すぐれた批評性の持ち主であることだ。それぞれの作品に付された、決して長いとはいえない解説がそれを示している。

    近現代英米文学のブックリストとしての価値は、初版発行後十数年経過した今でも、その価値は減じていない。文庫版のあとがきには、今現在なら、こんな作家が加わるはずという新しいリストも付け加えられている。

  • 祝文庫化!ラインナップが凄い、、、

    朝日新聞出版のPR
    「メルヴィル、サリンジャー、ピンチョンにP・オースターetc。様々な作家の代表作のさわりと対訳、そしてそれぞれに熱のこもった長い解説が付く。英米文学の世界への扉となる入門書にして、より深く英米文学を味わい楽しむための知的よみもの。」

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