女中譚 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.36
  • (6)
  • (22)
  • (33)
  • (9)
  • (0)
本棚登録 : 182
レビュー : 32
  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022646989

作品紹介・あらすじ

90歳を超えるばあさんは「アキバ」のメイド喫茶に通い、かつて女中をしていた若かりし頃の思い出にふける。いつの世にもいるダメ男、わがままお嬢様、変人文士先生につかえる、奥深い女中人生…。直木賞受賞作『小さいおうち』の姉妹小説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 林芙美子、吉屋信子、永井荷風の女中が描かれた作品を下敷きにした小説。元女中で今や老婆となっている主人公が昔をふり返って語るというスタイルだけど、主人公の語り口とかたくましい生き方とか林芙美子っぽいなあと思った。
    下敷きとなっている作品を読んでなくともおもしろく読めたけど、永井荷風の「女中のはなし」を下敷きにした「文士のはなし」がいちばんおもしろかったかな。永井荷風を読んでみたくなった。
    そして解説がすばらしい、というか、解説がなければおもしろさが半分くらいしかわからなかったかも。
    短い作品を読んだときにわたしはいつも言ってる気がしなくもないけど、もっと長かったらよかったのに、とか思った。主人公が今、秋葉原のメイドカフェに通っているという凝った設定にわざわざするんだったら、もっとその現代を舞台に話が広がっていたらよかったのに、と。あと、昭和初期から日本が戦争へ進んでいく時代背景ももっとたっぷりわかりやすく描かれていたらよかったのに、とも。(ハイ、わたしは行間を読んで考えるより、説明たっぷりのくどい話を読むのがわたしは好きです。)

  • 文庫の帯文句「直木賞受賞作『小さいおうち』と姉妹小説」に惹かれ購入。「小さいおうち」とは女中つながりのようで、それが読もうと思った動機だったのだが、まさか林芙美子・吉屋信子・永井荷風の女中小説をトリビュートという仕掛けがあったとは!名作トリビュートは中島さんの得意技。手の込んだ構成によるこの作品、そこから浮かび上がってくるのは、「すみ」という女性の生き様、そして激動の昭和という時代。
    本家の作風の匂いをほんのり漂わせながらも、中島さんらしくミステリアスでつかみどころがない作品世界。女中という仕事を通して、すみが出会う男や女のしたたかさ、狡賢さ、物悲しさ。複雑に入り組む愛憎に揉まれながらもたくましく生きていくすみの強者っぷりが気持よかった。個人的に好きなのは、第二話の「すみの話」かな。元ネタが吉屋信子なだけに、「s」なドキドキ展開、日本を覆う不穏な空気、まさかのびっくりオチ(これがまた鮮やかで驚いた~)。
    現代ではアキバのメイド喫茶に出入りする老いたすみ。そして、平成のアキバでの「あの」事件ともさり気なく掠らせるところがまた巧い!別世界の話と思っていた女中という仕事が、アキバですみが若いメイドを見ながらかつての自分を回想するという形を取っていることで、なんだかリアルに感じられるのだ。
    江南亜美子さんの解説もまた素晴らしい。

  • 秋葉原のメイドカフェに日参する老女の問わず語り。
    「女中」を語り手としている点で『小さいおうち』の姉妹小説とされているが、あちらが恵まれた女中の一代記のような長編小説なのに対して、こちらの3本の連作短編はそれぞれ著名作家の作品を作者お得意の本歌取り、当時の女中だけでなく女給・踊り子といった仕事を転々とする少なからぬ女たちの苦境、悲しさや惨めさなど暗い側面や歪んだ感情も容赦なくえがいて、ある意味バランスをとっていると見た。
    元となっている林芙美子、吉屋信子、永井荷風をそれぞれちょっと読んでみない訳にはいかない感じ。

  • 三編の物語は、同じく三つの「女中小説」を下敷きにしているそうだ(解説より)。

    現代の秋葉原から始まる物語は、アキバのオスミババアの一人語り。
    物語のそこここに挟み込まれる事件は不穏なものばかり。
    そしてその事件は、昭和と平成の違いはあれど、さして変わらない背景を持つ。
    事件をよそに、オスミさんは語り続ける。

