麗しき花実 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 40
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022647030

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】江戸で一人、女蒔絵師として原羊遊斎に師事する理野。彼女は、女の情念を込めた、この世に一つとない蒔絵を完成させるために、人生の全てを蒔絵に注ぐが……。実在の人物を織り交ぜながら、女性のやるせない恋心を描く、『さざなみ情話』(2007年)以来の長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 女蒔絵師として活躍する理野と、鈴木其一の物語。
    理野は実在の人物ではないようだが、小説の中にでてくる其一の作品や、蒔絵作品が実存しているからか、リアルに感じる。女が働くことの厳しさや、職人としての誇り、情熱、愛、いろんな感情を緻密で丁寧で、上品な筆致で描かれている。
    其一が苦しんでいた、琳派の伝統、師弟制度、自分の作品に師匠の名が入ること、よくここまで書けるものだと舌をまく。
    苦しさの中にも、理野と其一の絵にかける情熱が純粋で強くて熱くてなんども涙がこぼれた。
    単行本の口絵には、物語に出てくる棗や、櫛の写真があるが、この文庫版には「麗しき花実」の後日談が掲載されている。ああ、そうだったのか、と感慨深いとともに、理野という女性の逞しさに胸を射抜かれた。
    其一ファンならたまらない一冊。

  • 実在の職人の話ではありませんが、兄の急逝によって女蒔絵師として、原羊遊斎に師事することになった理野の生き様を描いた時代小説です。
    鈴木其一、酒井抱一、尾形光琳、原羊遊斎など、実在の人物も多数登場し、粉蒔のもやのかかったような情景美が、端正な文体で綴られます。

    私は、蒔絵も好きで、大場松魚の《平文輪彩箱》などは、ため息のでる美しさだと思っていますが、蒔絵の製造過程や歴史については詳しくないので、本書はとても勉強になりました。

    羊遊斎と抱一の弟子たちによって、量産された蒔絵に羊遊斎と抱一の銘をいれて、数物として販売する様が描かれており、この時代からブランド品のメーカーのようなものがあったんだなと、感心させられます。
    しかし、作中では、数物ではなく、羊遊斎と抱一が全く係わっていない作品をも、弟子の其一や理野などに代作させており、それによって、其一や理野が、己の作品の意味を問う苦悩に陥ります。
    自分が手掛けた作品に他人の銘を入れる虚しさ。
    この本を読んで、抱一が少し嫌いになりました(笑)

    当時、女の蒔絵師は珍しく、理野も職人として生きていくために、様々な困難や葛藤に見舞われます。
    男の夢の糧として取り込まれそうになりながらも、理野は、終には蒔絵に人生を預け、一人で生きていく決意を固めます。
    そこには、一種の清々しさを感じました。
    理野の葛藤は、現代女性の生き方への葛藤に近く、女の私は身につまされました。
    女の生き様をも考えさせられる一冊です 。

  • 2014.4.4(金)¥220。
    2014.7.30(水)。

  • 久しぶりの乙川さんの長編。ちょっと手こずりました。
    松江の蒔絵師の家に生まれた主人公の理野は、修行の兄と共に江戸に出て来たものの兄は急死。そのまま、兄が務めた蒔絵工房で働くようになる。
    取り巻くのは酒井抱一、谷文晁などの錚々たる人々。
    乙川さんらしい何との言えない薄闇の雰囲気。
    暗く、粘度の高い、しかも清澄な水底の様。その中で綿々と語られる創作の苦しみ、男女の愛憎。冗長感はあるものの読み応えがあります。
    一緒に収録されている後日譚を描いた短編『渓声』はやや軽く、爽やかな読後感でした。

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著者プロフィール

1953年東京都生れ。96年「藪燕」でオール讀物新人賞を受賞氏デビュー。97年「霧の橋」で時代小説大賞、2001年「五年の梅」で山本周五郎賞、02年「生きる」で直木三十五賞、04年「武家用心集」で中山義秀文学賞、13年初の現代小説「脊梁山脈」で大佛次郎賞を受賞。16年「太陽は気を失う」で芸術選奨文部科学大臣賞を、17年「ロゴスの市」で島清恋愛文学賞を受賞。著書に「トワイライト・シャッフル」「R.S.ヴィラセニョール」など。

「2018年 『ある日 失わずにすむもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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