    「ヒモの手紙」の信作は、どうしようもない男だ。
    しかしオスミさんが言うように、相手の女も愚鈍で、まあ虐げたくなる気持ちにもなろうと言うもの。
    イラつかせる女、そう、端的に言ってしまえばそれだ。
    けれども、するりと人の懐に入り込んで、離れようにもどうにも離れがたい男もやはりいるわけで、たまたま自分がそいつに魅入られていないから幸運なだけかもしれない。
    もし魅入られてしまえば、女をバカだなんだと言っている私だって、同じ穴の狢に違いない。

    「すみの話」ではドイツ人と日本人の間に生まれたお嬢さんと、前任の女中の物語。
    故郷が変わっていってしまう事を憂えるイルマ夫人。
    一方それと対をなすように、ナチスを礼賛するようになっていくマリコお嬢さん。
    彼女は自分の中にあるサディズムを持て余している。
    ナチスに心惹かれ、素晴らしいと称賛するけれど、それは自分は安全な場所にいると思っているからこそ。
    自分は本当は「合いの子」、つまり劣等人種とみなされる、ナチスから排除される側だと気付いていない。
    愚かしさと、悲しみが交差する。
    どこかそれは現代社会と似たような状況だ。

    オスミさんは語り終えた後、アキバに消えた。
    波は名もなき老婆をただ飲み込む。

  • 出だし、90歳のばあさんが秋葉のメイド喫茶でクダを巻くシーンで期待したのですが。。。
    その90歳のばあさんが『小さいおうち』の主人公の一人だった女中のおすみさんの後の姿で、その回顧譚として3つの短編で出来ています。もっとも『小さいおうち』と重なるシーンはほとんど無く、それぞれ林芙美子の『女中の手紙』、吉行信子の『たまの話』、永井荷風の『女中のはなし』をベースにするという中島さん得意の手法です。
    どうも後味が悪いのです。
    悪意とか嫉妬とか挫折とか、そんなものが強く表に出てきて、救いが無く。いつもの中島さんの作品にあるユーモアが感じ難く。。。。

  • なんとなくタイトルに惹かれて読んでみるも、いやはや。これは。すごくいい!おすみさん90歳超の元リアル女中。昔懐かし雰囲気を味わいにメイド喫茶へ足繁く通う。そこで語られるすみさんの昔話。男と一緒に女を騙してみたり、ドSのお嬢に仕え百合の世界にちょっぴり足を踏み入れてみたり、奉公先の陰気な館の陰気な主人、ボロクソ言うも実は永井荷風、しかも気づかぬ内に小説に登場していたりと疾風の如く人生を駆け抜けたすみさん、たまらなくかっこいい。語り尽くしたのか最期、路上にうずくまり目を瞑るすみさん。私は惜しみない拍手を送る。

  • 昭和初期の、まだ華やかな雰囲気の残っている頃の、都市の影が存分に描かれている。
    寅さんや両さんの出てくるような下町じゃなく、明治の貧民窟につながっているような町。
    すみという女中も、陰影の深い人物。
    秋葉原を漂う現在の姿も味わいがあるが、やはり若い時の、ふと心の中に兆す魔のようなものにぞくりとさせられる。
    エログロといわれた時代の雰囲気、こんな風だったんだろうな、と思わされた。

  • 【小さいおうち】のタキさんの自分史より、オスミさんの昔語りの方が面白かった。

    元ネタの3作品(【女中の手紙/林芙美子】【たまの話/吉屋信子】【女中のはなし/永井荷風】)は、先に読むより後から読む方が楽しめそう。

  • うーん。あんまり…ちいさなおうちが面白かったので読んでみたのですが…

  • 2014/06/24

全32件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1964年東京都生まれ。『FUTON』でデビュー。著書に『小さいおうち』(直木賞)、『かたづの!』(河合隼雄物語賞・柴田錬三郎賞)、『長いお別れ』(中央公論文芸賞)等。

「2018年 『作家と楽しむ古典 土左日記 堤中納言物語 枕草子 方丈記 徒然草』 で使われていた紹介文から引用しています。」

女中譚 (朝日文庫)のその他の作品

女中譚 単行本 女中譚 中島京子

中島京子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三浦 しをん
伊坂 幸太郎
宮部 みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印

女中譚 (朝日文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする